平和な日常~冬~4

「今日はグラタンにしたぞ。 少し和食が続いてたからな。」

その後横島宅では夕食になるがこの日は両親が仕事で遅い桜子も夕食を食べて帰るらしい。

相変わらずどうしていいか分からない様子の刹那も当然居るが、元々学校でも物静かなせいか明日菜達はあまり気にしてないようである。

ただ高畑は唯一刹那の様子を気にしてるようではあるが、明日菜達の手前下手な言葉をかける訳にもいかずに見守るしか出来ない。


「おいしい?」

「はい、美味しいですよ。」

そんな中でタマモは刹那が食事をする姿を見ると期待に胸を膨らませるような表情で美味しいかと尋ねていた。

まだ完全に落ち着いた訳ではないが、先程から何度となくタマモから話しかけられていたので流石に慣れてきてようやく普通に返事を返せるようになった刹那を見てタマモは満足そうな笑顔を見せる。

正直なところタマモは誰でも一緒に食事をすると仲良くなれると本気で思っていた。

今回はなかなか会えない刹那と偶然会ったことから一緒に食事をして仲良くなろうと考えたのだ。


「タマちゃんって、ほんと友達多いのよね。」

「うんうん、リアルに百人は軽く越えてるもんね。」

一方日頃学校でも口数少ない刹那が人と普通に話してる光景自体は珍しいが、相手がタマモだと女子中高生からお年寄りまで交遊関係の広いだけに全く違和感はない。

何故こんなに友達が増えるんだと明日菜と桜子は若干不思議そうな表情をするも、あの人懐っこい笑顔が原因なんだろうなとしみじみと感じる程度だ。

正直なところ二人は刹那に関してはほとんど知らないし、いかに2ーAが仲がいいクラスだと言われても実際にはある程度仲がいいグループがあり交流がない人もいる。

刹那がクラスで交流があるのは龍宮真名と長瀬楓くらいで、明日菜と桜子はどちらかといえば苦手なタイプかもしれない。


「誰に似たんだろうな。」

「なんか横島さんと木乃香を足して割ったような感じがするわ。 横島さんの積極性と木乃香の人当たりの良さが合わさったような感じがするのよね。」

そんな明日菜と桜子の言葉に横島はふと誰に似たんだろうと呟くと、明日菜は横島と木乃香を足して割ったような印象だと告げる。

常に笑顔を絶やさないタマモの人当たりの良さは何処か木乃香に似ているが、タマモには木乃香にない積極性があった。

明日菜はそれは横島に似たというか横島を見てタマモが学んだのかなと思っている。



そして食事が終わると桜子が帰る時間になり同じタイミングで刹那も帰ると告げると桜子と刹那は帰ることになるが、時間も時間なので横島は二人を送っていくことにした。

尤も横島自身は朝からお酒を飲んでいるので当然ながら歩いてであるが。


「悪かったな。 タマモがワガママ言って。」

「いえ。」

まず先に桜子を近くの駅まで送ると続いて刹那を女子寮まで送ることにするが、桜子と別れると途端に会話が続かなくなってしまう。

一応横島は何度か話しかけるも、返事が一言ではどうしようもない。

結局横島はそのまま刹那とろくに会話もしないで別れるが、刹那自身は現在は別に横島を嫌ってる訳ではなく何を話していいか分からないだけであった。

正直聞いてみたいことは幾つかあるも、ろくに話したことがない相手にそれを尋ねるような会話スキルは刹那にはない。

対する横島は木乃香のこともあり刹那の様子を多少は気にしてはいたが、だからと言って自分から軽々しく踏み込むのは少し不味いかなと感じたようで流れに任せたまま何もしないで別れている。

実は刀子が二人の和解に動いてるのを横島は知っていて、余計な手出しは邪魔にしかならないと思っていたこともあるが。

ただタマモの思いつきでのこの日の出来事は、刹那にいろいろ考えさせるきっかけとなり少なからず影響を与えることになる。

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