平和な日常~冬~4
そして年明けた横島達は新年の挨拶を交わして新たな一年の始まりを迎えると、タマモはそろそろ限界だったことと明日菜は元旦の朝も新聞配達があることから三人は早々に休むことになる。
横島と高畑は飲みかけの酒がまだ残っていたことからもう少し起きてることにしたが、三人が居なくなると途端に部屋が広く感じるほど静かになってしまう。
「新しい一年の始まりか。 今年も平穏な一年であって欲しいよ。」
すっかり静まり返ったリビングではテレビの音がやけに響いていて、横島は瓶に三分の一ほど残っている酒を高畑と自分のグラスに注いでしまうとそのままグラスに入った酒をグイッと飲んでいた。
高畑はそんな横島を横目で見て、旧年を改めて見つめ直すと新たな一年の平穏であって欲しいとの願いを徐に口にする。
新しい年を迎え希望に胸膨らませたいとは思うが、高畑は今の平穏がいかに危ういモノかをよく理解していた。
「大丈夫っすよ。 なんとかなりますから。 きっと。」
正直言うと高畑は不安なのだろう。
仲間を師を奪った秘密結社完全なる世界の復活が確実なものとなり、彼らの追及がいつ麻帆良に訪れるか分からないのだから。
「君はやはり変わってるな。 現状を知りそれでもなお楽観視とも言えることを口にする。 一見するといい加減なだけにしか聞こえないそんな言葉が何故か心地いい。 自分でも不思議だよ。」
高畑の不安は尤もだろうし、それは真相を知る誰もが感じていることだろう。
無論横島も。
ただ軽い調子で大丈夫だと語る横島の言葉に高畑は吹き出すように笑うと何故か心地いいと口にする。
それは自分を励ます為の気休めかもしれないと感じる高畑だが、それでも真相を知り同じことを言える者は決して多くはない。
「ぶっちゃけ俺はもう守るべきものを決めてますからね。 高畑先生よりは気楽ですよ。 もしかすると高畑先生とは違う立場になるかもしれませんけど。」
立場上安易に不安だと口には出せない高畑に横島は何か感じるのか、高畑に視線を向けると少しばかり踏み込んだことを横島から語り始めた。
その言葉は横島の明確な立場表明であり、今も悩む高畑の胸に深く突き刺さるものだった。
「横島君、君は……!」
この時高畑は自身の迷いが横島に見抜かれていることを感じ驚愕してしまう。
高畑自身も明日菜を見捨てるなどとは全く考えてはないが、この先にどちらを取るかという究極の選択肢を迫られる可能性があることは十分理解してる。
「仮に高畑先生がどっちを選んでもあの子は理解してくれますよ。」
あまりの驚きに言葉が詰まる高畑に、横島は少し笑ってしまうとついあの瞬間のことを思い出していた。
本来はあってはならない究極の選択。
それは横島にとって一つの終わりであると同時に一つの始まりでもあった。
「生意気なこと言うようですけど、後悔だけはしないようにして下さい。」
申し訳なさそうに笑う横島は、余計な一言かもしれないと理解しつつもその言葉を言わざるを得なかった。
あまり深く関わらなければ呆れるだけで済んだのかもしれないが、知ってしまった以上は放っておくことが出来ない。
特に高畑の現状と悩みは少しだけ昔の自分に似ているのだから、気になり余計なことがしたくなる。
「そうか、君は……。」
一見すると申し訳なさそうな横島だが、高畑から見てその瞳に迷いはない。
君は一体何者なのだと思わず出かかった言葉を飲み込んだ高畑は、横島に憧れの人の面影を見てしまう。
容姿も考え方も違い生き方そのものが違うと言っていいほど似てる部分を探すのが大変な両者だが、高畑は何故か懐かしく感じてしまうのだ。
そして以前に詠春が横島に懐かしさを感じたと言っていた意味が、本当に理解出来た気がする。
横島と高畑は飲みかけの酒がまだ残っていたことからもう少し起きてることにしたが、三人が居なくなると途端に部屋が広く感じるほど静かになってしまう。
「新しい一年の始まりか。 今年も平穏な一年であって欲しいよ。」
すっかり静まり返ったリビングではテレビの音がやけに響いていて、横島は瓶に三分の一ほど残っている酒を高畑と自分のグラスに注いでしまうとそのままグラスに入った酒をグイッと飲んでいた。
高畑はそんな横島を横目で見て、旧年を改めて見つめ直すと新たな一年の平穏であって欲しいとの願いを徐に口にする。
新しい年を迎え希望に胸膨らませたいとは思うが、高畑は今の平穏がいかに危ういモノかをよく理解していた。
「大丈夫っすよ。 なんとかなりますから。 きっと。」
正直言うと高畑は不安なのだろう。
仲間を師を奪った秘密結社完全なる世界の復活が確実なものとなり、彼らの追及がいつ麻帆良に訪れるか分からないのだから。
「君はやはり変わってるな。 現状を知りそれでもなお楽観視とも言えることを口にする。 一見するといい加減なだけにしか聞こえないそんな言葉が何故か心地いい。 自分でも不思議だよ。」
高畑の不安は尤もだろうし、それは真相を知る誰もが感じていることだろう。
無論横島も。
ただ軽い調子で大丈夫だと語る横島の言葉に高畑は吹き出すように笑うと何故か心地いいと口にする。
それは自分を励ます為の気休めかもしれないと感じる高畑だが、それでも真相を知り同じことを言える者は決して多くはない。
「ぶっちゃけ俺はもう守るべきものを決めてますからね。 高畑先生よりは気楽ですよ。 もしかすると高畑先生とは違う立場になるかもしれませんけど。」
立場上安易に不安だと口には出せない高畑に横島は何か感じるのか、高畑に視線を向けると少しばかり踏み込んだことを横島から語り始めた。
その言葉は横島の明確な立場表明であり、今も悩む高畑の胸に深く突き刺さるものだった。
「横島君、君は……!」
この時高畑は自身の迷いが横島に見抜かれていることを感じ驚愕してしまう。
高畑自身も明日菜を見捨てるなどとは全く考えてはないが、この先にどちらを取るかという究極の選択肢を迫られる可能性があることは十分理解してる。
「仮に高畑先生がどっちを選んでもあの子は理解してくれますよ。」
あまりの驚きに言葉が詰まる高畑に、横島は少し笑ってしまうとついあの瞬間のことを思い出していた。
本来はあってはならない究極の選択。
それは横島にとって一つの終わりであると同時に一つの始まりでもあった。
「生意気なこと言うようですけど、後悔だけはしないようにして下さい。」
申し訳なさそうに笑う横島は、余計な一言かもしれないと理解しつつもその言葉を言わざるを得なかった。
あまり深く関わらなければ呆れるだけで済んだのかもしれないが、知ってしまった以上は放っておくことが出来ない。
特に高畑の現状と悩みは少しだけ昔の自分に似ているのだから、気になり余計なことがしたくなる。
「そうか、君は……。」
一見すると申し訳なさそうな横島だが、高畑から見てその瞳に迷いはない。
君は一体何者なのだと思わず出かかった言葉を飲み込んだ高畑は、横島に憧れの人の面影を見てしまう。
容姿も考え方も違い生き方そのものが違うと言っていいほど似てる部分を探すのが大変な両者だが、高畑は何故か懐かしく感じてしまうのだ。
そして以前に詠春が横島に懐かしさを感じたと言っていた意味が、本当に理解出来た気がする。