平和な日常~冬~4
「信念って言うのか、執念って言うのか……。」
一方自宅に戻った横島は今度は自分達の蕎麦を作るが、近右衛門のことを少し考えていた。
横島が秘密を明かして以来土偶羅は近右衛門との協力を進めサポートをしいるが、横島が思っていたより近右衛門は土偶羅を頼らなかったなというのが横島の印象である。
言葉は良くないがもっと利用されるかと思っていたし、横島とすればそれが結果的に自分やこの街の平和に繋がるならそれでもいいと思っていた。
しかしふたを開けてみると近右衛門は自分達には出来ないことのみを頼り、必要以上に利用もすることも甘えることもしていない。
現状では効率の面から考える土偶羅の方が割りと積極的に近右衛門のサポートをしている。
横島はそれを近右衛門の信念なんだろうと思っていた。
自身は信念などほとんど持ち合わせてない横島だが、過去には信念や執念を持つ存在を見てきたことからもそう感じる。
もしかすると赤き翼という英雄に甘え現実を見失った魔法世界が反面教師になってるのかとも思うが。
恐らく木乃香ならば止めるだろうとも思うが、横島はそんな近右衛門の信念を止める気はなく静かに見守るべきだと考えている。
そもそも人間社会における人としての経験は近右衛門が横島より遥かに上なのだ。
「まっ、あの二人なら大丈夫だろ。」
少々心配があるとすれば近右衛門が無理をして寿命を縮めたりすることだが、その辺りは土偶羅に任せれば問題はない。
それに横島自身はアシュタロスの遺産や土偶羅の能力をほとんど使いこなせないだけに、近右衛門と土偶羅はいいコンビになるかと期待していた。
土偶羅は決して表にはならないが、表になるべく存在があればその力を遺憾なく発揮できる。
かつて神魔と戦った横島をサポートして世界を終わらせたように。
「できた?」
「おう、出来たよ。 熱いから気を付けて運ぶんだぞ。」
その後ついさっきリビングに戻ったタマモが待ちきれないからか再びキッチンにやって来るまで、時間的には三分にも満たなかっただろう。
ちょうど完成した蕎麦を横島はタマモと二人でリビングまで運んでいく。
「今年も終わりですね。」
「そうね。 本当にいろいろあった一年だったわ。」
ダシやかえしの香りが湯気と共に立ち籠めると一同は食欲を掻き立てられ蕎麦をすするが、さよと明日菜は年越し蕎麦の味にいよいよ今年も終わりなのだとしみじみと感じる。
さよも明日菜も共に去年の今頃は独りぼっちだったのだ。
さよはコンビニの明かりの元で深夜に年越し蕎麦を買いに来た学生達が居たことを思いだし、明日菜は静かな女子寮の食堂で夕食の代わりに蕎麦を食べたことを思い出していた。
あれから僅か一年後でこうして年越し蕎麦を食べていることが不思議に感じるほど変化があった一年である。
「一年か。 確かにいろいろあったな。」
そして過去を振り返り楽しげに笑う明日菜とさよの笑顔を見ていた高畑もまた去年の今頃を思い出し感慨深いものを感じていた。
一年前の高畑は魔法世界の辺境で完全なる世界の痕跡を探して大晦日を過ごし気がつけば年が明けていたのだ。
目の前の少女の一年前を思うと申し訳なさでいっぱいになるが、今この瞬間の笑顔に救われるようである。
ちらりと横島を見た高畑は、もし横島が麻帆良に来なければ自分は大切なモノに気付かぬままだったかもしれないと思うと本当に頭が下がる思いだった。
それぞれに一年を思い返しながら横島達は年明けを迎えることになる。
一方自宅に戻った横島は今度は自分達の蕎麦を作るが、近右衛門のことを少し考えていた。
横島が秘密を明かして以来土偶羅は近右衛門との協力を進めサポートをしいるが、横島が思っていたより近右衛門は土偶羅を頼らなかったなというのが横島の印象である。
言葉は良くないがもっと利用されるかと思っていたし、横島とすればそれが結果的に自分やこの街の平和に繋がるならそれでもいいと思っていた。
しかしふたを開けてみると近右衛門は自分達には出来ないことのみを頼り、必要以上に利用もすることも甘えることもしていない。
現状では効率の面から考える土偶羅の方が割りと積極的に近右衛門のサポートをしている。
横島はそれを近右衛門の信念なんだろうと思っていた。
自身は信念などほとんど持ち合わせてない横島だが、過去には信念や執念を持つ存在を見てきたことからもそう感じる。
もしかすると赤き翼という英雄に甘え現実を見失った魔法世界が反面教師になってるのかとも思うが。
恐らく木乃香ならば止めるだろうとも思うが、横島はそんな近右衛門の信念を止める気はなく静かに見守るべきだと考えている。
そもそも人間社会における人としての経験は近右衛門が横島より遥かに上なのだ。
「まっ、あの二人なら大丈夫だろ。」
少々心配があるとすれば近右衛門が無理をして寿命を縮めたりすることだが、その辺りは土偶羅に任せれば問題はない。
それに横島自身はアシュタロスの遺産や土偶羅の能力をほとんど使いこなせないだけに、近右衛門と土偶羅はいいコンビになるかと期待していた。
土偶羅は決して表にはならないが、表になるべく存在があればその力を遺憾なく発揮できる。
かつて神魔と戦った横島をサポートして世界を終わらせたように。
「できた?」
「おう、出来たよ。 熱いから気を付けて運ぶんだぞ。」
その後ついさっきリビングに戻ったタマモが待ちきれないからか再びキッチンにやって来るまで、時間的には三分にも満たなかっただろう。
ちょうど完成した蕎麦を横島はタマモと二人でリビングまで運んでいく。
「今年も終わりですね。」
「そうね。 本当にいろいろあった一年だったわ。」
ダシやかえしの香りが湯気と共に立ち籠めると一同は食欲を掻き立てられ蕎麦をすするが、さよと明日菜は年越し蕎麦の味にいよいよ今年も終わりなのだとしみじみと感じる。
さよも明日菜も共に去年の今頃は独りぼっちだったのだ。
さよはコンビニの明かりの元で深夜に年越し蕎麦を買いに来た学生達が居たことを思いだし、明日菜は静かな女子寮の食堂で夕食の代わりに蕎麦を食べたことを思い出していた。
あれから僅か一年後でこうして年越し蕎麦を食べていることが不思議に感じるほど変化があった一年である。
「一年か。 確かにいろいろあったな。」
そして過去を振り返り楽しげに笑う明日菜とさよの笑顔を見ていた高畑もまた去年の今頃を思い出し感慨深いものを感じていた。
一年前の高畑は魔法世界の辺境で完全なる世界の痕跡を探して大晦日を過ごし気がつけば年が明けていたのだ。
目の前の少女の一年前を思うと申し訳なさでいっぱいになるが、今この瞬間の笑顔に救われるようである。
ちらりと横島を見た高畑は、もし横島が麻帆良に来なければ自分は大切なモノに気付かぬままだったかもしれないと思うと本当に頭が下がる思いだった。
それぞれに一年を思い返しながら横島達は年明けを迎えることになる。