平和な日常~冬~3

お昼頃になると終業式を終えた学生達で麻帆良の街は賑わいを見せていた。

終業式とクリスマスイブが重なったといいこともあり、学生のテンションがいつもに増して高い。


「横島さん、苺ショートとレアチーズケーキ追加お願い」

「あいよ」

そしてご機嫌なエヴァとチャチャゼロが帰った横島の店では終業式を終えた少女達で一気に賑わっていたが、同時にスイーツがバカ売れし始めていた。

クリスマスケーキの販売を断念したのであまり忙しくならないだろうと横島達は考えていたが、予想を覆してスイーツが次々に売れていく。

一番予想外に多いのが学生達による持ち帰りであり、ショートケーキを数個ずつ購入していく学生が多い。

結果として横島はフロアを明日菜と夕映とさよに任せて、昼時を前に急遽追加で木乃香とのどかに手伝ってもらいながらスイーツ作りを始めることになった。


「よく考えて見ると、クリスマスケーキを買わないお客さんは想定しておくべきだったか」

「そやな~、想定外やったわ」

学生が店に来るようになって急激に売れ出したが、よく考えてみるとクリスマスケーキをわざわざ買うほどでもないがケーキを食べたい人が居ることを横島を含め木乃香達もあまり考えてなかったのだ。

家族や友人とパーティーでもするならクリスマスケーキが欲しいが、人数によってはワンホールのケーキは余ってしまう。

結果として普通のショートケーキなんかを買って行く客がいつもに増して多かったようである。


「箱菓子の方も売れてますよ」

「置いてみるもんだな」

加えて今日からしばらくは期間限定で、麻帆良土産の箱菓子も数種類だが店内の入口に置いて販売を開始していた。

こちらは手間の関係で横島の手作りではなく雪広グループの商品やグループで取り扱ってる商品だったが、帰省する学生向けに試しに置いてみたら結構売れてるらしい。

これに関しては夕映とのどかの発案であり、麻帆良学園ではこの時期は帰省する生徒の為にと寮でもお土産が期間限定で売られてるようなのだ。

当然ながら駅や土産物屋などもこの時期は学生向けのお土産を売っており、横島達はそれに便乗した形になっている。

実は当初は手作りの箱菓子にしようかとの話もあったが、正直現状では横島にもそこまで余裕がなかったことで雪広グループから仕入れた商品を売る形になっていた。

まあ普通の喫茶店ならば専門外のお土産を短期間だけ売るとなれば仕入れが大変なのでなかなか実行しないが、横島の店の場合は以前から雪広グループの仕入れに頼ってたので新たな苦労が全くなかったことが影響している。


「あれは手間がかからんからええわ」

「正直どこで買っても一緒ですからね」

順調に売れてるお土産だが、正直誰も横島の店にお土産を買いに来た訳ではない。

ただケーキのついでに買っていく客が多かっただけだ。

木乃香やのどかも予想以上に箱菓子が売れてることに驚くが、ぶっちゃけ値段はどこで買っても一緒なことが逆によく売れる原因になってるようだった。

どうせならば日頃から安価なケーキを販売する横島の店でと考えた常連が結構多かったようである。



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