平和な日常~冬~3

その日の夜、横島宅ではハニワ兵が荷造りをしていた。

たくさんの麻帆良土産を紙袋に入れては横島同様に物入れ代わりにしている影に入れていくハニワ兵を、さよとタマモは手伝いながらも少し寂しそうに見守っている。


「ぽー?」

「大丈夫ですよ。 一週間くらいなら私達でやりますから」

「うん! たのしんできてね!」

ハニワ兵は愛用のスケッチブックを取り出すと掃除や洗濯の心配をするが、さよとタマモは任せて欲しいと胸を張った。

実は今回ハニワ兵も里帰りすることになったのだ。

事の発端は前日に遡り木乃香達の帰省の話題をしていた時のこと、タマモがハニワ兵は帰省しないのかと素朴な疑問を口にした事から始まる。

基本的に横島はハニワ兵の行動に干渉しないのでハニワ兵は自主的に好きな時に休むし時々帰ってはいたのだが、流石に長期の休みは取ってなかった。

その結果今回の年末年始に一週間の休みをハニワ兵に取らせることにしたのだ。


「ぽー!」

「大丈夫だって。 心配すんな」

その後お土産の荷造りが終わるとハニワ兵は正月にタマモやさよが着る振り袖や小紋などの和服を数着用意したことを横島だけにこっそりと告げて保管してる場所を教えたりとしていく。

そもそも本来ならば代わりのハニワ兵が来るのかとハニワ兵自身は考えたのだが、タマモとさよは元より横島もその気が全くなくタマモとさよは年末年始は自分達で代わりをするんだと張り切っている。

まあすっかりハニワ兵を家族として考えてる二人のことを思うと当然の選択ではあるのだが。


「そうだ、お前が居るうちに話しとくか。 今度さ木乃香ちゃん達にいろいろ隠してた秘密を話すことになったんだ。 だから来年からはお前も隠れなくて済むぞ。」

そのまま幾つかハニワ兵から教えられた横島はハニワ兵が出発する前に木乃香達に魔法というか今まで隠して来た秘密を明かすことを話し始める。

それはタマモ達にとっては初耳の話だったが、一番喜んだのはずっとハニワ兵とみんなが仲良くなって欲しいと願っていたタマモであった。


「ハニワ兵の故郷に行く話は遅くなったけど、来年みんなで行こうな。 それとタマモとさよちゃんの正体だけど、木乃香ちゃん達に話すか考えておいてくれ。」

「かくさなくていいの?」

「ああ、タマモが話したいならな。 木乃香ちゃん達には世の中には妖怪や幽霊が居るってこと教えるんだよ。 他にも魔法とか不思議な力のことも教えるしな。」

「やったー!」

来年からは隠れなくていいと喜ぶタマモは驚きの表情のハニワ兵を抱き抱えて一緒にくるくると回っているが、横島はそんなタマモに木乃香達に明かされる秘密の内容を簡単に説明していく。

正直タマモが横島の話を何処まで理解してるかは微妙なのだが、タマモにとって秘密は絶対話してはダメなことであると同時に大好きな木乃香達に自身のことを偽るのが辛かったのも事実だった。

もう木乃香達に嘘をつかなくていいと言うのが本当に嬉しそうである。


「私はどうしましょう。 幽霊だなんて話したら嫌われませんか?」

一方同じく秘密が明かされると聞いたさよだが、こちらは流石にタマモほどシンプルに考えられなかった。

さよ自身も幽霊が怖いとの少し変わった理由もあるし、木乃香達が真実を知ってどう反応するかが分からない。


「うーん、大丈夫じゃないか? そもそも俺も人間じゃないしな~。 ただ隠したいなら隠してもいいぞ。」

「だいじょうぶだよ! さよちゃんはさよちゃんだもん!」

悩むさよに対し横島はこの件に関しては楽観的な軽い調子であり、タマモに至っては純粋に木乃香達を信じている。

正直ここでさよを差別する程度なら横島も現状のように木乃香達に肩入れしてないだろう。


「高畑先生とか葛葉先生とか知ってても変わらんだろ。 みんなも同じだよ」

「あっ、先生達は知ってたんでしたね。」

さよ自身は自らの正体を忘れた日はないが、あまり深く考えないままにみんなと楽しい日々を過ごしていたのですでに正体を知る人が居ることはあまり頭に入って無かったらしい。

よくよく考えるとエヴァや茶々丸も知ってるなとさよは改めて自分の秘密を知ってる人を頭に思い浮かべる。

結局さよはタマモに流されるように自分も正体を明かそうかと考えることになった。

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