平和な日常~春~

そのまま横島と茶々丸が野良猫にご飯をあげていると、横島は少し離れた場所から視線を感じる

そこには小学校低学年くらいの褐色の少女が猫のご飯らしき物を持って、横島と茶々丸を見ていた


「お嬢ちゃんもこいつらにご飯をあげに来たのか?」

見つめたまま無言の少女に横島から話しかけるが、少女は無言で頷くのみである


「一緒にどうだ?」

横島が少女を手招きをすると少女は相変わらず無表情のままだが、ゆっくりと歩いて来て持って来たご飯を野良猫達にあげていた


「お嬢ちゃん朝早くから優しいな。 そうだ、ご褒美にこれをあげよう」

朝早くから猫にご飯をあげに来た少女に横島は先程朝市で買ったさくらんぼを一パック差し出すが、少女は受け取らずに不思議そうに首を傾げるだけである


「知らない人から物を貰ってはダメだと教わってるのではないでしょうか?」

「ん? 俺ってそんなに怪しく見えるか?」

「いえ、そう言う訳では……」

見知らぬ大人に突然物を渡されそうになって不思議そうな少女に、茶々丸はたまらず見知らぬ人から物は貰えないのだろうと言うが横島は自分が怪しく見えるのかと不安そうだ

そんな横島と茶々丸のちょっと変なやり取りを見た少女は、横島が可哀相になりさくらんぼを受け取ってしまう


「ありがとう」

「お嬢ちゃん学校に遅れないように気をつけてな」

少女が受け取った事が嬉しそうな横島は少女の頭をぽんぽんと撫でて、茶々丸と共にその場を後にしていく


「ココネ、掃除終わった? 早くしないとシスターシャクティに怒られ……って、さくらんぼ?」

横島と茶々丸と入れ違いで春日美空が少女ココネの元にやって来るが、美空は掃除してるはずのココネがさくらんぼを一パックそのまま持ってる姿に首を傾げる


「猫にご飯をあげてる人に貰った」

「ちょうどいいじゃん、休憩して食べよ。 朝早くから起こされて掃除してたからお腹空いてさ~」

ココネがさくらんぼを貰った事に僅かに疑問を感じる美空だったが、近所のお年寄りでも来たのだろうと勝手に解釈してその場に座り込んで勝手に休憩にする

そんな美空に合わせるようにココネもその場に座って二人はさくらんぼを食べるのだが……


「あなた達、お勤めの最中にいい御身分ですね」

ニッコリと笑顔を浮かべたシスターシャークティが後ろに居た事に美空とココネは気付いてなかった

二人がその後どうなったかは、まあ想像通りとだけ言っておこう



「んじゃまたな」

一方教会を去った横島と茶々丸だとが、横島がコブラで茶々丸をエヴァの自宅近くまで送って別れていた

茶々丸は自身で帰れると何回か遠慮したのだが、横島が近くだからと半ば強引に送っていたのだ


「横島…忠夫……」

去りゆくコブラを見送っていた茶々丸は、不思議な雰囲気の横島が何故か気になっていた

自身の中の僅かな変化に戸惑いつつも茶々丸はエヴァの朝食の時間が近い為に急ぎ帰っていく

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