平和な日常~冬~4

「昨日から不思議なのですが、何故この街は建物からベッドまで人間サイズなのですか?」

ハニワ兵も合流したことで自由行動になり大人達はそれぞれ別々に行動するようだが、少女達とさやかと刀子と高畑はとりあえずは横島と一緒に街に出ていた。

ホテルの前ではさっそく詠春がハニワ兵達に囲まれて軽い騒ぎになっていたが、横島達は多少驚かれたり物珍しげに見られはしても囲まれるほどではない。

そんな中のどかは昨日から疑問に感じていたことを横島に尋ねていた。

魔法やら異世界やらファンタジーな話にも当然興味はあるものの、彼女が昨日から不思議というか違和感を感じていたのは街の規格についてである。

身長二十センチもないハニワ兵の街なのに建物から椅子やテーブルやベッドまでが人間サイズなのだ。

客観的に見てそれは非効率にも見えるし、ハニワ兵サイズの街でいいのではと思うのは当然のことだろう。


「詳しく説明するとややこしいんで簡単に言うと、一番最初に人間も使えるサイズの街でって頼んだからだろうな。 それとハニワ兵って元々人工的に造られた存在だから独自に歴史や文化を積み重ねた訳じゃないんだよ。」

のどかの質問は言われてみるとみんな知りたい内容だったからか横島に注目が集まるが、意外に説明が面倒な質問であり横島は少し考えながら答えていた。

ハニワ兵については正直よく考えると疑問が尽きないのだろうが、とりあえずみんなファンタジーだからと一応の納得をしている。

しかし横島の説明はそんなハニワ兵と横島について再び疑問が次々と浮かんで来ることになってしまう。


「普通は秘密とか聞いたら秘密が減るもんだけど、マスターの場合は秘密が増えた気がするわ。 なんか聞けば聞くほど秘密が増えそうな気がするのは気のせいかしら?」

「そうかもな。 まあ、細かいことは追々話していくよ。」

聞きたいけど聞いていいのか迷ってしまい、秘密を明かされたはずが余計に知りたい秘密が増えたように感じるほど横島は訳が分からないと少女達は感じる。

なかでも割りと遠慮がないハルナがそんな印象をそのまま口にするが、横島は多少苦笑いを浮かべつつそれを否定出来なかった。

ただあまり説明が得意ではない横島としては、もう少し少女達が魔法なんかを理解してから必要なことは少しずつでも話して行こうかと考えている。


「ここの存在が漏れたら貴様はあの世界では確実に生きていけなくなるな。」

結局少女達はいろいろ疑問はあるがいずれ話してくれるとの言葉を信じて口を紡ぐが、唯一口を開いて意味深な言葉を口にしたのは一行の最後尾にいたエヴァであった。


「ちょっと、それどういう意味なの!?」

「そのままの意味だと思うわ。 ここがどれだけの広さがあるか分からないけど、これだけの街がある世界を一個人が所有してると言われて納得しないのが人間よ。 例え横島さんが所有するのが正しくとも納得しないし、どんな手を使っても手に入れようとする人達は必ず現れるわ。 そうなると国家やそれに匹敵する組織相手に個人で戦うか逃げるか選ばなくてはならないもの。」

その言葉は現状ですでに異空間アジトの価値をある程度でも理解をしている雪広姉妹や千鶴や夕映や刀子と高畑以外の少女達には驚きだったようで明日菜は声を荒げてしまう。

しかしエヴァはそれ以上は語るつもりがないらしく無言になると、代わりに答えたのは意外にも雪広姉妹の姉のさやかだった。

冷静に淡々と語るが日頃はまず口にしないような人間を否定しているとも取れるその内容にはあやかも驚きを隠せないが、それは紛れもない事実である。


「まあまあ、そんなに神経質にならんでも誰も信じませんって。 どこの世界に異世界を個人が持ってるなんて言われて信じる奴が居ますか。 それに万が一バレた時の手は打ってますしね。 あんまり言いふらされても困りますけど、言ったらすぐに終わりなんてことはならないっすよ。」

エヴァとさやかは異空間アジトの価値と外に露見した危険性を理解するが故に少女達に危機感を持たせたかったのかもしれないが、流石に二人の言い方ではプレッシャーが大きすぎると思った横島がすぐに訂正していた。

最終的に危機感を持つエヴァやさやかの言葉と相も変わらず軽い様子の横島の言葉の違いに、少女達は戸惑いを感じてしまうがそれでも外で話すのは止めた方がいいと肝に命じることになる。

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