平和な日常~春~

「時間がないのはワシも近右衛門と同じじゃ。 ネギはなんとしてでも麻帆良で受け入れて貰う。 ここもいつまで安全かは分からないしのう。 ネギには自分で自分の人生を切り開く力が必要じゃ」

好き勝手に生きて死んだ息子への不満を押さえた学校長は、どんな手段を使ってもネギを麻帆良へ行かせるつもりらしい

ネギが現在居るメルディアナ学校もまたネギにとって安住の地ではないのだ

祖父である学校長が健在のうちならば問題はないが、年老いた祖父もまたいつ寿命を迎えるか分からない

学校長が亡き後、魔法学校関係者やこの地の魔法協会は必ずしもネギを守るとは限らないのである

と言うか現状でも腫れ物を触るような扱いのネギを、学校長が亡くなればどうなるかなど考えるまでもなかった


「この地は本国とのゲートが近い為に本国の影響力が強い。 ネギをこれ以上ここに置いては必ず災いがネギに降り懸かる」

学校長は魔法の国メガロメセンブリアの影響力の強いイギリスからネギを離したいと考えている

以前も少し説明したがメガロメセンブリアには、ネギを殺したい勢力や利用したい勢力が複数存在するのだ

願わくば麻帆良の地がネギにとって安住の地となり、静かに幸せな人生を送ってほしいと願わずには居られなかった


(師匠……、僕には師匠のようなことは出来ませんよ)

ナギへの怒りとネギへの心配で焦りの見える学校長を見て、高畑は思わず自分の無能さを歎いてしまう

実はナギを始めとする赤き翼と各方面との調整や交渉は、ほとんどガトウが行っていたのだ

高畑は幼い頃から幾度となく不可能と言われるような交渉を纏めていたガトウを見てきた故に、自分の無能さを痛感してしまう

あまり表立ってはないがナギ達が英雄として讃えられる裏には、ガトウの影ながらの力が大きかったのである


(アスナちゃんやネギ君が安心して暮らせるように……、僕は僕に出来ることをするしかないか)

以前近右衛門が指摘した通り、自分が戦うしか出来ないことを高畑はよく理解している

だからこそ高畑は完全なる世界の残党や信奉者達を徹底的に始末して来たのだ

その全ての者が本当に完全なる世界に関わったのか、そして彼らと同じ世界を終わらせようとしてるのか完全な確証がないことも多々あったが高畑は彼らを見逃すことは出来なかった

無論彼らの全てを殺した訳ではなく、捕らえれる者は捕らえていたのだが……



「高畑君、ネギが麻帆良に行ったらよろしく頼む。 ワシは本国の穏健派と連携してでも、ネギを麻帆良へ行かせる」

高畑が僅かに考え込んでる間に、学校長はネギを麻帆良へ送り込む策を幾つか話していたようだ

学校長は利用出来るモノは利用して、強引にでもネギを麻帆良へ行かせる環境を作るらしい


「いいのですか? 貴方と学園長は友人では……」

「仕方なかろう。 ネギには麻帆良行きがベストなのじゃ。 麻帆良で高畑君が後ろ盾になってくれれば、近右衛門も追い出しはせんじゃろう」

あまりに強引過ぎる手段に高畑は不安そうだが、学校長としては最早他に手段がなかった

自分が憎まれ役を買って上手くいくならそれでいいと考えているようである


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