平和な日常~冬~4
翌日である大晦日の横島は朝からおせち作りに入っていた。
まあ黒豆や数の子など時間のかかる物は数日前から仕込みをしているが、本格的に作るのはこれからである。
ぶっちゃけあまりに手間のかかる仕込みはバレない程度の魔法料理で少し時間の短縮もしているが。
ちなみに餅に関しては縁起が悪い日を避ける為に二十八日にすでに餅つきをしているのだが、そもそも横島の店では時々和菓子も売るので餅つき自体さほど珍しくはない。
店の厨房の隅には臼と杵が普段からあり、今回は木乃香が居ない為に明日菜に手伝ってもらい餅つきを済ませている。
「また高そうな食材ばっかり買いましたね。 やっぱり、横島さんの家ってお金持ちだったんですか?」
「まさか、家は普通だよ。 今回はどうせ作るならなら本格的に作ってみようかと思ってな。 俺も賑やかな正月は久しぶりだしさ。 それに美味いもん食いたいだろ?」
さてそんなこの日も早朝に食材の買い出しに行った横島は朝から一階の厨房で調理をしているが、明日菜とタマモとさよの三人も野菜の皮むきなど簡単な作業を手伝っていた。
横島はせっかくの大晦日だしゆっくりしていいとも言ったのだが、タマモとさよはおせち料理に興味津々であるし明日菜も特にやることもないので一緒に付き合っている。
「そういえば横島さんって一人旅してたんですもんね。 寂しくないんですか?」
「全く寂しくないと言えば嘘になるけど、案外慣れるもんだよ。」
今年は賑やかな正月を迎えられると嬉しそうに語る横島に、明日菜はふと思い出したように去年の今頃は日本に居なかったんだろうなと漠然とだが考えていた。
国内ですら一人で旅行するなど明日菜には考えられないし、普通に寂しくないのかななどと素朴な疑問を感じ素直に尋ねてみる。
「ただぶっちゃけ戻りたいとは思わないし、戻る気もないけどな。」
案外慣れるものだと笑って話すも戻りたいとは思わないと語る横島は、やはりどこか寂しそうにも見えてしまう。
いったい今までに横島はどれほどの出会いと別れを繰り返してきたのだろうかと思うと、明日菜は胸の奥が微かにズキッと痛みを感じた気がした。
その痛みの理由は明日菜自身には分からないが、元々旅をしていた横島はいつか居なくなるかもしれないんだと最近はあまり考えなかったことが改めて頭の中を過っている。
「たびってりょこうのことだよね? わたしはみんなといっしょがいい!」
「そうだな~。 旅行はみんなと一緒がいいよな。」
いつくるか分からない別れが何故か唐突に不安に感じる明日菜だが、その瞬間タマモは満面の笑みで旅行はみんなと一緒がいいと口にした。
まるで見る者を幸せにするような無邪気なタマモの笑顔に、明日菜はふと横島が居なくなる不安をあまり感じなくなったのはタマモがやって来た頃かもしれないと思う。
元々麻帆良に来た当初の横島はどこかまだ麻帆良に腰を据えてないようなそんな雰囲気が残っていた気がするのだ。
そもそも横島が麻帆良に滞在するきっかけは宝くじに当たったからという冗談のような話が始まりであり、明確な訳がないだけに周りには不安があったと言えよう。
そんな横島を麻帆良に定着させたのはタマモだったのかもしれにいと明日菜はこの時になってようやく気付いていた。
「うん! みんなとやくそくしたもんね!」
横島・さよ・明日菜と周りの人の顔を見ていくタマモは、年明けにみんなと旅行に行くのが今から楽しみで仕方ないようである。
正直明日菜は金銭的な問題から必ずしも旅行に積極的ではなかったが、期待に胸膨らませるタマモを見ていると行かないとは言えないなと苦笑いが出そうになっていた。
まあ黒豆や数の子など時間のかかる物は数日前から仕込みをしているが、本格的に作るのはこれからである。
ぶっちゃけあまりに手間のかかる仕込みはバレない程度の魔法料理で少し時間の短縮もしているが。
ちなみに餅に関しては縁起が悪い日を避ける為に二十八日にすでに餅つきをしているのだが、そもそも横島の店では時々和菓子も売るので餅つき自体さほど珍しくはない。
店の厨房の隅には臼と杵が普段からあり、今回は木乃香が居ない為に明日菜に手伝ってもらい餅つきを済ませている。
「また高そうな食材ばっかり買いましたね。 やっぱり、横島さんの家ってお金持ちだったんですか?」
「まさか、家は普通だよ。 今回はどうせ作るならなら本格的に作ってみようかと思ってな。 俺も賑やかな正月は久しぶりだしさ。 それに美味いもん食いたいだろ?」
さてそんなこの日も早朝に食材の買い出しに行った横島は朝から一階の厨房で調理をしているが、明日菜とタマモとさよの三人も野菜の皮むきなど簡単な作業を手伝っていた。
横島はせっかくの大晦日だしゆっくりしていいとも言ったのだが、タマモとさよはおせち料理に興味津々であるし明日菜も特にやることもないので一緒に付き合っている。
「そういえば横島さんって一人旅してたんですもんね。 寂しくないんですか?」
「全く寂しくないと言えば嘘になるけど、案外慣れるもんだよ。」
今年は賑やかな正月を迎えられると嬉しそうに語る横島に、明日菜はふと思い出したように去年の今頃は日本に居なかったんだろうなと漠然とだが考えていた。
国内ですら一人で旅行するなど明日菜には考えられないし、普通に寂しくないのかななどと素朴な疑問を感じ素直に尋ねてみる。
「ただぶっちゃけ戻りたいとは思わないし、戻る気もないけどな。」
案外慣れるものだと笑って話すも戻りたいとは思わないと語る横島は、やはりどこか寂しそうにも見えてしまう。
いったい今までに横島はどれほどの出会いと別れを繰り返してきたのだろうかと思うと、明日菜は胸の奥が微かにズキッと痛みを感じた気がした。
その痛みの理由は明日菜自身には分からないが、元々旅をしていた横島はいつか居なくなるかもしれないんだと最近はあまり考えなかったことが改めて頭の中を過っている。
「たびってりょこうのことだよね? わたしはみんなといっしょがいい!」
「そうだな~。 旅行はみんなと一緒がいいよな。」
いつくるか分からない別れが何故か唐突に不安に感じる明日菜だが、その瞬間タマモは満面の笑みで旅行はみんなと一緒がいいと口にした。
まるで見る者を幸せにするような無邪気なタマモの笑顔に、明日菜はふと横島が居なくなる不安をあまり感じなくなったのはタマモがやって来た頃かもしれないと思う。
元々麻帆良に来た当初の横島はどこかまだ麻帆良に腰を据えてないようなそんな雰囲気が残っていた気がするのだ。
そもそも横島が麻帆良に滞在するきっかけは宝くじに当たったからという冗談のような話が始まりであり、明確な訳がないだけに周りには不安があったと言えよう。
そんな横島を麻帆良に定着させたのはタマモだったのかもしれにいと明日菜はこの時になってようやく気付いていた。
「うん! みんなとやくそくしたもんね!」
横島・さよ・明日菜と周りの人の顔を見ていくタマモは、年明けにみんなと旅行に行くのが今から楽しみで仕方ないようである。
正直明日菜は金銭的な問題から必ずしも旅行に積極的ではなかったが、期待に胸膨らませるタマモを見ていると行かないとは言えないなと苦笑いが出そうになっていた。