平和な日常~春~

その夜横島は麻帆良ケーブルテレビで再放送してる前年の麻帆良祭を見ながら、土偶羅からの定期報告に目を通していた

横島と土偶羅の関係は少し奇妙なものである

基本的に横島は指示など一切出さないし土偶羅のやる事には関与しないが、報告だけは定期的に上がって来るのだ

内容は主に二種類あり異空間アジト内に関わる各種定期報告と、対外的な情報収集活動で得た情報である

重要情報は土偶羅本人が伝えに来る事もあるが、ほとんどは報告という形で伝えられるだけであった

そんな訳でヒャクメから受け継いだ神通パソコンに送られて来た報告を見ていく横島だったが、とある人物の報告が最重要項目に追加されている


「明日菜ちゃん……」

思わず絶句してしまったその報告は明日菜に関する追加調査だった

明日菜が《アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア》と言う魔法界の滅びた王家の生き残りだと、土偶羅が調べ上げたのである

付帯項目には二十年末前の魔法界での戦争の大まかな経緯が書かれており、大戦中アスナ姫と関わりがあった赤き翼により逃がされ麻帆良に匿われてる可能性が高いと推測されていた

なおこの件に関しての追加調査には魔法界での調査も必要と指摘されており、必要ならば魔法界調査への許可を求めるとも書かれている


「うむ……」

明日菜の正体は掴んだ土偶羅だったが、詳しい事情や過去は依然として不明なままだった

横島は現状で土偶羅が集めた情報の数々に改めて目を通していくが、判断に迷う状況である


「深入りしない程度で調査が必要か」

横島は麻帆良に来て以来、こういった報告でいくつかの追加調査を止めていた

厄介事に関わるつもりもない横島としては、深入りしない程度の情報で十分だったのだ

明日菜に関しては過去や魔法界の事情よりも、現在の明日菜の状況などに絞って継続調査を進めることを頼むことにする


「なんか気になる子だったけど訳アリか~」

初対面以来何か人とは違う感覚を感じていた横島は明日菜の正体に複雑な気持ちもあるが、だからと言って現状で横島が明日菜への対応を変えるはずもなかった

平和に暮らしてる明日菜の過去を掘り返すほど無神経ではない


「しかし、またこいつ絡みか。 何やっても中途半端だな。 あのじいさんも大変だわ」

明日菜の件に一区切りを付けた横島はふと付帯項目にあったナギ・スプリングフィールドの写真に目が行っていた

以前にエヴァ絡みで情報を得ていたナギだったが、横島の印象はあまりよくない

その訳はイケメンの見た目へのやっかみもあるが、ナギの行動が行き当たりばったりで中途半端だった事もある

元々エヴァへの中途半端な対応で横島の印象は良くなかったナギだったが、明日菜の件もまた横島としては中途半端だと感じていた

そんな中途半端なナギの尻拭いをしている近右衛門に横島は思わず同情せずにはいられなかった



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