平和な日常~冬~5

翌五日は横島の店の年末年始明けて最初の営業日であったが、帰省していた学生達が昨日から続々と戻って来ていて朝から学生達で賑わっていた。


「タマちゃんお土産だよ。」

「わーい! ありがとう!!」

年末年始の休暇と異空間アジトでの休暇で一週間以上休んだ横島は若干休みボケの様子も見せるが、この日朝から一番忙しいのはお土産を持ってきてくれる友達へ対応するタマモだったりする。

肝心のタマモは秘密だと教えている異空間アジトにしか行ってないので流石にお土産をみんなに渡すことが出来なく、昨日雪広邸に行ったということから雪広邸の絵葉書三枚セットをお返しにと配っていた。

こちらは麻帆良市土産の人気商品の一つである麻帆良百景の一つの雪広邸の絵葉書三枚組で、通常麻帆良百景として販売している雪広邸の正面入口からの写真の一枚に非売品として昨年の麻帆良祭で限定発売された雪広邸の庭園と応接間の絵葉書がそれぞれ一枚着いている。

昨日というか異空間アジトに行く前の雪広邸での新年会で例によってタマモが雪広邸に来たからにはお土産を買いたいと言い出し、ならばとあやかが来客の子供に配っていた雪広邸の絵葉書セットをタマモのお土産として大量にあげていたのだ。


「マスター大変大変! 冬休みの宿題手伝って!!」

「お前らなぁ、せっかく帰省したんだからそういうのはお父さんとお母さんにだな……。」

「せっかく帰省したんだから、お父さんとお母さんには心配かけたくないじゃん!」

一方の横島であるがこの日は木乃香・明日菜・夕映・のどかが全員バイトに入っていたので結構余裕があり、タマモにお土産をくれた子達にスイーツをサービスしたりお礼を言ったりしてたがお昼近くになると冬休みの宿題を抱えた常連の少女達がちらほらと集まり出す。

ぶっちゃけ横島としては帰省したんだから両親に手伝って貰えよと思うらしいが、常連の少女達からすると両親に心配をかけたくないからと横島に頼っている。

ちなみにそんな宿題組の少女達には昨日まで一緒だった美砂達三人もいて、他にはまき絵と亜子や楓と鳴滝姉妹など2ーAの少女達も何人か居た。



「アスナと夕映ちゃんは?」

「私はもう終わったわよ。 年末年始はさよちゃんと横島さんと高畑先生も一緒だったし。」

「私も今回は帰省した時に暇だったので。」

夏休み終盤やテスト直前と同じく最早風物詩となり始めた店で勉強を教える光景が、この日から冬休みの最終日まで続くことなる。

一部の少女は同じ立場のはずの明日菜と夕映にも矛先を向けるが、明日菜は夏休みに続き早々に終わらせたようで夕映に至っても父親との微妙な関係から暇を持て余しさっさと宿題を片付けたらしい。


「今日はなんかダルいんだよなぁ。 思うに日本人は働きすぎだと思うんだ。 もう一回休むべきだろうか。」

「マスター働きすぎだって言えるほど働いてないじゃん!」

「そんなことしてたら彼女達に捨てられちゃうよ?」

結局横島は何だかんだ言いつつ少女達に宿題を教え始めるが、いつまでも休みボケが治らない横島は休みが足りないのかもしれないと真顔で口走ると当然のように周りからは一斉に突っ込まれる。

そもそも横島は全く働かないとは言えないが働きすぎだとも言えない。

終いには木乃香達に捨てられちゃうと誰かが脅すようなことを言うと、話を聞いていた周囲や美砂達は思わず意味で爆笑してしまう。


「それはアカンな。 店が潰れちまうぞ。」

捨てられちゃうという言葉と周りの爆笑に横島は顔色を悪くしてそれはダメだと表情を強張らせるが、笑っている周囲の中で美砂達三人は他とは多少違う意味合いで笑っている。

実際問題木乃香達が辞めると店が潰れるかは疑問だが、横島が木乃香達に頼りきってるのは誰の目から見ても明らかなのだ。

しかし昨日までの魔法や異空間アジトを知ると横島の様子や対応はまた違った意味で面白い。

嘘が上手いのか天然なのか、特に美砂と円は興味深げに横島を見つめていた。
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