平和な日常~冬~4
「そうか、今日から明日菜君は君のところか。」
さてこの日の夜になると店には高畑が一人で来ていた。
木乃香が帰省した影響で普段は明日菜の周囲に居た木乃香の護衛が居ないことから、年末年始は高畑自身で明日菜の周囲に気を配るつもりのようだ。
明日菜を年末年始は横島が預かるとは以前に聞いたが、具体的に今日から横島の家に居ると知ると少しホッとした表情を見せる。
「君が正式に協力してくれることになって、正直ホッとしてるよ。 アーウェルンクスは並の相手じゃない。 一体ならばまだいいが、数が多いと僕も厳しいからね。」
その微妙な立場から横島の素性は明かされてない高畑だが、横島に関しては明日菜の過去を明かした上で協力を取り付けたと聞かされていた。
近右衛門が横島に明日菜の素性を明かしたことには高畑も驚いたが、相手が秘密結社完全なる世界とアーウェルンクスならば話さなければ万が一の時に横島が混乱すると言われるとそれは尤もだと感じている。
何より強いのか弱いのかは別にして、底知れぬ何かを感じる横島が味方になったことは高畑も素直に頼もしく感じていた。
「万が一の時は明日菜ちゃんを上手く隠しますよ。 そういうのは得意なんで任せてください。」
「羨ましいな。 正直僕じゃ直接戦う以外の選択肢が選べないからな。」
単純に考えて横島が魔法に長けてるのはさよやタマモを見てれば明らかであり、自身は魔法の詠唱が出来ない高畑からすると羨ましい限りだった。
明日菜を守るにしても一番いいのは存在を隠し続けることであり戦って守ることではない。
特にアーウェルンクスに知られたら仮に戦って守れたとしても、万が一逃がせばその後にどんな謀略を仕掛けられるか分からないのだから。
「人には向き不向きがありますからね。 俺は戦士ではなく臆病者なんすよ。 ただ臆病者には臆病者の戦い方があるんですけどね。」
「戦士か臆病者か。 僕もその二つならば臆病者なんだけどね。」
自分のことを臆病者だとおどけて話す横島に、高畑は少し困ったような笑みを浮かべながら自分も同じだと語る。
かつての瀕死の師を置いて逃げるしか出来なかったあの時から、高畑は自分を戦士だと思ったことは一度もない。
「正直ね、僕は明日菜君に魔法の存在を教えることも本当にいいのかまだ迷っている。 このまま何も知らせずに幸せになって欲しい気もするし、いつか僕と明日菜君を生かしてくれた師匠やナギ達のことを知って欲しい気もするしね。」
他に客の居ない店内のカウンター席で二人だけで話す横島と高畑の間には何とも言えない空気が僅かだが流れていた。
高畑から見て横島は若く自分が愚痴のようなことを言うべき相手ではないなとも思うが、それがいつの間にか話してしまってるのだから自分でも不思議な心境のようだ。
「もし高畑先生が明日菜ちゃんの立場ならどっちを望みますか?」
淡々と愚痴というか悩みを打ち明ける高畑に横島はふともし高畑が明日菜の立場ならどっちがいいかと尋ねるが、高畑はその答えがすぐには出て来なかった。
「正直明日菜ちゃんの過去は俺なんかがどうとか言っていい話じゃないであれですけど、今は明日菜ちゃんがこのまま大人になる時間が欲しいのが現状じゃないっすかね。 別に魔法を知っても普通に生きることは出来ますしね。 結論を急ぐ必要がないのでは?」
実のところ高畑は戦場以外の生き方をあまり知らないのかもしれないと最近横島は思う。
明日菜に過去を伝えるかどうかは近右衛門達も横島も悩むことだが、高畑以外は現状では魔法と過去をイコールとしては全く考えてない。
まあ横島からすると元々この世界の魔法関係者は魔法について重く考えすぎだとも感じるが。
さてこの日の夜になると店には高畑が一人で来ていた。
木乃香が帰省した影響で普段は明日菜の周囲に居た木乃香の護衛が居ないことから、年末年始は高畑自身で明日菜の周囲に気を配るつもりのようだ。
明日菜を年末年始は横島が預かるとは以前に聞いたが、具体的に今日から横島の家に居ると知ると少しホッとした表情を見せる。
「君が正式に協力してくれることになって、正直ホッとしてるよ。 アーウェルンクスは並の相手じゃない。 一体ならばまだいいが、数が多いと僕も厳しいからね。」
その微妙な立場から横島の素性は明かされてない高畑だが、横島に関しては明日菜の過去を明かした上で協力を取り付けたと聞かされていた。
近右衛門が横島に明日菜の素性を明かしたことには高畑も驚いたが、相手が秘密結社完全なる世界とアーウェルンクスならば話さなければ万が一の時に横島が混乱すると言われるとそれは尤もだと感じている。
何より強いのか弱いのかは別にして、底知れぬ何かを感じる横島が味方になったことは高畑も素直に頼もしく感じていた。
「万が一の時は明日菜ちゃんを上手く隠しますよ。 そういうのは得意なんで任せてください。」
「羨ましいな。 正直僕じゃ直接戦う以外の選択肢が選べないからな。」
単純に考えて横島が魔法に長けてるのはさよやタマモを見てれば明らかであり、自身は魔法の詠唱が出来ない高畑からすると羨ましい限りだった。
明日菜を守るにしても一番いいのは存在を隠し続けることであり戦って守ることではない。
特にアーウェルンクスに知られたら仮に戦って守れたとしても、万が一逃がせばその後にどんな謀略を仕掛けられるか分からないのだから。
「人には向き不向きがありますからね。 俺は戦士ではなく臆病者なんすよ。 ただ臆病者には臆病者の戦い方があるんですけどね。」
「戦士か臆病者か。 僕もその二つならば臆病者なんだけどね。」
自分のことを臆病者だとおどけて話す横島に、高畑は少し困ったような笑みを浮かべながら自分も同じだと語る。
かつての瀕死の師を置いて逃げるしか出来なかったあの時から、高畑は自分を戦士だと思ったことは一度もない。
「正直ね、僕は明日菜君に魔法の存在を教えることも本当にいいのかまだ迷っている。 このまま何も知らせずに幸せになって欲しい気もするし、いつか僕と明日菜君を生かしてくれた師匠やナギ達のことを知って欲しい気もするしね。」
他に客の居ない店内のカウンター席で二人だけで話す横島と高畑の間には何とも言えない空気が僅かだが流れていた。
高畑から見て横島は若く自分が愚痴のようなことを言うべき相手ではないなとも思うが、それがいつの間にか話してしまってるのだから自分でも不思議な心境のようだ。
「もし高畑先生が明日菜ちゃんの立場ならどっちを望みますか?」
淡々と愚痴というか悩みを打ち明ける高畑に横島はふともし高畑が明日菜の立場ならどっちがいいかと尋ねるが、高畑はその答えがすぐには出て来なかった。
「正直明日菜ちゃんの過去は俺なんかがどうとか言っていい話じゃないであれですけど、今は明日菜ちゃんがこのまま大人になる時間が欲しいのが現状じゃないっすかね。 別に魔法を知っても普通に生きることは出来ますしね。 結論を急ぐ必要がないのでは?」
実のところ高畑は戦場以外の生き方をあまり知らないのかもしれないと最近横島は思う。
明日菜に過去を伝えるかどうかは近右衛門達も横島も悩むことだが、高畑以外は現状では魔法と過去をイコールとしては全く考えてない。
まあ横島からすると元々この世界の魔法関係者は魔法について重く考えすぎだとも感じるが。