平和な日常~冬~3
「今日は暇ですね」
さてこの日の店の営業は横島と明日菜とさよでしていた。
みんな朝方まで起きていたので、いつも通り起きられたのは新聞配達がある明日菜と厳密には睡眠が必要ないさよだけだったのだ。
しかしこの日はお客さんが平日とさほど変わりなく、明日菜とさよは少し暇そうにしている。
「やっぱお盆と年末年始はダメなんだな」
昨日の午後の混雑が嘘のように客の入りが少ないが元々麻帆良ではお盆と年末年始は驚くほど活気が無くなると言われていただけに、横島としてはある程度予想はしていたらしい。
まあ全く客が来ない訳ではなくスイーツや臨時に販売してる箱菓子はそこそこ売れているが、いつもの休日ならば来るはずの学生達がほとんど来ないのだ。
今日は冬休み初日なので帰省する学生が多いのだろう。
夏休みはまだ期間が長いのである程度帰省する日にちが分散されるが、冬休みはどうしても期間が短い分だけ帰省する日にちが重なるらしい。
実際には昨日の終業式と冬休み初日の今日が帰省の最初のピークで、後は三十日前後が次のピークになる。
「では明日菜君達には他の友人達と一緒に話すとするか」
一方同じ頃の女子中等部の学園長室では近右衛門と穂乃香と高畑と刀子で、木乃香と友人達への魔法の情報開示についての最後の詰めを話し合っていた。
木乃香に関しては京都に帰省中に両親から直接話す予定であり、麻帆良に戻って来たら近右衛門からも話はするがその後は刀子が主にフォローする事が正式に決まる。
「高畑君も頼むぞ。 君達二人が適任じゃからのう」
そして意外と悩んだ高畑の扱いについては基本的に木乃香と友人達は刀子を責任者にしたが、高畑に刀子のフォローを頼む形に落ち着いていた。
これに関しては横島の秘密を隠す意味合いもあるが、高畑では少々立場が魔法世界に近すぎて関西から文句が来る可能性があることも影響している。
事実上木乃香の養育係になるため関西から文句が付けにくい神鳴流の刀子にしたのは、横島の件を抜いても自然な流れであった。
まあ当の刀子は過去の結婚と離婚騒ぎで関西での一般的な評価は正直微妙ではあるが、東西の双方が完全に納得する養育係など居るはずもなく東西の狭間に立たされる可能性のある厄介な仕事でもあるので下手な人物には任せられない。
結果的に東西の双方を知り苦労した経験のある刀子は無難な人選でもあった。
もちろん高畑に配慮するために事前に高畑自身にも相談したが、高畑本人も自身が木乃香の指導者には向かないことを理解していたのでこの人事はすんなりと決まっている。
次に木乃香の養育係同様に扱いが難しく悩んだ明日菜については、夕映達や美砂達と完全に同じ扱いをすることに決めていた。
こちらは明日菜の過去を隠すには完全に木乃香の友人として周りと同じ扱いをした方が、魔法協会内部でも明日菜への注目を集めないだろうとの読みがある。
ちなみにあやかと千鶴に関しても今回の年末年始の間に両親から魔法について明かされる予定になっていて、本来より少し早いが彼女達も木乃香と一緒に魔法の情報が開示されることが決定していた。
最終的には木乃香やあやかと千鶴は相応に注目を集めるだろうが、明日菜は最低限の注目で身内にも存在を隠せるだろう。
「刀子君には特に負担を掛けてすまないがよろしく頼む。 実家の方にも根回しはしておいたから君の立場が悪くなることはないじゃろう」
今回の決定に関して言えば刀子が一番貧乏くじを引いたとも言えるし出世したとも言える。
いろいろ面倒なことは多いが将来的に木乃香がそれなりの地位に着けば刀子が重用されるのは明らかなので出世ともいえるが、状況次第では東西の狭間に苦しむことにもなるのだ。
まあ実際に東西の問題が無ければ木乃香の養育係は志願者が腐るほど出てきて刀子ではむりなのだろうが。
ただ今回の件に関連して関西でも根回しはすでに進んでいて、刀子の実家には支援として刀子の両親の呪術協会での役職就任など報酬も用意されていた。
加えて葛葉家は代々呉服屋を表の商売として営んでいて、こちらには雪広グループとの業務提携が内々に検討されている。
結果として近右衛門や穂乃香は打てる手を尽くして刀子のフォローと報酬を用意したが、それだけ刀子には期待しているし刀子の立場が将来の二つの魔法協会を左右しかねないほど重要だという事実を表していた。
さてこの日の店の営業は横島と明日菜とさよでしていた。
みんな朝方まで起きていたので、いつも通り起きられたのは新聞配達がある明日菜と厳密には睡眠が必要ないさよだけだったのだ。
しかしこの日はお客さんが平日とさほど変わりなく、明日菜とさよは少し暇そうにしている。
「やっぱお盆と年末年始はダメなんだな」
昨日の午後の混雑が嘘のように客の入りが少ないが元々麻帆良ではお盆と年末年始は驚くほど活気が無くなると言われていただけに、横島としてはある程度予想はしていたらしい。
まあ全く客が来ない訳ではなくスイーツや臨時に販売してる箱菓子はそこそこ売れているが、いつもの休日ならば来るはずの学生達がほとんど来ないのだ。
今日は冬休み初日なので帰省する学生が多いのだろう。
夏休みはまだ期間が長いのである程度帰省する日にちが分散されるが、冬休みはどうしても期間が短い分だけ帰省する日にちが重なるらしい。
実際には昨日の終業式と冬休み初日の今日が帰省の最初のピークで、後は三十日前後が次のピークになる。
「では明日菜君達には他の友人達と一緒に話すとするか」
一方同じ頃の女子中等部の学園長室では近右衛門と穂乃香と高畑と刀子で、木乃香と友人達への魔法の情報開示についての最後の詰めを話し合っていた。
木乃香に関しては京都に帰省中に両親から直接話す予定であり、麻帆良に戻って来たら近右衛門からも話はするがその後は刀子が主にフォローする事が正式に決まる。
「高畑君も頼むぞ。 君達二人が適任じゃからのう」
そして意外と悩んだ高畑の扱いについては基本的に木乃香と友人達は刀子を責任者にしたが、高畑に刀子のフォローを頼む形に落ち着いていた。
これに関しては横島の秘密を隠す意味合いもあるが、高畑では少々立場が魔法世界に近すぎて関西から文句が来る可能性があることも影響している。
事実上木乃香の養育係になるため関西から文句が付けにくい神鳴流の刀子にしたのは、横島の件を抜いても自然な流れであった。
まあ当の刀子は過去の結婚と離婚騒ぎで関西での一般的な評価は正直微妙ではあるが、東西の双方が完全に納得する養育係など居るはずもなく東西の狭間に立たされる可能性のある厄介な仕事でもあるので下手な人物には任せられない。
結果的に東西の双方を知り苦労した経験のある刀子は無難な人選でもあった。
もちろん高畑に配慮するために事前に高畑自身にも相談したが、高畑本人も自身が木乃香の指導者には向かないことを理解していたのでこの人事はすんなりと決まっている。
次に木乃香の養育係同様に扱いが難しく悩んだ明日菜については、夕映達や美砂達と完全に同じ扱いをすることに決めていた。
こちらは明日菜の過去を隠すには完全に木乃香の友人として周りと同じ扱いをした方が、魔法協会内部でも明日菜への注目を集めないだろうとの読みがある。
ちなみにあやかと千鶴に関しても今回の年末年始の間に両親から魔法について明かされる予定になっていて、本来より少し早いが彼女達も木乃香と一緒に魔法の情報が開示されることが決定していた。
最終的には木乃香やあやかと千鶴は相応に注目を集めるだろうが、明日菜は最低限の注目で身内にも存在を隠せるだろう。
「刀子君には特に負担を掛けてすまないがよろしく頼む。 実家の方にも根回しはしておいたから君の立場が悪くなることはないじゃろう」
今回の決定に関して言えば刀子が一番貧乏くじを引いたとも言えるし出世したとも言える。
いろいろ面倒なことは多いが将来的に木乃香がそれなりの地位に着けば刀子が重用されるのは明らかなので出世ともいえるが、状況次第では東西の狭間に苦しむことにもなるのだ。
まあ実際に東西の問題が無ければ木乃香の養育係は志願者が腐るほど出てきて刀子ではむりなのだろうが。
ただ今回の件に関連して関西でも根回しはすでに進んでいて、刀子の実家には支援として刀子の両親の呪術協会での役職就任など報酬も用意されていた。
加えて葛葉家は代々呉服屋を表の商売として営んでいて、こちらには雪広グループとの業務提携が内々に検討されている。
結果として近右衛門や穂乃香は打てる手を尽くして刀子のフォローと報酬を用意したが、それだけ刀子には期待しているし刀子の立場が将来の二つの魔法協会を左右しかねないほど重要だという事実を表していた。