平和な日常~冬~3

(いつの間にか呼ばれるようになったのよね)

一方の刀子は楽しげな少女達を見て、ふと自分の現状について考え始める。

そもそも刀子は女子中等部の教師ではあるが、木乃香達2ーAの生徒とは実は直接的な繋がりがほとんどない。

教科の担当授業すら刀子は受け持ちではなく、木乃香とは麻帆良に来た頃からの友人のような関係だが後はさほど関わりがない生徒ばかりだった。


(好意と打算の結果なのよね)

元々刀子が呼ばれるようになったのは木乃香と親しかったとの表の理由と、刀子が横島に好意を持つことを美砂達に知られたことが裏の理由にある。

木乃香は単純に仲のいい友人を呼んだような感じなのだが、美砂達は明らかに刀子を自分達と同じ土俵に乗せようと考えた結果だろう。

それは刀子も同じチャンスを与えると同時に、抜け駆けをしないようにと釘を刺す意味もあった。

ただ現在はすでに割とそんな好意と打算を越えていて、教師と生徒という関係であると同時に友人のような形にもなって来ている。

正直美砂達が自分を味方に引き込もうとしなければ、今ここにいなかっただろうと刀子は思う。

そういう意味では感謝しているし、刀子はそれに答えるべく動いてもいた。

実は美砂達への魔法の情報開示に関しては、刀子が割と積極的に働きかけている。

これに関して木乃香の周辺人物に魔法の情報開示をするには、周辺人物にきちんとした情報を教え教育をする監督者が必要だった。

本来見習いの魔法使いに関しては師匠とも監督者とも言える大人が付くのが決まりとなっていて、仮に夕映達や美砂達に魔法の情報開示が成された場合には刀子が彼女達の監督者となり責任を持つことになっていた。

まあこの件に関しては横島に近い少女達の監督者には、事実上横島の秘密を知り木乃香をも任せられる信頼がある刀子がなるしかないのが現状であり、仮に刀子が美砂達を受け入れなければ彼女達への情報開示は成されない可能性も結構ある。

ちなみに監督者に関しては今日来ている高畑も一応可能性はあるのだが、高畑の場合は旧友であるアルビレオ・イマやクルト・ゲーデルに横島の秘密が漏れる危険性から横島関連の秘密は伏せられている関係で微妙に難しい。

つい数ヶ月前にネギの件で暴走したこともあり、近右衛門としては信じたい気持ちはあるが高畑が先に上げた二人に秘密を隠し通せるとの確証が持てなかったのだ。

まあ実際に夕映達や美砂達に魔法の情報が開示された場合は横島絡みの秘密は明かせなくとも高畑もそれなりに協力はしてくれるだろうし、刀子だけが一方的に負担が増える訳ではないのだが。


(お嬢様や横島君には彼女達が必要な存在だと思うのよね)

結果として刀子は美砂達を夕映達と一緒に木乃香の協力者に加えようと動いているが、それはここで美砂達を外すと後々問題になりそうだという冷静な判断と、先に刀子が横島と親しくなるきっかけを作って貰ったという個人的な想いからの行動でもあった。

加えて横島と少女達を一番間近で見ている刀子は、美砂達の今時の女の子らしい感覚がこれからの木乃香や横島には必要ではと考えている。


(あんまり魔法や魔法協会に傾倒し過ぎてもいいことないし)

近右衛門はどちらかと言えば夕映やのどかの今後に期待してるようだったが、刀子は木乃香を含めて夕映達は少し真面目過ぎるのではと感じていた。

言い方はよくないが世の中の流れに敏感で魔法協会の価値観にもイレ込まないだろう美砂達は、木乃香達にとって普通の現実につなぎ止めるいい友人だと思うのだ。

そもそもかつて自身が東西の魔法協会に翻弄された経験がある刀子は、現状の魔法協会のトップである近右衛門や詠春は信頼しても魔法協会そのものを盲信する気はない。

そういう意味では美砂達のような今時の女の子が木乃香の周りに居る意義は将来的に大きいのではと思うようだった。



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