平和な日常~冬~4
同じ頃木乃香は京都の実家で家族水入らずで過ごしていたが、どこか落ち着かない様子の父を少し不思議そうに眺めていた。
「お父様どうしたん?」
「木乃香、私達は今からお前に話さなければならないことがある。 落ち着いて聞いて欲しい。」
広い近衛本家の屋敷の中でも詠春と穂乃香が使っている私室でここ数ヵ月のことを話していた木乃香と両親だが、父の落ち着いかない様子に木乃香はたまらず訳を聞くと詠春と穂乃香は互いに顔を見合せ意を決したように語り始める。
正直木乃香からすると落ち着いてないのは父の方だと思うが、残念ながらそんなツッコミを入れれる空気ではない。
「お前も薄々感じてるかもしれないが、我が家は少し特殊な立場にある家だ。 今日はその秘密を話そう。」
それは重苦しいという言葉がピッタリなほど静まり返った部屋の中で、詠春は未だに悩む様子を見せながら一言一言と言葉を紡ぎ出していく。
事前にさんざん悩みあちこちに根回ししているが、それでも木乃香に魔法の存在を教えることに詠春は抵抗感が残っている
。
願わくばこのまま普通の子として育ち、普通に生きて欲しいと何度願ったか分からない。
しかし木乃香がこれ以上何も知らないことは、確実に未来のリスクが高まってしまうのだ。
「世の中には一般の人に秘密にされていることがある。 私達やお義父さんはその秘密を抱えて生きている。 それは現代科学では解明出来ない不思議な力だ。」
始めて見るような詠春の真剣な表情に木乃香は一言も言葉を発することなく静かに聞いていたが、少し言いにくそうに語る父の言葉に何故かさよを思い出す。
それは《世の中には不思議なことがいっぱいある》というさよの口癖と似ていたからだ。
「この世界には俗に言う魔法や魔術のような神秘の力や技術が存在する。 私達はそれを受け継ぐ人達の纏め役なのだよ。」
とうとう語られた魔法という言葉に、木乃香は驚くことも冗談だと笑い出すこともなくただ静かに両親を見つめていた。
もしこれが一年前であったならば木乃香は冗談だと受け取り笑っていただろう。
ただ木乃香はこの一年で、いや正確には十ヶ月で誰もが認めるほど成長している。
真顔で冗談を言ったり冗談のような顔で真実を言う横島に鍛えられたともいえるが。
「……なんで今それをウチに話すん?」
意を決して語った真実に無反応な娘に詠春は若干戸惑うが、穂乃香は逆に興味深げに娘を見つめている。
そんな両親の反応を見極めた木乃香が真っ先に口を開いたのは、何故今日その話をしたかという疑問だった。
実は木乃香は以前夕映に冗談や嘘の見極め方を聞いたことがある。
その時に夕映が語ったのは相手をよく観察することと、相手の話の真意を見極めることだと語っていたのだ。
木乃香は両親を観察してそれがただの冗談ではないと確信したので、今度は話の真意を見極めようとしていた。
魔法という夢のような力には大いに興味があったがそれよりも重要なのは何故今まで隠していたのかということと、何故今話したのかということだった。
それを聞けば魔法という不思議な力が有るのか無いのかばかりでなく、話の全体の真偽と意図がみえるはずなのだから。
まあ単純に魔法を見せて貰えば早いかとも考えたが両親がその言葉を予想してないとは思えないし、そんな当たり前の事を言うのが少し面白くないと感じたが故にあえて言わなかった。
木乃香とて伊達に十ヶ月も横島や夕映達を見ていた訳ではない。
この話が冗談でない以上は、魔法の真偽はともかく話自体には意味があると考えた木乃香の判断は間違ってないのは言うまでもないだろう。
「お父様どうしたん?」
「木乃香、私達は今からお前に話さなければならないことがある。 落ち着いて聞いて欲しい。」
広い近衛本家の屋敷の中でも詠春と穂乃香が使っている私室でここ数ヵ月のことを話していた木乃香と両親だが、父の落ち着いかない様子に木乃香はたまらず訳を聞くと詠春と穂乃香は互いに顔を見合せ意を決したように語り始める。
正直木乃香からすると落ち着いてないのは父の方だと思うが、残念ながらそんなツッコミを入れれる空気ではない。
「お前も薄々感じてるかもしれないが、我が家は少し特殊な立場にある家だ。 今日はその秘密を話そう。」
それは重苦しいという言葉がピッタリなほど静まり返った部屋の中で、詠春は未だに悩む様子を見せながら一言一言と言葉を紡ぎ出していく。
事前にさんざん悩みあちこちに根回ししているが、それでも木乃香に魔法の存在を教えることに詠春は抵抗感が残っている
。
願わくばこのまま普通の子として育ち、普通に生きて欲しいと何度願ったか分からない。
しかし木乃香がこれ以上何も知らないことは、確実に未来のリスクが高まってしまうのだ。
「世の中には一般の人に秘密にされていることがある。 私達やお義父さんはその秘密を抱えて生きている。 それは現代科学では解明出来ない不思議な力だ。」
始めて見るような詠春の真剣な表情に木乃香は一言も言葉を発することなく静かに聞いていたが、少し言いにくそうに語る父の言葉に何故かさよを思い出す。
それは《世の中には不思議なことがいっぱいある》というさよの口癖と似ていたからだ。
「この世界には俗に言う魔法や魔術のような神秘の力や技術が存在する。 私達はそれを受け継ぐ人達の纏め役なのだよ。」
とうとう語られた魔法という言葉に、木乃香は驚くことも冗談だと笑い出すこともなくただ静かに両親を見つめていた。
もしこれが一年前であったならば木乃香は冗談だと受け取り笑っていただろう。
ただ木乃香はこの一年で、いや正確には十ヶ月で誰もが認めるほど成長している。
真顔で冗談を言ったり冗談のような顔で真実を言う横島に鍛えられたともいえるが。
「……なんで今それをウチに話すん?」
意を決して語った真実に無反応な娘に詠春は若干戸惑うが、穂乃香は逆に興味深げに娘を見つめている。
そんな両親の反応を見極めた木乃香が真っ先に口を開いたのは、何故今日その話をしたかという疑問だった。
実は木乃香は以前夕映に冗談や嘘の見極め方を聞いたことがある。
その時に夕映が語ったのは相手をよく観察することと、相手の話の真意を見極めることだと語っていたのだ。
木乃香は両親を観察してそれがただの冗談ではないと確信したので、今度は話の真意を見極めようとしていた。
魔法という夢のような力には大いに興味があったがそれよりも重要なのは何故今まで隠していたのかということと、何故今話したのかということだった。
それを聞けば魔法という不思議な力が有るのか無いのかばかりでなく、話の全体の真偽と意図がみえるはずなのだから。
まあ単純に魔法を見せて貰えば早いかとも考えたが両親がその言葉を予想してないとは思えないし、そんな当たり前の事を言うのが少し面白くないと感じたが故にあえて言わなかった。
木乃香とて伊達に十ヶ月も横島や夕映達を見ていた訳ではない。
この話が冗談でない以上は、魔法の真偽はともかく話自体には意味があると考えた木乃香の判断は間違ってないのは言うまでもないだろう。