平和な日常~春~

「俺はプロの料理人じゃないんだが……」

「教えれる範囲で教えてあげればいいじゃない。 誰も極秘の料理まで教えろとは言わないわよ」

お料理研究会などというサークルのメンバーに料理を教える事に多少戸惑いを感じる横島だったが、横島の戸惑いなど気付かぬ明日菜はあっさりと教えてあげればいいと言い切る

誰も秘伝のレシピなどまで教わろうとは思わないと明日菜は言い切るが、まさしくその通りだった

超達としても別に無理な事を教わるつもりはない


「うーん、じゃあいいか。 講師を受けるよ。 バイトの調整は頼むな」

多少悩んだ横島だったが、魔法料理以外ならば別に教えてまずい技術はなかった

結果お料理研究会への講師を引き受けて後は木乃香達に調整を頼む事になる



「なあ、この雪広あやかって雪広グループの……」

そのまま喫茶店を営業しつつ細かな打ち合わせをする横島と木乃香達だったが、横島はあやかの名前を見つけて不思議そうに尋ねる


「いいんちょはバイトしてみたいんやって。 楽しそうやから参加するみたいや」

微妙に苦笑いを浮かべた木乃香があやかが参加した理由を語るが、バイト希望者の中にはバイトをしてみたいだけの者もいた

中学生の彼女達は当然バイトの経験はないし、かと言ってクラスや部活のイベントや出し物で忙しい彼女達が気軽に出来るバイトなどなかなかない

結果横島のバイトは彼女達にとってちょうどいい物だったようだ


「まあ、いいか。 厨房は俺も一人知り合いを連れて来るから、多少は余裕が出来るだろ」

バイト希望者にも様々な理由があるなと感心してしまう横島だったが、自分が用意する助っ人は一人だけである


(土偶羅のやつ怒るかな?)

無論横島のこの世界の知り合いなどたかが知れており、土偶羅に人間バージョンのスペアボディで厨房で働いてもらうつもりだった

事後承諾になるが割といつもの事である

と言うか土偶羅に頼まないと横島が休めないという問題が発生するのだ


「あとメニューですが、激安限定メニューは休んで下さい。 噂にでもなれば収拾がつかなくなるです」

「そうやな、限定メニュー出すんなら普通の値段にせなあかんえ~」

そのまま話し合いは多岐に渡るが横島特別の激安限定メニューは、夕映と木乃香の反対により期間中はやらない事に決まる

最早ここまで来ると誰が経営者か分からないような会話になってるが、横島本人は全く気にしてなく素直に従っている

いつの間に夕映が仕切り木乃香・明日菜・のどかの三人が考えてるが、それもこれも横島が何も具体的に考えてなかったせいだった

相変わらず日常においては適当なままでありなんとかなると軽く考えてるが、木乃香達にしたら横島が妙な思いつきを実行しないようにきちんと話し合う必要があると考えていたのである


「四人ともしっかりしてるな~ 将来店譲ってやろうか?」

木乃香達が真剣に考える中、横島は相変わらず軽い調子のままだった


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