平和な日常~冬~3

そうして勢いで年明けに決まった旅行だが、とりあえず温泉に行こうかという話になる。

ただそこから先の具体的な目的地の話になるとなかなか決まらなかった。

基本的に麻帆良は都心部にも近い都会なので自然溢れる田舎がいいという意見は纏まったのだが、問題は予算をいくらで設定して何処に行くかという話になると意見はバラバラだった。


「行きたい場所に決めたらいいって。 足りなきゃ俺が出すからさ」

「うちの別荘でよければ提供できますわ。 国内ですと北は北海道から南は沖縄までありますから」

例によって木乃香達は堅実に交通費や宿泊費を計算しているが横島は相変わらず適当で行きたい場所を先に決めればいい言っていて、今回の件に関してはあやかまでもがどちらかと言えば横島側の意見である。

どうせ行くならば行きたい場所がいいと考える辺り、彼女はやはり金銭感覚に関しては一般人とは住む世界が違うのだろう。

まあ横島に関してはいい加減なだけだが。


「また学園のバス借りていく?」

「たまには電車も良くない? ってか雪ある場所に行くなら慣れない運転危ないじゃん」

正直こんな時は横島の意見はあまり重要視されずに木乃香達と美砂達が主に決めるが、やはり美砂達ですら横島やあやかに過剰に頼る計画は考えてなかった。

本来の歴史では彼女達は南の島やイギリス旅行をあやかの奢りで行ったりするはずなのだが、友人としてそれはダメだろうと考えるなど夏の海水浴の時と同様に美砂達ですら本来の歴史より成長している。

尤も美砂達の成長は誰かが狙った訳ではなく、横島という男性を間に挟んであやかと同じお金持ちの千鶴や教師である刀子と事実上のライバル関係になったことが彼女達を成長させた原因であるが。

絶対横島やあやか達に頼らないとは思わないが、それでも自分たちでやるべきことはやろうとは考えていた。


「北海道はいいよなぁ。 食い物は美味いしさ。 別荘ってでかいの?」

「場所によって違いますけど、基本的にはさほど広くはありませんわ。 まあこのメンバーが泊まるのに不自由するほどでもありませんけど」

結局旅行の行き先についてかやの外に置かれた横島は珍しく意見が合ったあやかと旅行や別荘の話をするが、実は雪広家では個人所有の別荘と会社名義の別荘があるらしい。


「そもそもお祖父様はあまり別荘が好きではないんです。 ホテルや旅館で十分だといいますから。 ただバブル崩壊以降に知人に頼まれて買った別荘が結構ありまして。 ほとんどは会社名義にして保養所にしてますわ」

「この御時世に保養所があるなんて凄いな。 ってか会長さん別荘好きじゃないんだ」

そのまま横島は雪広家の別荘事情を何故か聞いていたが、他の少女達と刀子は横島とあやかが話に加わると纏まらなくなるので放置していた。

高畑に関してはニコニコとそんな少女達や横島とあやかを見ているだけだったが。


最終的に旅行の行き先に関しては関東から近い雪国か温泉にすることがきまるが、さすがに具体的な目的地は決まらずに明日以降に帰省する者とも連絡を取りながら決めることになる。








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