平和な日常~冬~3

その後、冬の夕暮れに合わせるように横島の店はいつもより早く店じまいをしていた。

閉店後の店に残っていたのは木乃香達にハルナ・美砂達・千鶴・あやかのいつものメンバーである。

他には刀子と高畑も誘っていて穂乃香と鶴子にも声をかけたが、穂乃香と鶴子は用事があるからと不参加で刀子と高畑は少し遅れて来るらしい。

それと2-Aのクラスメートにも木乃香達は声をかけたようだが、クラスメートの半数は帰省やクリスマスくらいは家族と過ごしたいからという理由で断ったようだ。


「そんじゃそろそろ行くか?」

「うん!」

集合時間になり遅れて刀子と高畑以外のメンバーが集まったことで、料理に一区切りを付けた横島達はコートを着込んで出掛ける支度を始める。

実はクリスマスパーティーをする前に、麻帆良市内のイルミネーションやクリスマスイベントをみんなで見に行く予定なのだ。

クリスマスに関しては流石に大規模なイベントをやってる訳ではないが、サークル単位ではイベントをいろいろやってるところがある。

特に今年は超鈴音と工学部が完全な立体映像を用いたイルミネーションを今日一日限定で披露するということで結構話題になっていた。

他にもまだ日本では珍しいプロジェクションマッピングを行うサークルなどもあり、タマモはもちろんのことみんな楽しみにしている。


「雨降らないでよかったね」

「予報だと微妙だったもんね」

寒くないようにと暖かい服装をした一行は、電車でイベントやイルミネーションが多い麻帆良の中心街に向かう。

この日はあいにくの曇り空で予報では夕方から雨の確率が上がっていたが、どうやらまだ降らないらしく少女達はホッとした表情であった。



「うわ~」

「すごいです」

そのまま電車で移動して麻帆良中央駅で降りた一行が思わず立ち止まり見た物は、世界樹がクリスマスツリーとして綺麗に輝いてる光景だった。

色とりどりの光が点滅する世界樹ツリーの周りをトナカイのソリに乗ったサンタクロースがクルクルと回っていて、他にも妖精や動物達が世界樹ツリーのあちこちでイキイキと動いている。


「立体映像か……」

「流石は超リンね。 やることが派手だわ」

突然現れた前代未聞であるこの世界樹のクリスマスツリーの秘密は超鈴音の立体映像であった。

横島達も麻帆良祭の時に散々見たがそれでも今回のインパクトは凄まじいものがあり、今年は横島に話題を持っていかれた超鈴音が最後に派手にやらかしたのだと誰もが理解した。


「さんたさんがいる! さんたさんがいるよ!!」

そしてそのあまりにリアルな立体映像を初めて見たタマモはそれが本物だと勘違いしてしまい、世界樹ツリーの周りをクルクルと回っているサンタクロースが完全に本物だと思ってしまったらしい。


「ぷれぜんとわたさなきゃ!」

「サンタさんはお仕事中だから、今は静かに見守ってあげましょうね」

予期せぬタイミングでサンタクロースと出会ったと勘違いしたタマモは用意していたサンタクロースへのプレゼントを持って来てないとつい焦ってしまうが、さよや木乃香達に今は仕事中だから見守ってあげようと言われハッとしたように頷いていた。



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