平和な日常~冬~4

その日大掃除が終わったのは夜七時を過ぎた頃だった。

二階と三階は使っていない部屋が多いこととハニワ兵が帰省前に一度大掃除をしていた影響でなんとか終わったが、実際問題としてそうでもなければ一日では終わらなかっただろう。

最後に横島達自身が夕食前にお風呂に入って一日の疲れと汚れを落とすと、ようやく一息つけていた。


「 今日は遅くなったから焼き肉にしよう。」

そんな今夜の夕食は二階のリビングで焼き肉をすることになった。

食材は昼食を食べに行った帰りに購入していて、今日は夕食を作る時間がないだろうと思いお手軽な焼き肉にすることにしていたのだ。


「流石に疲れたわね。 改めて横島さんの家の広さを実感したわ。」

今日一日頑張った明日菜・タマモ・さよの三人は流石に疲れた様子だったが、明日菜は改めて横島の家の広さを身をもって知りなんとも言えない表情をする。

別に文句がある訳ではないのだが、ここを借りた当初の状況である一人暮らしの男性が借りる物件ではないなとは改めて感じた。

尤も明日菜自身も横島の家は居心地が良く好きなのも事実であるが。


「そろそろいいぞ。」

そのままこたつに入りぬくぬくとした暖かさに包まれる明日菜達はホットプレートで焼かれる野菜や肉が焼けるのをじっと待っているが、空腹時に嗅ぐ肉が焼ける匂いは食欲をより一層引き立てている。

ちなみにこの日の肉は近所のスーパーで購入したごく普通の国産品であり、焼き肉のタレが自家製な程度だ。

横島が食べ頃だと告げると明日菜達は待ってましたと言わんばかりに肉や野菜に手を伸ばしていく。


「おいしい!」

熱々の肉を野菜と一緒に口一杯に頬張ったタマモは、いつものようにもぐもぐと満面の笑みで味わうと嬉しそうに美味しいと口にした。

もちろん明日菜とさよも空腹だったせいか勢いよく食べており、横島はそんな三人を見て満足げに自身も焼き肉を頬張ることになる。




その後楽しい夕食が終わるとタマモは一日張り切っていた影響で早くも睡魔に襲われ始めてしまい、横島の膝の上でうとうととしてしまう。

当然ながらまだ寝たくないタマモは必死に睡魔と戦うが、この日は昼寝をしてないこともあって身体はすでに睡眠を欲していた。


「寝ちゃいましたね。」

結局明日菜とさよは何度かタマモに布団に行こうと誘うが、時間的にもいつもならまだ起きてる時間だけにタマモは頑張って起きていたがとうとう横島の膝の上で眠ってしまった。

足をこたつに入れて横島の上に居るだけにちょうどいい暖かさで心地いいらしい。

今日一日張り切っていたタマモが眠り一気に静かになった部屋で、さよはタマモが風邪を引かないようにと慌てて毛布を持って来て横島ごとタマモにかけてあげている。


「どんな夢を見てるのかしら。」

そのまま横島達はしばしタマモの寝顔を堪能していくが、大掃除をやりきったからか本当に満足そうな寝顔をしていた。

その寝顔にどんな夢を見てるのかと想像する明日菜は、きっと夢の中でも何かを一生懸命頑張ってるのだろうと思うと思わず笑ってしまう。


「妹が居たらこんな感じなのかしらね。」

改めて考えると明日菜にとってタマモとの関係は今までにあったどの関係とも違っているなと思う。

それは少し年の離れた妹のようだと感じる辺り、明日菜にとってタマモはすでにかけがえのない存在である。

横島はそんなタマモと明日菜を見つめて、二人の未来を守らねばならないと改めて決意する。

他の誰のためでもない自分自身の為にも。


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