平和な日常~冬~4

横島達が屋敷に入る頃になるといよいよ雪広家の新年会は始まるが、あまり堅苦しい雰囲気もなく和やかなものだった。

先月の学園主催のクリスマスパーティでは雪広家や那波家の周囲に集まる人々には緊張感のようなものもがあったが今日はそんなものはなく、そもそも挨拶に関してもあの時とは違い神経質になる必要はないらしい。

まあ今回は雪広家が迎える側なので雪広家の人々があちこちで招待客に声をかけているが。


「無礼講でいいのか、本当に自由にするぞ。」

「だめです。 横島さんは自重して下さい。」

最初に全体に向けて軽く挨拶をした雪広家の現当主清十郎は個人的な新年会ということで無礼講で楽しんで欲しいと挨拶をしていた。

横島はそれを聞き本当に自由にすると半ば冗談のようにつぶやくも、当然ながら周りの少女達からは本気で止められてしまう。


「冗談だよ。 冗談。」

いくら横島といえど本音と建前くらいは理解してるしそんな本気で止めんでもと少し悲しくなるが、そもそも横島は世間一般からするとずれてる人間でありイマイチ信用度はない。

まあクリスマスパーティでもやらかしてるので、それが原因にもあるのだろうが。


「また超さんが居るわよ!」

「新堂先輩もおるわ。」

さて新年会のメイン会場はちょっとした体育館よりも広いパーティルームだったが、以前の麻帆良祭の打ち上げパーティの時のようにたくさんの料理が並んでいる。

無論新年会ということでおせちや雑煮などもあるがそれ以外の料理に関しても種類も豊富な上、何故か超包子と新堂がそれぞれに料理やスイーツを提供していた。

新堂に関しては昨年末に頼まれてスイーツを提供しているのだが、超包子に関しては本来は招待客だったはずの超鈴音から頼んで料理を作らせてもらっている。

せっかくの機会なので超包子の売り込みをしたいようではあるが、本当にイベントあるところに超鈴音ありと言ったところだった。


「タマモ、何から食べたい?」

ちなみに横島はそんな超鈴音とは対称的に、たくさんの料理を何から食べようかとタマモと見て歩いている。

どうせならば日頃はなかなか食べられない料理が食べたいなと語る辺り本来の貧乏性なところが出ているが、タマモは特に気にしてないようでキョロキョロとたくさんの料理を見てはどれを食べようかと真剣に悩んでいた。



「やっぱり来てるな。 相変わらずモテモテなことで。」

「最近の学生はこぶつきの独身男性に抵抗感はないのか?」

一方会場に居る大人たちは少なからずそんな横島に注目していた。

昨年のクリスマスパーティでも注目を集めた横島は当然ながら今日も注目を集めているが、中高年の男性達から見るといつも周りに女の子が居る横島が少なからず羨ましいようだ。

ただ幼子を引き取って育てている横島がなんの抵抗もなくモテてる姿には驚きというか違和感がある。

正直横島の容姿は悪くはないが抜きん出ていい訳でもないし、言い方は良くないが恋に恋するような学生があれほど集まる訳が他者からは分からない。

というか横島と少女達は一般的な価値観から見るとただの友達にしては親しすぎるし、かと言って人数の関係から恋人にも思えなかった。

あやかを始めとして周りの少女達が名を上げてることもあって、さほど悪い噂にはなってはないがそもそも横島はロリコンではないかとの疑念は持たれている。

まあ横島の女絡みの噂は元々男性にはあまり評判が良くなく、女子中高生を中心に女性が苦手だと信じられてるのと対照的に男性にはそれを口実に遊んでいると見られていた。

流石に今噂している中高年になると横島にライバル視もないので彼らは単純に興味があるだけであるが。



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