平和な日常~冬~3
さて同じ京都でも近衛家のある山奥から里に降りたとこには荷物を持った刀子が帰省していた。
以前から何度も説明してる通り葛葉家は代々関西呪術協会に仕えている家だが元々の立場はさほど高くはなく、実家もごく普通の民家である。
隣近所は当然ながら一般人であり家業の呉服屋は京都市の町外れにあるが、昔ながらの付き合いの顧客が収入のほとんどで裏の仕事である関西呪術協会の仕事をしても正直裕福とは言えない程度の収入しかない。
まあ現在は刀子が実家に仕送りをしているので以前よりは楽なようではあるが。
「おばあちゃんどんな顔するかしらね。」
両親は結婚も離婚も理解してくれたが刀子が最後に祖母に会ったのは離婚の報告の時であり、祖母は無言のまま厳しい表情を崩さなかった。
これは後から両親に聞いた話だが、祖母は表向きはともかく内心では曾孫の誕生を密かに心待ちにしていたらしい。
「分かっていても出来ないのよね。 人は……」
結婚する前から逆風ばかりだった刀子の結婚だが、関西の人間も内心では東西の争いなど無益だと理解してる人は意外と多いのが現実にある。
表立って言えないが密かに頑張ってと言葉をかけてくれた人も居たし、離婚後には親戚や呪術協会の世話になっていた人に挨拶に出向くと慰めてくれた人もいた。
一部の過激な考えの者達は離婚する刀子をあざ笑いやはり東の人間など信用ならないと声高に叫んだらしいが、そんな人達の声がまかり通る呪術協会の未来を密かに危惧する者は予想以上に多いのだろうと刀子は思う。
「どうするつもりなのかしら。」
今のところは関西呪術協会の未来は詠春穂乃香夫妻と近右衛門次第と言えるが、近い将来に鍵を握るのは木乃香と横島なのは明らかである。
特に横島本人はあまり魔法協会に関わる気がないのは刀子も重々承知しているが、はっきり言えば横島が動かねば東西の協力は今以上のスピードでは進まないだろうことも理解していた。
刀子自身は魔法世界の国々がこの期に及んで協力すら出来てないことにあきれたが、実際には東西の問題で協力出来ない自分達も決して彼らをあきれる資格がないのが現実だった。
「結構プレッシャーなのよね。」
ただ刀子は未来の鍵を直接握るのは木乃香と横島だと思うが、同時に二人の周りにいる人達も間接的には未来の鍵の一端を握る立場にあり刀子自身も少なくない影響力を持ちかねない立場なだけに少しプレッシャーを感じている。
もし仮に不用意なことを木乃香や横島に吹き込めば、それが運命を変えるきっかけにもなりかねないだけに今後はより慎重にならねばならない。
正直関西呪術協会にはいい思い出ばかりではなく嫌な思い出もあるが、それでも潰したいとも見捨てたいとも思わないのが本音だった。
「本当は私、普通でよかったんだけど。 一番になれなくても……」
実家が間近に迫る中で余計なことをいろいろ考えてしまうのは、それだけ刀子にとって久々の両親や祖母の顔を見るのが不安なのだろう。
何故自分がこんな難しい立場に立たされるのかと考えると、原因の一端であるお気楽な横島には相応の報酬を要求したい気分になる。
もちろんそれはお金などの現物ではなく、もう少しだけでいいから自分を女性として真剣に見て欲しいという切実な願いだ。
この際一番は無理でもいいから愛されたいと本気で願う辺り相変わらず刀子は重症だった。
以前から何度も説明してる通り葛葉家は代々関西呪術協会に仕えている家だが元々の立場はさほど高くはなく、実家もごく普通の民家である。
隣近所は当然ながら一般人であり家業の呉服屋は京都市の町外れにあるが、昔ながらの付き合いの顧客が収入のほとんどで裏の仕事である関西呪術協会の仕事をしても正直裕福とは言えない程度の収入しかない。
まあ現在は刀子が実家に仕送りをしているので以前よりは楽なようではあるが。
「おばあちゃんどんな顔するかしらね。」
両親は結婚も離婚も理解してくれたが刀子が最後に祖母に会ったのは離婚の報告の時であり、祖母は無言のまま厳しい表情を崩さなかった。
これは後から両親に聞いた話だが、祖母は表向きはともかく内心では曾孫の誕生を密かに心待ちにしていたらしい。
「分かっていても出来ないのよね。 人は……」
結婚する前から逆風ばかりだった刀子の結婚だが、関西の人間も内心では東西の争いなど無益だと理解してる人は意外と多いのが現実にある。
表立って言えないが密かに頑張ってと言葉をかけてくれた人も居たし、離婚後には親戚や呪術協会の世話になっていた人に挨拶に出向くと慰めてくれた人もいた。
一部の過激な考えの者達は離婚する刀子をあざ笑いやはり東の人間など信用ならないと声高に叫んだらしいが、そんな人達の声がまかり通る呪術協会の未来を密かに危惧する者は予想以上に多いのだろうと刀子は思う。
「どうするつもりなのかしら。」
今のところは関西呪術協会の未来は詠春穂乃香夫妻と近右衛門次第と言えるが、近い将来に鍵を握るのは木乃香と横島なのは明らかである。
特に横島本人はあまり魔法協会に関わる気がないのは刀子も重々承知しているが、はっきり言えば横島が動かねば東西の協力は今以上のスピードでは進まないだろうことも理解していた。
刀子自身は魔法世界の国々がこの期に及んで協力すら出来てないことにあきれたが、実際には東西の問題で協力出来ない自分達も決して彼らをあきれる資格がないのが現実だった。
「結構プレッシャーなのよね。」
ただ刀子は未来の鍵を直接握るのは木乃香と横島だと思うが、同時に二人の周りにいる人達も間接的には未来の鍵の一端を握る立場にあり刀子自身も少なくない影響力を持ちかねない立場なだけに少しプレッシャーを感じている。
もし仮に不用意なことを木乃香や横島に吹き込めば、それが運命を変えるきっかけにもなりかねないだけに今後はより慎重にならねばならない。
正直関西呪術協会にはいい思い出ばかりではなく嫌な思い出もあるが、それでも潰したいとも見捨てたいとも思わないのが本音だった。
「本当は私、普通でよかったんだけど。 一番になれなくても……」
実家が間近に迫る中で余計なことをいろいろ考えてしまうのは、それだけ刀子にとって久々の両親や祖母の顔を見るのが不安なのだろう。
何故自分がこんな難しい立場に立たされるのかと考えると、原因の一端であるお気楽な横島には相応の報酬を要求したい気分になる。
もちろんそれはお金などの現物ではなく、もう少しだけでいいから自分を女性として真剣に見て欲しいという切実な願いだ。
この際一番は無理でもいいから愛されたいと本気で願う辺り相変わらず刀子は重症だった。