平和な日常~冬~4
「そうか、木乃香は落ち着いてるか。」
同じ頃刀子は近右衛門に帰郷中の出来事などを報告していた。
内容は主に魔法を知らされた木乃香の様子や変化であったが、表面的にはさほど大きな変化はなく落ち着いていると聞き安堵している。
「お嬢様の年齢ですともう少しはしゃいでもいいかとも思いますが、それだけ現状の日常に満足というか幸せを感じてるのかもしれません。 まあ学園長やご両親の苦労を理解すればこそ、あまり期待を持てないようでもありますが。」
そして肝心の木乃香自身の魔法に対する認識も現状では希望は抱いてはいるが過度な期待はしてないのが現状であり、その原因が両親や近右衛門自身だと聞くと近右衛門は流石に複雑そうな表情をしてしまう。
そもそも麻帆良における一般的な魔法使いの子供に対する教育は、魔法そのものよりも魔法と一般社会との関わり方や世間一般的な常識を理解させることに重点を置き苦労する。
メルディアナのような魔法使いだけのコミュニティーを形成して子供が外部の一般人と関わらないようなところとは違い、麻帆良は一般人にも開かれた街であるだけに魔法使いの教育はより現実的なものになっていた。
子供に魔法の秘匿を徹底的に理解させることは当然として、魔法の杖なども親が厳重に管理して居ない間に勝手に使わせないようにと気を配っているのだ。
まあ一般的な魔法使いはもう少し早い年齢から魔法を教えることが多いので木乃香とは違うのだが、近右衛門は木乃香の成長を喜ぶと同時に十代半ばの孫が両親や自分の苦労を理解していることは申し訳なくも思ってしまう。
「他の子達も居ますので基本的な教育は必要でしょう。 ただ横島君のこともありますので少々不安もありますが。」
結局現状では木乃香に特に問題はないが、刀子の不安は常識を何処かに置き忘れてきたような横島の影響である。
一般的な魔法関係者とかけ離れた横島がいかに特殊かということは早めに理解させねばならないと考えていた。
「その件は大丈夫じゃろ。 葛葉君はまだ例の遺産の地に行ってないから不安になるかもしれんが、わしは行ったのじゃよ。 あそこに行けば横島君が普通じゃないのは誰でも分かるはずじゃ。」
ただ近右衛門はそんな刀子の心配を無用だと考えている。
刀子はまだ異空間アジトに行ってないので不安になるのも当然だが、異空間アジトに行って横島が普通だと思うような人間は居ないと確信していた。
「……それほどなのですか?」
「神話の中にはかつて神々が世界を創ったなどという話も多いが、それを信じざるを得ないような場所じゃからのう。 君も近いうち見るかもしれんから覚悟しておくといい。 人生観が変わるぞ。」
一見すると楽観的にも見える近右衛門を刀子は少し不思議そうに見つめるが、近右衛門がアシュタロスの遺産を見たと告げるとその表情は驚きや困惑の表情が見えている。
無論刀子も横島の言葉を疑っている訳ではないがどうしても実感が持てないのが現状であり、その部分についてあまり深く考えては居なかった。
「そんな……」
「まあ横島君の常識がワシらとは違うのは確かじゃ、君はその点を木乃香達にきちんと教えてやってくれ。 出来れば横島君にもの。」
正直なところ近右衛門はボケたのかと一瞬疑いたくなるほどの衝撃を刀子は受けていた。
神々による天地創造などといったモノを刀子自身は信じてなかったのだから。
「言っておくがワシはまだボケてはおらんぞ。」
「そっ、そんなこと思ってませんよ!」
衝撃を受けて固まる刀子の姿に近右衛門は面白そうに笑うと自分はボケては居ないと冗談のように告げる。
刀子は自分の考えが読まれたからか僅かに動揺してしまうも、近右衛門は特に追求するまでもなく笑っているだけであった。
ぶっちゃけ他人に話しても正気を疑われるような話だったのは自覚しているらしい。
少し刀子をからかって驚く姿が見たかったようだ。
同じ頃刀子は近右衛門に帰郷中の出来事などを報告していた。
内容は主に魔法を知らされた木乃香の様子や変化であったが、表面的にはさほど大きな変化はなく落ち着いていると聞き安堵している。
「お嬢様の年齢ですともう少しはしゃいでもいいかとも思いますが、それだけ現状の日常に満足というか幸せを感じてるのかもしれません。 まあ学園長やご両親の苦労を理解すればこそ、あまり期待を持てないようでもありますが。」
そして肝心の木乃香自身の魔法に対する認識も現状では希望は抱いてはいるが過度な期待はしてないのが現状であり、その原因が両親や近右衛門自身だと聞くと近右衛門は流石に複雑そうな表情をしてしまう。
そもそも麻帆良における一般的な魔法使いの子供に対する教育は、魔法そのものよりも魔法と一般社会との関わり方や世間一般的な常識を理解させることに重点を置き苦労する。
メルディアナのような魔法使いだけのコミュニティーを形成して子供が外部の一般人と関わらないようなところとは違い、麻帆良は一般人にも開かれた街であるだけに魔法使いの教育はより現実的なものになっていた。
子供に魔法の秘匿を徹底的に理解させることは当然として、魔法の杖なども親が厳重に管理して居ない間に勝手に使わせないようにと気を配っているのだ。
まあ一般的な魔法使いはもう少し早い年齢から魔法を教えることが多いので木乃香とは違うのだが、近右衛門は木乃香の成長を喜ぶと同時に十代半ばの孫が両親や自分の苦労を理解していることは申し訳なくも思ってしまう。
「他の子達も居ますので基本的な教育は必要でしょう。 ただ横島君のこともありますので少々不安もありますが。」
結局現状では木乃香に特に問題はないが、刀子の不安は常識を何処かに置き忘れてきたような横島の影響である。
一般的な魔法関係者とかけ離れた横島がいかに特殊かということは早めに理解させねばならないと考えていた。
「その件は大丈夫じゃろ。 葛葉君はまだ例の遺産の地に行ってないから不安になるかもしれんが、わしは行ったのじゃよ。 あそこに行けば横島君が普通じゃないのは誰でも分かるはずじゃ。」
ただ近右衛門はそんな刀子の心配を無用だと考えている。
刀子はまだ異空間アジトに行ってないので不安になるのも当然だが、異空間アジトに行って横島が普通だと思うような人間は居ないと確信していた。
「……それほどなのですか?」
「神話の中にはかつて神々が世界を創ったなどという話も多いが、それを信じざるを得ないような場所じゃからのう。 君も近いうち見るかもしれんから覚悟しておくといい。 人生観が変わるぞ。」
一見すると楽観的にも見える近右衛門を刀子は少し不思議そうに見つめるが、近右衛門がアシュタロスの遺産を見たと告げるとその表情は驚きや困惑の表情が見えている。
無論刀子も横島の言葉を疑っている訳ではないがどうしても実感が持てないのが現状であり、その部分についてあまり深く考えては居なかった。
「そんな……」
「まあ横島君の常識がワシらとは違うのは確かじゃ、君はその点を木乃香達にきちんと教えてやってくれ。 出来れば横島君にもの。」
正直なところ近右衛門はボケたのかと一瞬疑いたくなるほどの衝撃を刀子は受けていた。
神々による天地創造などといったモノを刀子自身は信じてなかったのだから。
「言っておくがワシはまだボケてはおらんぞ。」
「そっ、そんなこと思ってませんよ!」
衝撃を受けて固まる刀子の姿に近右衛門は面白そうに笑うと自分はボケては居ないと冗談のように告げる。
刀子は自分の考えが読まれたからか僅かに動揺してしまうも、近右衛門は特に追求するまでもなく笑っているだけであった。
ぶっちゃけ他人に話しても正気を疑われるような話だったのは自覚しているらしい。
少し刀子をからかって驚く姿が見たかったようだ。