平和な日常~冬~3

「噂以上にいい性格してるみたいなんでな。 ちょっとビックリしただけだよ」

十人中八人は胡散臭いと断言するほど胡散臭い笑顔のアルだが、楽しそうなのは彼だけでありタマモですらエヴァの表情からか大人しい。

近右衛門と穂乃香は表情こそ変えてないが、この場に笑顔で出て来るアルには褒めていいのか呆れていいのか複雑だった。


「それはそれは申し訳ありません。 正直なところ半分は貴方に会いたかったんですよ。 貴方がお姫様を守る新たなナイトのようですから」

一方その行動に神経の太さは令子以上かもしれないと横島は目の前のアルを見て感じる。

そもそも令子の場合は普段の行動はともかく本質的な性格はあまり悪くないが、エヴァが一番神経質になるこのタイミングで現れて横島自身にも会いたかったと平然と言い切ったことには横島ですら関心するほどだった。

しかもアルは横島が明日菜を守ってることを確信してるようで、あまりにストレートな言葉で横島のみならず近右衛門やエヴァすらも相手に揺さぶりをかけてくる。


「へ~、そう。 でお前はそのナイトの敵なのか?」

「いえ私は敵でも味方でもありませんよ。 物語のプロローグを語る導き手といったところでしょうか」

「悪いけど脚本家はもう決めてるんで遠慮するよ。 俺はハリウッドの超大作よりはお笑いのコントの方が好きなんでね」

そのまま胡散臭い笑顔を絶やさぬアルと面倒くさそうな表情を変えぬ横島は、互いに探り合うように無駄話を続けるがエヴァはそんな状況に更に苛立ちを募らせていく。

ただそれでも口を挟まないのは、何よりアルのペースになることが嫌だからだろう。

何か目的がありそうではあるが、間違いなくエヴァにとってはいい目的ではないのだから。


「それは残念ですね。 貴方やエヴァンジェリンの知らないプロローグを語って差し上げようと思っていたのですが……」

「興味がないからいらん」

どうやらどうしても横島とエヴァを自分のペースに引き込みたいアルは意外に食い下がるが、横島は興味がないからと全く相手にしない。

そもそも横島は話せば話すほど目の前の男のタチの悪さを痛感していた。

実のところ横島はアルビレオ・イマという男を全く信用してない。

土偶羅が調べた超鈴音の世界の歴史において魔法世界は崩壊するが、その原因というか分岐点の幾つかにはこの男の影がちらつくのだ。

二十年前の魔法世界の大戦後に中途半端なまま逃げたことは元より、その歴史において麻帆良に来たネギと仲間になった少女達を魔法世界へと導き、まだ子供でしかないネギと少女達の未来を狂わせたのはこの男に大きな責任があると横島は考えている。

まああの世界のアルにもそれなりに考えがあったのだろうが、根本的にこの男は半ば傍観者のような立場で他人を使って中途半端に物事を進めるようなやり方であり横島はそれが嫌いだった。

結局アルの本音はナギを救うのに横島やエヴァを巻き込みたいのだろう。

そしてその過程において必ず横島達を魔法世界の問題に巻き込むと横島は半ば確信していた。




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