平和な日常~冬~4

「ただいま! いっしょにごはんたべようってともだちつれてきた!」

「おかえり。 夕食か? 別にいいけど誰を……って。 まあいいや。 上がってくれ。」

その後刹那を連れて家に帰ったタマモは家に入ると何の迷いもなく友達を連れて来たと横島に報告する。

刹那自身は横島宅の玄関でようやくタマモが手を離したのでどうしていいか分からず立ち尽くしていたが、玄関に誰が来たのか様子を見に来た横島は特に驚くまでもなく刹那を自宅に招き入れていた。

ぶっちゃけ横島は刹那が玄関に入った時点で気づいているも何故刹那がタマモと一緒に来たのかは当然ながら知らない。

ただ別に害がある人物ではないし、タマモが連れて来た以上は拒否する気は全くないが。


「あれ、桜咲さん?」

そんなわけで刹那は遠慮というか戸惑いながら横島宅に上がるが、そこにはさよと明日菜と桜子が居る。

刹那と三人は当然ながら予期せぬタイミングで顔を合わせたことに驚くも、どちらかと言えば刹那の方が驚いている。

明日菜達は日頃滅多に店に来ない刹那が横島宅に来たことには多少驚いていたが、元々タマモの交遊関係は広いので刹那がタマモと友達だと言われた部分には驚いてなど居なかった。


「こりゃまた、随分お菓子やらお年玉やら貰ったな。 誰から貰ったかちゃんと覚えてるか? 正月が明けたらお礼しないとなぁ。」

一方横島は刹那よりもタマモが持ち帰ったお菓子やお年玉の多さに驚いていた。

年末年始で家族が帰省したり旅行に行ったお土産やお年玉でタマモのリュックはパンパンだったのだ。

三が日が明けたらお礼にお菓子でも持たせようかと話していて、刹那はそんな横島とタマモを興味深げに見つめるも放置されてる自分はどうすればいいのかと戸惑っている。


「桜咲さん、実家に帰らなかったの?」

「あっ、はい。 実は私帰るような実家がないんです。 そんな話をしていたら一緒にご飯を食べようと……。」

「なるほどね。 タマちゃんらしいわ。」

そして若干落ち着かない様子の刹那だが、明日菜達はあまり気にした様子はなくごくごく普通に話しかけていた。

実のところ刹那はクラスでも口数が少なく明日菜達もあまり話した記憶はないが、今日居る明日菜とさよと桜子はどちらかと言えば能天気というか細かいことを気にするタイプではないので特に気にしてないようである。


「タマモちゃんって気に入った人が居ると一緒にご飯を食べるのが好きなんですよ。」

何故刹那が横島宅に来たのかはだけは興味がある様子の明日菜 であるが、刹那から事情を聞くとタマモらしいと笑っていた。

それでも意味が分からんと言いたげな刹那に、さよはタマモが気に入った人とご飯を食べるのが好きだと説明するも刹那は相変わらず変わった子だとしか感じない。


「あの、突然ですしご迷惑なら……」

「気にしなくていいぞ。 家は一人や二人食客が増えるのは珍しくないしな。」

突然のことにも動じずに暖かい雰囲気の明日菜達や横島に、刹那は少々居心地が悪いのか帰る理由を探そうとするも横島は気にしなくていいからと帰る理由を潰してしまう。

そんなことをしてる間にタマモが手洗いやうがいをしてリビングに戻ると、最早逃げ出せる雰囲気ではなくなっていた。


「かるたやろ!」

そして戻って来たタマモが休む間もなく再びカルタをやろうと言い出すと、刹那も何故かカルタをやるメンバーに加えられてしまいなし崩し的に参加することなる。



「あれ、桜咲君?」

「高畑先生? 何故ここに……」

「僕は横島君に誘われて去年の年末から泊まってるんだよ。」

それからしばらくはカルタをしていく一同だったが、夕方を過ぎると高畑が戻って来ていた。

高畑も刹那も互いに予期せぬ場所での再会に驚きを隠せない様子であり共に不思議そうな表情をする。

高畑は高畑で刹那が木乃香を避けてるのは当然知っているのでそんな刹那が横島宅に居ることは驚きであるし、刹那は刹那で孤高というかあまり他人と深く関わらずに秘密結社完全なる世界との戦いに一筋だと言われる高畑が横島達と一緒に居ることは驚きらしい。
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