平和な日常~冬~3

予期せぬ形でプレゼントを交換する形になった横島達だが、周りはビックリするほど驚いたことが逆に不思議なようであった。

ただそれでも横島も少女達も互いにプレゼントを開けるが、横島がみんなにプレゼントした物は小さな水晶のペンダントでだった。

銀のチェーンに小さな水晶が着いただけのごくごくシンプルな物である。

一方の女性陣からのプレゼントは、タマモとさよなプレゼントはもちろん手作りのアルバムだ。

そして女性達からプレゼントされた物はジャケットとパンツがセットになってる洋服であった。

日頃横島は仕事着である喫茶店のマスターらしい服以外はカジュアルな服が多いので、プレゼントはあえて少し大人っぽい服にしたのだろう。


「うわ~、綺麗ですね」

「水晶ですわね」

横島も女性陣もみんなプレゼントを開けてそれぞれに反応を示すが、少女達とタマモはシンプルながら綺麗な水晶のペンダントにみんな表情が緩んでいた。

特にタマモはみんなお揃いであることが嬉しいらしい

そしてもちろん刀子と高畑も喜んでいるが、二人は同時に少し興味深げにも見ている。


「横島さん?」

そのまま横島にしてはお金をかけ過ぎずに素敵なプレゼントを選んだなと感心する少女達は、当然ながらタマモと自分達のプレゼントが気になり横島を見るが当の横島は洋服とアルバムを前に何故か驚きのまま表情が固まっていた。

特にアルバムには表紙にタマモが慣れない字でアルバムと書いて、それだけで横島はすでに胸がいっぱいになっている。

タマモに関しては相変わらずハラハラドキドキとした表情で見守っていて、喜んでくれると思ったのに笑ってくれないことが心配そうでもあった。


「うわ~、すごいね」

「うん、私も欲しいわ」

驚きの表情からいつの間にか真剣な表情に変わった横島が表紙からページを一枚めくると、そこには店の開店初日の写真が何枚か貼られている。

それは報道部が横島の店の開店に取材に来た時に撮った写真であり、タマモや木乃香達のコメントが書かれていた。

ほんの数ヶ月前の写真だが、それに添えられているコメントを読むとその場に居る誰もが感慨深いものを感じてしまい横島は心の奥から沸き上がって来る感情を抑えきれなくなる。

《わたしのおうち》と書かれたコメントや《本当にどうなるかと心配しました》などと書かれたコメントに、横島は早くも涙腺が崩壊したかのように涙を流してしまう。

そんな横島の姿にはタマモはもちろんのこと、木乃香達ですら言葉を失っていた。

当然ながら誰もが横島の涙など初めてだし、何より顔を皺くちゃにするほど涙を流すとは誰一人思いもしなかったのだから。


「……ありがとうな」

突然周りが驚くほど泣き出した横島にタマモは何か失敗したかと不安そうに歩み寄るが、横島は不安そうなタマモを強く抱きしめるとただありがとうと言って泣き続けた。

最早横島は取り繕う余裕すらないほど感情が爆発してしまったようだ。

決して何かを思い出した訳でもないし悲しくて泣いてる訳でもない。

ただただ嬉しくて泣が止まらなかったようである。



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