平和な日常~冬~3

午後になると店には友人同士でクリスマスを楽しむ女子中高生が増えていた。

パーティーとまではいかなくても同性の友人と気軽にクリスマスを楽しむには横島の店は悪くはないのだ。

ただ騒がしい女子中高生が多いのでクリスマスデートには向かなく、デートらしき客はほとんど居なかったが。


「あ~あ、クリスマスには素敵なカレシが欲しかったな」

「何処かに彼女居ない、いい人居ないかしら?」

「無理よねー。 そんな人に限ってフリーな訳ないし」

そんな店内だが単純にクリスマスを楽しむ者ももちろん居るが、客層が女子に偏っているので割と本音の愚痴っぽい女の子達もそれなりにいる。

年頃の女の子だけに彼氏が欲しいと愚痴をこぼす女子中高生の中には、忙しそうに働く横島と木乃香達を見てため息をこぼす者もちらほらと居た。

本人達に自覚はないが、端から見てると本当に楽しそうで羨ましいと感じる常連は結構多い。

特に横島に関しては以前から何度か説明してる通り誰もが羨むイケメンではないが、だからと言って見た目が悪い訳ではない。

昔のように女にガツガツとしなく男性として余裕があり、加えて年齢の割にはお金持ちだと思われているのでそれなりに人気がある。

ただ横島の周りは木乃香達が常にガッチリと固めているし、千鶴や美砂達なんかも友達以上に見えるほど親しいので生半可な関係では親しくなれないのだ。

もちろん常連ならば普通に話はするし時には一緒に馬鹿騒ぎもするが、端からみると木乃香達や美砂達がガッチリと脇を固めてるようにしか見えなく個人的に親しくなるのは常連でも難しかった。

結果として本気で横島が好きかと聞かれると困るが一緒にクリスマスを過ごしたい程度には好意がある女性は、横島と少女達の間に入り込めずにみんな断念している。


「気持ちは分からなくもないけどねー」

女性が苦手だという難点はあるが男性としては有望株であり、木乃香達が周りを固めるのは当然だと常連の女の子達は見ていた。

まあ木乃香達に何処まで自覚があるかは不明だが、周りから見ると横島に近寄る女性を牽制してるようにしか見えないのが実情のようだ。


「怪しいって言えば女子中等部の葛葉先生もやっぱり怪しいって噂よね」

「ああ、夜によくマスターと二人っきりで店に居たって聞くもんね。 実際マスターと二人になるのは夜しかないし」

そのまま女の子達は横島絡みの噂を話の種に盛り上がるが、木乃香達や美砂達と千鶴以外で噂に上がるのはやはり刀子であった。

木乃香達の帰った後に横島の店でよく見かけることが噂の原因だが、中には刀子の表情が完全に女だったと噂する者も居るのだ。

加えて夜だけは木乃香達もタマモも居なく横島が一人で店をやってるので親しくなるならば狙い目だと言われてるが、そんな時間によく刀子を見かけるので噂になるようだった。

まあ刀子の場合は大人の女性でバツイチなので、案外もう横島とは男女の仲なのではとの噂も結構囁かれていたりする。

もちろん横島の恋人の本命は木乃香と千鶴だが、実は大人の女性である刀子が本命ではと考える者は意外と多いようだった。



55/100ページ
スキ