平和な日常~冬~3

さて少し話が逸れたが高畑も刀子も少々考えてしまうことはあっても、それ以上に今日のような賑やかで楽しい時間は心地いいと感じてるようだ。


「少し切るがのもったいない気もするな」

「うん……、でもみんなにたべてほしい」

その後ゆっくりとした食事が進むと横島は頃合いを見計らってケーキを切り分けることにするが、あまりに可愛らしい出来のケーキに横島はふと切り分けるのがもったいないなと感じてしまう。

横島としては自分で作った料理やケーキでもったいないと思った経験は今のところないが、タマモが頑張って作っていたところを見ていただけにそう感じたらしい。

実のところ手伝った木乃香やのどかも似たような気持ちがあったようだが、タマモ本人は同じくもったいない気持ちとみんなに食べてほしい気持ちで揺れていた。

ずっと横島や木乃香の作る料理を美味しそうに食べるみんなを間近で見て来たタマモだけに、自分が作った喜びとみんなに同じように喜んでもらえるかという期待と不安で少し頭が混乱している。

結局横島はケーキを切り分けるのをタマモにも手伝わせるように、二人で包丁を握って切り分けていく。

タマモにも物を作る喜びとみんなに食べてもらう喜びを感じてほしいと横島は願ったのだ。


「うん、美味しいよ」

「そうね。 とっても美味しいわ」

切られたケーキにはみんなに一体ずつ動物の砂糖菓子が綺麗に乗っていた。

ちなみにサンタクロースの砂糖菓子は横島でタマモ自身はトナカイの砂糖菓子である。

横島はタマモにサンタクロースのケーキをあげようとしたが、タマモはサンタクロースは横島が食べてと言ったのだ。

それはタマモなりのこだわりなのだろうと横島が素直に受け取ると、タマモは期待と不安が入り混じった表情でみんなが食べるのをじっと見つめる。


「……よかった」

そんなタマモの表情は見ている側も当然ながら感じていた。

あまりに熱い視線に何人かは食べるのに少し緊張してしまうが、それでもケーキは美味しく出来ていて素直にみんな美味しいという言葉が出てくる。


「マスターや木乃香が作るケーキとおんなじくらい美味しいよ!」

「細かい分量もタマモちゃんがやったのですか?」

じっと見つめるタマモはみんなの言葉が嘘でないと理解すると嬉しそうに笑った。

正直今までのタマモでは見たことがないほど真剣な表情であり、それが一瞬のうちにいつものタマモの笑顔に戻る。


「砂糖の分量なんかはタマちゃんが決めたんや」

「それはすごいですわね」

みんなが美味しい美味しいと言って食べる姿をタマモは本当に嬉しそうに見ていた。

一方の少女達は実際にタマモが一部とはいえ味を決める細かな分量まで関与していたことに驚いている。

作るのを時々見に来ていた明日菜や夕映は別だが、美砂達もあやかと千鶴もみんなデコレーション以外は木乃香達が作ったと思っていたのだ。

まあ実際には横島のレシピをタマモに微調整させる程度だったが、慣れしたしんだ横島の味をタマモは完全に覚えていたので同じ味になったらしい。


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