平和な日常~冬~4

「やっぱ朝から飲む酒は美味いな~」

その後横島は高畑を巻き込み宣言通りに朝からお酒を飲み始めるが、ぶっちゃけ横島も高畑もお酒を飲んでも悪酔いしないので見た感じはあまり変化はない。

ただ高畑は横島ほどお酒に強くはないので飲むペースは違ってはいるが。


「そうだ、忘れてた。 お年玉やらんとな。 俺もとうとうあげる側になっちまったな。」

膝の上に乗せたタマモがおせち料理を美味しそうに頬張る姿を横島は見てるだけで満足げであったが、お年玉をあげるのを忘れていたと言い出すとタマモとさよと明日菜にお年玉を手渡す。


「僕からもあげるよ。」

朝からご機嫌な横島は当然ながら明日菜にもお年玉を渡しており明日菜は貰っていいかのかと悩むが、明日菜の結論が出る前に高畑が続けて三人にお年玉をあげてしまったので結局明日菜は素直に貰うことにする。

正月早々せっかくくれたお年玉を突き返して喜ぶとも思えないし、素直に嬉しかったことも本音にはあった。


「わたしもおとしだまあげたい!」

「タマちゃん、お年玉は子供はあげられないのよ。」

そして何より横島と高畑からお年玉を貰ったタマモがやはり自分もお年玉をあげたいと言い出したので、明日菜はタマモへの説明と説得で返すと言い出すタイミングを完全に逃してしまうことになる。

タマモ的にはいつもと同じく自分が嬉しかったことを今度は自分がしてあげたいだけなのだが、根本的な常識を相変わらず理解してなかった。


「その年でお年玉あげたいとは、タマモは大物になるなぁ。」

「笑ってないで自分できちんと常識を教えてあげてくださいよ!」

基本的に説明とか説得が苦手な明日菜は四苦八苦しながらタマモにお年玉に関する常識を教えていくが、横島はそんなタマモと明日菜を見て楽しそうに笑っているだけだった。

ただタマモは困った様子の明日菜の表情から、お年玉をあげるのは大人にならないと出来ないんだと学習することになる。


「タマモの年賀状は百枚軽く超えてるし。」

そのままお酒におせちや雑煮と賑やかな朝を過ごしていき年賀状が来ると横島は誰にどれだけ来たのかと分けていくが、一番はやはりタマモであった。

実はタマモは十二月半ばくらいから年賀状を出したいと言い出して、仲のいい人達に住所を聞きまくって年賀状出すからと予告していたのだ。

ちなみにタマモの年賀状は今年の干支の絵を一枚一枚手描きで描いて出していた。


「タマちゃんもマメよね。 そんなとこ横島さんにそっくりだわ。」

届いた年賀状を一枚一枚見ては嬉しそうに笑顔を見せるタマモであるが、中にはタマモが出してなかった人からも数枚だが来ている。

タマモは出した人を全て覚えてるらしく残っていた年賀状を持ってくると、干支の絵を描き始めて出してなかった人には今日中に返信するつもりのようだ。

それは本当に見ていて微笑ましい光景だが、明日菜はふと好きなことにはとことんマメなタマモは横島に似てきたのかと思ってしまう。

正直タマモの将来を考えると、もう少し常識を教えないとダメだろうなと木乃香達が戻ったら相談しようと心に決めていた。

好きなことにはとことん熱中するのはいいが、横島のようにあまり常識からずれると将来苦労するのはタマモなのだ。

なお明日菜自身もタマモから住所を聞かれたので年賀状を出しており、タマモの年賀状は今頃女子寮に届いているだろう。

他に明日菜が年賀状を出したのは、世話になってる近右衛門や高畑や雪広清十郎なんかと昔から年賀状をくれる木乃香やあやかくらいである。
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