平和な日常~冬~4

さて朝から小難しい話をしてしまった一同だが、とりあえず午前中はこの街で自由行動にすることになった。

昨夜は夜更けだったので街の観光も出来なく是非街を見たいとの意見が大勢だったのだ。


「乗り物は用意しますか?」

「歩きで構わんよ。 バスはあるのじゃろ?」

先程案内役のハニワ兵はすでに頼んでおり、必要なら移動の乗り物も更に用意するつもりの横島であったが近右衛門達は必要ないと断っている。

実際夜が明けた街は結構賑やかな様子で車のような乗り物は元よりハニワ兵の数も昨夜と比べるまでもなく多い。

あまり大袈裟な対応をされるよりは気楽に観光がしたいのが本音なのだろう。


「バスもタクシーもありますよ。 ただ問題は詠春さんなんっすよね。」

特に注意事項もなく自由行動にしようとする一同だが、唯一の問題はホテルの周りに結構たくさんのハニワ兵が集まって詠春を出待ちしてることだった。

どうも昨夜のうちにサムライマスター本人が来たとの情報がこの街ばかりか異空間アジト内のハニワ兵に伝わったらしい。


「どうします? 近寄らないように言うことも出来ますけど。」

本物の英雄が来たと盛り上がるハニワ兵達の様子はホテル内に居てもみんな気付いている。

実際詠春は今朝もホテルの客のハニワ兵にサインや写真撮影を求められて困惑していた。

正直横島も土偶羅もこの件だけは本当に偶然であり予想外だった。

そもそも街の映画のスケジュールまで土偶羅は関与してないし、映画などで何が人気出るかは分からない。


「いや、そこまでしなくてもいいよ。 魔法世界に行くと時々あることだから。」

横島は流石に迷惑かと思いハニワ兵達に近寄らないように言うことも考えていたが、それに関しては詠春が即座に否定していた。

まあ騒ぎになるのは慣れてることもあるし、近寄らないように言われていい気分をしないのは昨日と今朝のハニワ兵達を見てれば分かる。

それに瞳を輝かせてサインを欲しがるハニワ兵は、魔法世界で子供達がサインをねだる様子とダブってしまい嫌とは言えなかった。


「じゃあ詠春さんには案内役のハニワ兵を増やしますね。 流石に収集がつかなくなると困りますから。」

結局横島は詠春には案内役のハニワ兵を増やし、ハニワ兵達がが騒ぎすぎないようにと頼むことにする。



「あっ!?」

「ポー!!」

その後荷物は部屋に置いたまま外出する為に着替えた一同はロビーに集まっていたが、ちょうどホテルに一体のハニワ兵が入ってくるとタマモとそのハニワ兵はお互いに駆け寄りまるで感動の再会のように飛んだハニワ兵をタマモは満面の笑みで受け止めていた。


「なんなの?」

「あいつがうちに住んでるハニワ兵なんだよ。 正月休みで里帰りさせてたんだが俺達が来たから合流しに来たんだろ。」

明らかに他のハニワ兵への態度と違うタマモには少女達ばかりではなく近右衛門達も不思議そうに見ていた。

そう言えば横島宅にも住んでいるとチラッと昨夜聞いたことを思い出すが、本当に家族のようなんだなと改めて実感する。



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