平和な日常~冬~3

その後は芦優太郎が世界と時間の流れについて説明をしていくが、基本的な情報として例え超鈴音がどのような手段を講じても彼女の生まれた未来はすでに確定した世界として存在するため何も変わらないと始めに伝えると近右衛門達はなんとも言えない表情をする。

それは超にとっては死刑宣告に等しいほどの衝撃的な事実であり、あまりに残酷な真実だった。


「そもそも未来とは定まった1つの未来がある訳ではない。 時間と1つの世界の関係は系統樹のように考えると分かりやすいだろう。 超鈴音の未来は本来はこの世界の有力な未来であったが、現在は様々な要因からすでに分岐してしまっているので仮にその未来に進みたいと願っても全く同じ未来は不可能だ。」

「様々な要因とは?」

「連続性が断たれた要因は大きく分けて三つあり、一つ目は超鈴音が来たこと。 二つ目はネギ・スプリングフィールドが麻帆良に来なかったこと。 三つ目はわしと横島の存在だ。」

そのまま淡々と世界と時間の関係について話していく芦優太郎だが近右衛門達は未来が定まってないという言葉にホッとするも、超鈴音の未来がすでに別の世界となってるとのところは興味深げに聞いている。

特に世界が変わった要因がネギの去就だったと聞くと近右衛門は深いため息をつき表情を曇らせた。


「もうすでに関係ない世界の話だが、その世界において神楽坂明日菜,近衛木乃香,雪広あやか,那波千鶴は歴史の流れに翻弄される運命だった。 ネギ・スプリングフィールドに肩入れする形で魔法に関わり魔法世界を救済しようとするも失敗。 その先は言わぬがお世辞にも幸せとは言いがたい歴史だ」

しかしそんな近右衛門に更に追い討ちをかけるように芦優太郎は超鈴音の世界の木乃香達の運命を語ると、やはり事前に知っていた横島以外の全員が顔色を真っ青にする。

すでに別の世界となったと前置きしたとはいえ、自分達の子供や孫が魔法世界の運命に翻弄されたと言われて平常心でいられるはずはなかった。


「お前ももうちょっとソフトな言い方は出来んのか」

「事実だ。 わしとお前が麻帆良に来なければ、十中八九はネギ・スプリングフィールドは麻帆良に来てあの娘たちは深く関わる運命だったのだ。 そもそもネギ・スプリングフィールドに関してはお前が神楽坂明日菜と近衛木乃香に深く関わった影響が大きい。 ネギ・スプリングフィールドとの縁よりお前との縁が強くなりすぎたことが間接的に影響したのだ。」

まだ幼さの残る子供達の過酷な運命をあまりに遠慮なく告げた芦優太郎には流石に横島も困った表情で言い方が悪いとつげるが芦優太郎は全く怯むことなく、そもそもネギに関しては横島の影響があったのだと横島も聞いてなかった事実を口にする。


「そうなのか?」

「ああ、悪い影響ではないから放置したがな」

横島自身も以前から気になっていたネギの件に対する原因が自分だと聞くと横島は少し考え混むが、それ以上に近右衛門達は驚き言葉が出なかった。

特に近右衛門は散々苦悩しただけに、あり得たかもしれない未来を聞くと心底ホッとする。

正直縁や運命と言われてもしっくり来ない部分もあるが、横島が居たことで近右衛門自身も心理的影響が全くなかったとは思わない。


「一つ質問なんだが今のこの世界の未来は知ってるのかい?」

「それに関してはわしも知らない。 その気になれば知ることは可能だが無限に変わりゆく未来を一々調べても参考資料程度にしかならんし、参考資料程度の未来予測ならばわざわざ未来を調べなくとも出来る。 それに未来視はそれだけで因果率が狂うのであまりしたくないのが本音だ。 因果率の調整は面倒なのでな」

その後も芦優太郎による世界と時間に関する説明は続くが、近右衛門以下その場の全員がなんとか理解しようと苦労することになる。

事前に魔王の遺産の管理者の末端だと聞かされてなければ、とてもじゃないが話が壮大過ぎてついていけなかっただろうが。

ただ自分達の子供や孫の過酷な運命の可能性を聞いてショックを受けたまま呆けたままで居ることが出来るほど、彼らは軟弱ではなかったということもあった。


80/100ページ
スキ