平和な日常~冬~4

「そうだな。 最初に言っておかなきゃならんのは俺が異世界から来たってことと純粋な人間じゃないってことかな。」

「はいはーい! わたしもようかいなんだよ!」

ようやく落ち着いて話を始めた横島は相変わらず迷いの表情を見せつつも自身の出身と正体を簡潔に告げた。

出身に関しては先程雪広邸でも言ったので驚きはないが、純粋な人間ではないとの言葉には当然ながら驚きの表情を見せる。

尤も少女達がその反応を言葉に表す前にタマモが元気よく自分も妖怪だと言い切ってしまい、少女達を更に驚かすことになってしまう。


「たまちゃんが妖怪?」

「うん! ようかいなんだって!」

はっきり言うと横島はあまり話したくはない様子であるが、タマモは何故か自信ありげというか嬉しそうに自身の正体を明かす。

少女達はそのあまりに無邪気な反応に本当に意味を分かってるのかと疑問を感じるも、目の前でタマモが狐形態に変わると信じざる負えなかった。

ただし今のタマモは変化の術ですら未熟で着ていた服がそのまま残ってしまうので、洋服に埋もれた子狐の姿になっていたが。

本来一人前の妖狐なんかだと服なんかは変化の術で作ったり元々ある服を着たままで変化が出来るはずなのだが、タマモには前者はともかく後者の技術はあるはずもない。


「かわいい~!!」

「ちょっと桜子ずるい!」

もこもこと服の中から脱出したタマモは少女達の元に歩み寄ろうとするが、タマモが近付く前に少女達の方から近付いて来ていてタマモはあっという間に抱き上げられてしまった。


「うわ~、ふわふわだね。」

「尻尾が一、二……九尾? まるで伝説の金毛白面九尾のようですね。」

まるでバーゲンセールのようにタマモを取り合いする少女達であるが、夕映やのどかは取り合いに参加出来ないので脇からタマモを観察していた。

そんな中、夕映が数えた尻尾の数に近右衛門の表情が一瞬だが微かに変わる。


「ああ、金毛白面九尾の転生体だよ。 なんでかまでは知らんが麻帆良祭で買った本に封印されてたんだ。 おまけに妙な封印のせいで転生前の記憶が全くないしさ。」

少女達にとってタマモは始めて見る妖怪なのだが何処からどう見ても人懐っこい子狐にしか見えない。

横島は少女達がタマモを畏怖したりしなかったことにホッとしつつ、その正体が金毛白面九尾だと明かす。

一方の大人達とエヴァは横島が封印されてた妖怪を解放していた事実に何とも言えない表情をする。

きちんと中身を確認しての行動ならば文句もないが、どうやらいつもの気まぐれで解放したらしいと聞くと正直呆れるしかなかった。

結果的にタマモだったから良かったとはいえ、下手すると危険なだけに迂闊すぎる横島に文句の一つも言いたくなるのだろう。


「ほら、話出来ないから人に戻ろうな。」

そのまま少女達に代わる代わる抱かれていたタマモだが狐形態では話が出来ないので横島は人に戻るように言うが、当然人型に戻ったタマモは最近全く変化の術で服を作る習慣がないので全裸になってしまい先程脱げた服をみんなの前で着ていく。


「妖怪が実在するのもビックリだけど、妖怪がこんなに可愛いとは……。」

「タマモには妖怪の記憶がないからな。 日頃のタマモそのままなんだよ。」

今まで隠していた秘密を明かしてさっぱりしたのかそれとも一人で着替えが出来たことが誇らしいのかは不明だが、何故か自信ありげなタマモは今度は人型で少女達に抱き上げられていた。

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