平和な日常~冬~4
さて大掃除をしている横島達だが一階の店舗部分が終わると、横島と明日菜がガレージの掃除に取り掛かりタマモとさよは庭と庭のネコハウスの掃除を始めていた。
「きょうはおおそうじしてるんだよ。」
時間的に散歩に行く時間に近いからかタマモが庭に入ると猫達が駆け寄ってくるが、タマモは大掃除の説明をしてさよと共にネコハウスの掃除をしていく。
当然猫達は大掃除なんて理解出来ないのだが、それでも自分達の住処が綺麗になっていくのを並んで見守っている。
「そういえば、この車の持ち主ってどんな人なんです?」
一方横島と共にガレージの掃除をしていた明日菜は、ふと目の前にあるコブラを見て本来の持ち主のことを尋ねていた。
元々横島の過去が訳ありなことは親しい人物ならば周知の事実であり、過去に関しては横島を傷付けないようにと気をつけて聞かないことが多い。
しかし横島の古い友人として芦優太郎が居たりすることもあって、その関係なんかは問題ないかと聞いたことなんかがある。
まあ芦優太郎に関しては両親の知り合いだと無難な嘘をついて誤魔化した横島であるが、コブラに関しては今まで持ち主を聞いた者はいない。
実は夕映や美砂達なんかは以前からコブラの持ち主が気になってはいたが、横島を気遣って聞かなかったなん事情もあった。
「どんな人か。 なんていうか凄い人だったよ。 ワガママで意地っ張りで寂しがりやで……」
明日菜自身も今まではその辺りの気遣いをしていたが、ふと会話が途切れた隙に以前から気になっていた疑問が口から出てしまったのだ。
すぐにまずいと思ったのかハッとする明日菜に気遣いされてる事を理解した横島は、微かに苦笑いを見せながら本来の持ち主のことを語り出す。
「でもさ、俺にないモノをたくさん持ってた人でな。 憧れるような人だったよ。」
本来の持ち主である美神令子のことを当たり障りのない範囲で話していく横島だが、コンプレックスの固まりだったかつての横島にとって令子は憧れだったのだろうと今になると思う。
前世からの縁がある人であるし横島自身は令子に恋愛感情がなかった訳ではないが、結局横島と令子の関係は最後まで変わらぬままであった。
「人の人生なんて不思議なもんだよ。 その人がよく乗ってたこの車に今は俺が乗ってるんだからさ。 もしかすると何年かしたら次は明日菜ちゃんが乗ってたりしてな。」
懐かしそうにしつつも少しだけ寂しそうな表情を見せる横島に明日菜は車の持ち主が女性であることと、その女性がすでに存在しないことを直感的に感じてしまう。
まるで胸の奥が締め付けられるような感覚の中、次は自分が乗るかもしれないと語る横島の笑顔が印象的だった。
「私じゃこんな車絶対に似合いませんよ。」
「俺も昔はそう思ったよ。 自分には一生縁がないってな。 そういう意味じゃ明日菜ちゃんは昔の俺に少しだけ似てるんだよなぁ。」
そしていつか自分が免許を取りコブラを乗るのかと想像する明日菜であるが、明日菜にとってコブラは横島を象徴するような車であり自分にはとてもじゃないが似合わないと瞬時に答えている。
横島はそんな明日菜にほんの僅かだが過去の自分を重ね合わせて見ていた。
当然ながら昔の横島ほど酷くはないが木乃香達の中で一番コンプレックスが強い明日菜は、横島にとって他人に思えない時があるのだ。
「私と横島さんが、似てる?」
「いずれ分かる時が来るよ。 ただ将来明日菜ちゃんがこの車に乗ったとして助手席に乗るのはどんな奴なんだろうな。」
対して自分と横島は似ていると言われた明日菜は、その意味を理解できずに不思議そうな表情でキョトンとしている。
横島の過去に関しては本人から時々聞くが、正直何が冗談で何が本当か明日菜には分からない。
「絶対にあり得ないと思いますけど、もしあるとすればタマちゃんでも乗せてるんじゃないですか?」
いずれ分かる時が来るという横島の言葉を胸に刻んだ明日菜はふと自分がコブラを乗る時が来たと考えてみるが、そこで浮かんだのは何故か小学生くらいのタマモを乗せてる自分であった。
「きょうはおおそうじしてるんだよ。」
時間的に散歩に行く時間に近いからかタマモが庭に入ると猫達が駆け寄ってくるが、タマモは大掃除の説明をしてさよと共にネコハウスの掃除をしていく。
当然猫達は大掃除なんて理解出来ないのだが、それでも自分達の住処が綺麗になっていくのを並んで見守っている。
「そういえば、この車の持ち主ってどんな人なんです?」
一方横島と共にガレージの掃除をしていた明日菜は、ふと目の前にあるコブラを見て本来の持ち主のことを尋ねていた。
元々横島の過去が訳ありなことは親しい人物ならば周知の事実であり、過去に関しては横島を傷付けないようにと気をつけて聞かないことが多い。
しかし横島の古い友人として芦優太郎が居たりすることもあって、その関係なんかは問題ないかと聞いたことなんかがある。
まあ芦優太郎に関しては両親の知り合いだと無難な嘘をついて誤魔化した横島であるが、コブラに関しては今まで持ち主を聞いた者はいない。
実は夕映や美砂達なんかは以前からコブラの持ち主が気になってはいたが、横島を気遣って聞かなかったなん事情もあった。
「どんな人か。 なんていうか凄い人だったよ。 ワガママで意地っ張りで寂しがりやで……」
明日菜自身も今まではその辺りの気遣いをしていたが、ふと会話が途切れた隙に以前から気になっていた疑問が口から出てしまったのだ。
すぐにまずいと思ったのかハッとする明日菜に気遣いされてる事を理解した横島は、微かに苦笑いを見せながら本来の持ち主のことを語り出す。
「でもさ、俺にないモノをたくさん持ってた人でな。 憧れるような人だったよ。」
本来の持ち主である美神令子のことを当たり障りのない範囲で話していく横島だが、コンプレックスの固まりだったかつての横島にとって令子は憧れだったのだろうと今になると思う。
前世からの縁がある人であるし横島自身は令子に恋愛感情がなかった訳ではないが、結局横島と令子の関係は最後まで変わらぬままであった。
「人の人生なんて不思議なもんだよ。 その人がよく乗ってたこの車に今は俺が乗ってるんだからさ。 もしかすると何年かしたら次は明日菜ちゃんが乗ってたりしてな。」
懐かしそうにしつつも少しだけ寂しそうな表情を見せる横島に明日菜は車の持ち主が女性であることと、その女性がすでに存在しないことを直感的に感じてしまう。
まるで胸の奥が締め付けられるような感覚の中、次は自分が乗るかもしれないと語る横島の笑顔が印象的だった。
「私じゃこんな車絶対に似合いませんよ。」
「俺も昔はそう思ったよ。 自分には一生縁がないってな。 そういう意味じゃ明日菜ちゃんは昔の俺に少しだけ似てるんだよなぁ。」
そしていつか自分が免許を取りコブラを乗るのかと想像する明日菜であるが、明日菜にとってコブラは横島を象徴するような車であり自分にはとてもじゃないが似合わないと瞬時に答えている。
横島はそんな明日菜にほんの僅かだが過去の自分を重ね合わせて見ていた。
当然ながら昔の横島ほど酷くはないが木乃香達の中で一番コンプレックスが強い明日菜は、横島にとって他人に思えない時があるのだ。
「私と横島さんが、似てる?」
「いずれ分かる時が来るよ。 ただ将来明日菜ちゃんがこの車に乗ったとして助手席に乗るのはどんな奴なんだろうな。」
対して自分と横島は似ていると言われた明日菜は、その意味を理解できずに不思議そうな表情でキョトンとしている。
横島の過去に関しては本人から時々聞くが、正直何が冗談で何が本当か明日菜には分からない。
「絶対にあり得ないと思いますけど、もしあるとすればタマちゃんでも乗せてるんじゃないですか?」
いずれ分かる時が来るという横島の言葉を胸に刻んだ明日菜はふと自分がコブラを乗る時が来たと考えてみるが、そこで浮かんだのは何故か小学生くらいのタマモを乗せてる自分であった。