平和な日常~冬~4

その後は倉庫の掃除をして荷物を戻すが、皿を包んでいた古新聞に関しては歴史の資料として価値がありそうなので新しい新聞と交換しておく。

最終的にどうするかまでは考えてないようで、学園が欲しいなら寄贈でもしようかとしか考えてないが。


「ここは荷物を出すのは無理だな。」

倉庫の掃除が終わると続けて厨房と事務室の掃除に入るが、こちらは流石に全ての荷物を出して掃除するのは無理である。

まず第一に事務室の金庫は一般の人には動かせないし、他にはロッカーやデスクにカラーボックスの収納などがあるが、ロッカーやカラーボックスの収納に入ってるのは明日菜や木乃香達の私物なので勝手に触るのは出来なかった。

夕映達が帳簿を付け始めてからはここも本来の役割である事務室として使われ出したが、元々横島は帳簿など付けてなかったので事務室は当初から木乃香達の更衣室としてずっと使われていた。

掃除に関しても横島はしておらず事務室だけは木乃香達が掃除をしていたなんてこともある。

ちなみに夏場以降は事務室に店の専用パソコンが一台導入されていて、こちらは雪広グループへの発注に使われている。

雪広グループへの発注は当初は電話で頼んでいたが、横島だけ毎回電話で発注を頼むのは雪広グループ側でも結構手間だったらしく、雪広グループ側からの提案で雪広グループと一部の親交企業内で使われている発注システムを横島も導入していた。

結果として横島も発注する時だけは事務室に入ることになっているが、日頃から木乃香達が更衣室として使ってるせいか事務室はよく女の子の匂いがするので横島は結構ドキドキな時もあったりする。


「事務室は私がやりますよ。 木乃香達の私物もありますし」

「そうだな。 俺がやると変態扱いされそうだし」

そんな事務室の掃除に関しては、明日菜の提案で明日菜とさよの二人で行い横島はタマモと厨房の掃除に取りかかることにした。

実際事務室はすっかり女の子の部屋というか更衣室と化していて横島はパソコンやデスク以外は何処を触っていいのか全く分からない。

そもそも横島にとって女の子の更衣室とは、かつての恥ずかしい思い出がある場所でもあり何とも言えない心境になる。

実際のところ今の横島も別に女の子が嫌いになった訳でもないので根本的な価値観はあまり変わってないが、ぶっちゃけかつてのような扱いは二度とゴメンだった。


「誰もそんなこと言ってませんって。」

そのまま横島は事務室を明日菜達に任せて厨房に向かうが、少し昔を思い出したからか微妙な表情になる横島を明日菜は傷つけてしまったかと勘違いしてフォローを始める。

ぶっちゃけ明日菜は横島を信じているし見られて困る物も置いてないが、木乃香達の手前勝手に触らせる訳にはいかないだけなのだ。

横島が女性に対して変なトラウマのようなものがあるのはよく理解してるだけに、明日菜は横島が考えてる以上に横島を心配して気遣っていた。


「分かってるって。 さあ、タマモ。 二人で厨房の掃除しような。」

少し慌てたようにフォローする明日菜に横島は分かってるからと笑いながら、タマモと共に厨房に入っていくが明日菜は本当に分かってるか不安であった。


「本当に分かってるのかしら?」

「どうなんでしょうね」

結局残された明日菜とさよは事務室の掃除を始めるが、明日菜はしばらく横島が本当に分かってるのか不安らしくぶつぶつと呟きながら掃除をしていく。

一緒に掃除するさよに意見も聞くも、さよも横島が本当に分かってるのか半信半疑である。

実際横島が普通の人とは違うと知っているさよも、同時に木乃香達の気持ちをあまり理解してないことも知っている。

尤も横島は過去に対して微妙な心境だったのであって、明日菜に対しては特に思うところもなく当然のこととして考えていたが。

ただ明日菜としては横島に信用してないと思われるのは嫌なようで、どうするべきかと掃除をしながら悩むことになる。
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