平和な日常~冬~5

「やっぱり君は油断も隙もないな。」

「別にあえてその人を狙った訳じゃないんですけどね。」

一方突然の真相告白に唖然としていた高畑であるが、我に帰ると苦笑いを浮かべて油断も隙もないと疲れたように呟く。

横島が油断も隙もないのは明日菜達と親しくなりいつのまにか高畑の居場所がなくなりかけたほどなので今更なのだが、同時に高畑は横島の表には出ない裏の強かさを初めて知った気がする。

高畑も横島があえてクルトを狙ったとは思わないがあの情報が出た時はクルトの暗躍の失敗により、麻帆良を始めとした地球側魔法協会とメガロの緊張が高まった時期でもあった。

主要な目的は関西へのアーウェルンクスの潜入阻止なのだろうが、狙ってはなくてもメガロにも影響があるのもある程度予想していただろうとは思う。


「クルトは自業自得だから気にしなくていいよ。 あいつは今まで目的の為に犠牲を厭わなかった。 だからこそいつかクルトが犠牲になる日は来るかとは思っていたしね。」

ただ当時はぐれ魔法使いであった横島の立場を考えると比較的平和裏に関西を守ったのは明らかであり、それを責めるつもりは高畑にはなかった。

イマイチ横島の実力や出来ることは分からないが、それでも無関係な横島に安易に戦えなどと言えるはずがない。


「不思議な関係ね。」

「僕とクルトの意見が完全に一致していたのは秘密結社完全なる世界の壊滅だけなんだよ。 明日菜君のこともナギのことも魔法世界の未来像も厳密には違う。 友でありライバルであり敵でもある感じかな。」

かつては共にナギ達の元で育ったクルトと高畑の関係を刀子は不思議だと感じたようだが、横島は割りと理解していて馴れ合いのない刺激的な友人なんだろうと思っている。

事実高畑はクルトとは完全なる世界の壊滅だけに関して協力していたらしく後は対立もしていたらしい。


「クルトは近いうち爆発するかもしれない。 あいつは自分しか世界を救えないと思ってるからな。」

「爆発って言ってもたいしたこと出来ないんじゃ? それこそ明日菜ちゃんかナギの息子でも担げば別ですけど。 そうそう明日菜ちゃんって言えば、例の能力封印したいんですけどダメっすかね。」

どうも高畑はクルトをかなり警戒しているようだが、横島は政治的に終わったクルトが騒いでもたいしたこと出来ないだろうと楽観視している。

彼が一発逆転するには姫御子である明日菜かネギでも手にいれない限りは放っておいても問題ないと思っていた。


「確かにクルトが狙うのはネギ君か明日菜ちゃんだろうが……。 ちょっと待ってくれ。 封印というのは彼女しか使えない始まりの魔法を封印するのかい?」

「そうっすよ。 あれさえなきゃ問題ないでしょう。 万が一クルト・ゲーデルに嗅ぎ付けられても能力さえなきゃ向こうが勝手に誤解してくれますよ。」

結局高畑はクルトが姫御子を本格的に探しに入れば明日菜が見つかるのが時間の問題だと警戒していたのだが、横島はそんな高畑の心配を根底から覆すようなことを口にした。

明日菜の能力封印はすでに近右衛門には賛成して貰ったので後は高畑次第とも言える。

流石に勝手に封印する訳にもいかないので高畑に近々話そうと思っていたらしい。


「そんなこと可能なのかって、君なら可能なんだろうね。 確かに横島君の世界の技術で能力を封印すれば最悪クルトが目を付けても守りきれるだろうけど。 正直横島君だけは敵に回したくないね。」

本当は高畑がクルトの危険性を説明して横島に協力して貰おうと考えていたのだが、横島は高畑が考えていた以上に徹底する気であり高畑は横島だけは敵に回さないようにしようと心に決める。


「念には念をいれなきゃダメっすよ。 まあもし正体がバレても捕まえて記憶を消しますし、最悪の場合でもこの三人とエヴァちゃんに手伝って貰えば相手が誰であれ何人であれ守りきれますけどね。」

あまり真剣味がなく大丈夫だろうといいつつも最悪の場合はエヴァまでも担ぎ出す気でいる横島に、高畑と刀子は若干引きつった表情を浮かべてしまっていた。

よく最悪の準備をして最善を期待するなどと言うが、横島の危機管理は正しくその通りで徹底してるのだから。

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