平和な日常~冬~4
一方この日の近右衛門は朝から新年の挨拶に訪れる人々の応対で忙しかった。
元旦ということもあり仕事自体は休んでいるが、立場上挨拶に訪れる者も多くゆっくり休養という訳にはいかない。
まあそれでも学園関係者や魔法協会幹部などは近右衛門を気遣い遠慮しているが、この機会に顔を覚えて貰いたい関係者や末端の支援企業の人間などは挨拶に来る者もそれなりに存在する。
そもそも近右衛門は例年においては麻帆良に居てはゆっくり休めないことから、京都の近衛本家に帰省して休んでいたのだ。
ただその分例年は麻帆良に戻ると新年の挨拶に訪れる者が多く、今年は近右衛門が麻帆良にいることからそれらが元旦から来ている。
「学園長先生、回復魔法と魔法薬もあまり使われるとお体に触りますよ。」
「仕方あるまい。 元旦に挨拶に来た者に食事と酒を振る舞う以上はこちらも受けないわけにはいかんからな。」
正直なところ挨拶だけならばまだいいのだが正月である以上はおせち料理と酒は振る舞わねばならないし、来客に酒を飲ませる以上はこちらも付き合わない訳にはいかなかった。
ただこの日はそんな日になるのを予期していたので、朝から回復魔法の使い手に来て貰っている。
彼はまだ大学院生の若さであったが、年末年始を大学院の研究と魔法協会の仕事に費やしてくれる貴重な人材だった。
近右衛門は回復魔法と魔法薬で体のアルコールを抜き食べ過ぎを防ぐために内蔵の働きを増幅させたりとしているが、何事も過ぎると毒になるのは魔法も一緒で回復魔法や魔法薬も体への負担はゼロではない。
「東洋魔法には身代わりの式神もあると聞きます。 身代わりでも立てたらいかがですか?」
「相手も真剣じゃからのう。 出来ればそれは最後の手段にしたい。」
表向きは飄々としている近右衛門の実態は知れば知るほど全く違うものであり、魔法使いの大学院生はなんとも言えない表情をしている。
彼も今日来るまではお偉いさんは美味いもの食べて美味い酒を飲んで羨ましいと思っていたが、体調や自身が望む望まないに限らず朝からずっと飲み食いしなければならないのはほとんど拷問に近いとすら感じていた。
しかも相手は自分や自分の企業を売り込むのに必死で近右衛門の都合など考えてないのだから余計にそう思ってしまう。
「ならせめて午後は初詣なり挨拶回りにでも出掛けて下さい。 三が日これが続くと体調の保証はしかねますよ。」
「うむ、そうじゃの。 ならば雪広のところにでも行くか。 あそこならば誰も文句が言えまい。」
近右衛門自身は三が日はこれに付き合うつもりのようだったが、流石に三が日これが続くと高齢な近右衛門の体調が危ないと感じた大学院生は麻帆良学園の学園長公邸から出掛けるように強く勧めていた。
正直なところ半日ほどの間に来た相手は必ずしも近右衛門が相手をする必要は感じられず、なまじ公邸に居るから相手をせねばならないのだ。
それならばいっそ近右衛門自身が挨拶回りにでも行った方がよほどマシだと大学院生は考えたようである。
結局近右衛門は午後からは雪広家に挨拶に行くこととして調整を頼むことにした。
尤もせっかく家族水入らずの雪広家の邪魔はしたくはないので、表向きは挨拶に行ったことにして実際には雪広邸の客室でも借りて休もうと思っていたが。
きっと雪広家の人々には呆れられるだろうが、近右衛門としてはこんな時に本音を明かして頼れる相手はさほど多くはない。
それに正直なところ近右衛門も最近の忙しさは体に堪えていて、そろそろゆっくり休みが欲しいのが本音であった。
元旦ということもあり仕事自体は休んでいるが、立場上挨拶に訪れる者も多くゆっくり休養という訳にはいかない。
まあそれでも学園関係者や魔法協会幹部などは近右衛門を気遣い遠慮しているが、この機会に顔を覚えて貰いたい関係者や末端の支援企業の人間などは挨拶に来る者もそれなりに存在する。
そもそも近右衛門は例年においては麻帆良に居てはゆっくり休めないことから、京都の近衛本家に帰省して休んでいたのだ。
ただその分例年は麻帆良に戻ると新年の挨拶に訪れる者が多く、今年は近右衛門が麻帆良にいることからそれらが元旦から来ている。
「学園長先生、回復魔法と魔法薬もあまり使われるとお体に触りますよ。」
「仕方あるまい。 元旦に挨拶に来た者に食事と酒を振る舞う以上はこちらも受けないわけにはいかんからな。」
正直なところ挨拶だけならばまだいいのだが正月である以上はおせち料理と酒は振る舞わねばならないし、来客に酒を飲ませる以上はこちらも付き合わない訳にはいかなかった。
ただこの日はそんな日になるのを予期していたので、朝から回復魔法の使い手に来て貰っている。
彼はまだ大学院生の若さであったが、年末年始を大学院の研究と魔法協会の仕事に費やしてくれる貴重な人材だった。
近右衛門は回復魔法と魔法薬で体のアルコールを抜き食べ過ぎを防ぐために内蔵の働きを増幅させたりとしているが、何事も過ぎると毒になるのは魔法も一緒で回復魔法や魔法薬も体への負担はゼロではない。
「東洋魔法には身代わりの式神もあると聞きます。 身代わりでも立てたらいかがですか?」
「相手も真剣じゃからのう。 出来ればそれは最後の手段にしたい。」
表向きは飄々としている近右衛門の実態は知れば知るほど全く違うものであり、魔法使いの大学院生はなんとも言えない表情をしている。
彼も今日来るまではお偉いさんは美味いもの食べて美味い酒を飲んで羨ましいと思っていたが、体調や自身が望む望まないに限らず朝からずっと飲み食いしなければならないのはほとんど拷問に近いとすら感じていた。
しかも相手は自分や自分の企業を売り込むのに必死で近右衛門の都合など考えてないのだから余計にそう思ってしまう。
「ならせめて午後は初詣なり挨拶回りにでも出掛けて下さい。 三が日これが続くと体調の保証はしかねますよ。」
「うむ、そうじゃの。 ならば雪広のところにでも行くか。 あそこならば誰も文句が言えまい。」
近右衛門自身は三が日はこれに付き合うつもりのようだったが、流石に三が日これが続くと高齢な近右衛門の体調が危ないと感じた大学院生は麻帆良学園の学園長公邸から出掛けるように強く勧めていた。
正直なところ半日ほどの間に来た相手は必ずしも近右衛門が相手をする必要は感じられず、なまじ公邸に居るから相手をせねばならないのだ。
それならばいっそ近右衛門自身が挨拶回りにでも行った方がよほどマシだと大学院生は考えたようである。
結局近右衛門は午後からは雪広家に挨拶に行くこととして調整を頼むことにした。
尤もせっかく家族水入らずの雪広家の邪魔はしたくはないので、表向きは挨拶に行ったことにして実際には雪広邸の客室でも借りて休もうと思っていたが。
きっと雪広家の人々には呆れられるだろうが、近右衛門としてはこんな時に本音を明かして頼れる相手はさほど多くはない。
それに正直なところ近右衛門も最近の忙しさは体に堪えていて、そろそろゆっくり休みが欲しいのが本音であった。