平和な日常~冬~4

結局午前中は洋服選びで終わってしまい昼食はホテルに戻って大人組と一緒に取ることになっていたが、そこで横島と少女達が見たものは大量のプレゼントに戸惑う詠春だった。


「ハニワ君達にプレゼントたくさん貰ったのよ。 初めは断ろうとしたんだけどね。」

大人組も街をブラブラして少女達と同じく本屋や食べ物屋などに行ったりしたようだが、詠春はやはり街を歩くだけで目立ってしまいあちこちでハニワ兵達にサインを書いてあげたり一緒に写真を撮ったりプレゼントを貰ったりしたらしい。

流石にプレゼントは断ろうとしたようだが、受け取って貰えないと悲しそうになるのでつい受け取ってしまったら次々にプレゼントを受け取ることになったようである。


「横島君、これ本当に貰っていいのだろうか?」

プレゼントの中身に関してはいろいろで高いものではペアのアクセサリーなんかもあるし、和服の生地である反物や和食器のような物まであった。

基本的に和風の物が多いが、それはサムライマスターという映画の影響だろう。


「貰ってやってくださいよ。 あいつらなりに喜んで貰える物を選んだんですから。」

大量にあるプレゼントの中身には詠春ばかりでなくみんなも驚くが、横島は笑って貰ってやってくれと言うだけである。

詠春はあまり理解してないようだが、そもそも異空間アジトでは金銭という価値を決める仕組みがないので物の価値がイマイチはっきりしてなかった。

ちなみに余談だが地球との大きな違いは異空間アジトでは貴金属の価値はかなり低いことか。

ぶっちゃけ異空間アジトでは貴金属は大量に出回っていて珍しくも何ともない。

現状で出回っている貴金属は横島の元世界から持ち込まれた物で、それはかつて異空間アジトから輸出した物の代金代わりとして受け取ったものである。

他には令子達の個人資産なんかも横島が恐くて手が付けられずにあるが、それ以外にも神魔戦争期に持ち込まれた貴金属に美術品に書籍などは山ほどあるのだ。

基本的に当時の対外的な交渉はほとんど令子が土偶羅の協力の元で仕切っていたので、横島は異空間アジトに余計な人を入れない代わりに支援する許可を与えただけだが。

ただ当時の世界情勢から見ると令子の行動は特におかしくはなく、そもそも神魔戦争をきっかけに世界情勢は激変しており国際協調や世界平和など存在しない時代だった。

食料一つ取っても輸出自体が世界中で止まっていたこともあり、令子もまた日本以外に支援する場合には物によっては相応の代金は取っている。

この件に関しては正直なところ駆け引きや政治センスのない横島には無理なことで、令子が異空間アジトの情報隠蔽や誤魔化しなども含めて力を発揮していた。

令子いわく何でもかんでもタダで配ってもいいことなんて絶対にないとのこと。


そんな訳で少し話が逸れたがハニワ兵達も人間が好きな物なんかはそれなりに勉強していて、詠春へのプレゼントも彼らなりに考えた物である。

結果的に詠春にとっては受け取っていいのか悩むほど高価な物もあるが、ハニワ兵達にとってはさほど価値があるものではなかった。


「えいがたのしみだね!」

「私も一度行ってみたかったんですよ。」

一方詠春へのプレゼントは横島が簡単に流してしまったことで少女達の興味は詠春の映画の話になるが、特に楽しみにしていたのは映画を見たことがないタマモとさよであった。

タマモに関しては映画自体をほとんど理解してないが、大きなテレビみたいなものだと説明している。

尤も刀子や大人組はタマモに映画の内容が理解できるか少し心配していたが。

流石に幼児が見るような映画ではいのだ。


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