平和な日常~冬~3

そんなポテトチップスの売れ行きが止まったのは、夕食時になり学生の常連達が帰った後だった。

時間的に外はすっかり暗くなっており街灯の明かりとクリスマスのイルミネーションが街を照らしていたが、この日は気温が氷点下になるかもしるないと予報がある影響からか学生達の姿は街にはなくほとんどの学生は寮や自宅に帰ったらしい。


「やっぱりこんな日は鍋よね」

横島の店では例によって木乃香達にハルナと美砂達で夕食にしていたが、この日の夕食は寒さを考慮してか鍋物だった。

醤油仕立てのスープに鱈や野菜などを煮込んだ寄せ鍋と言ったところか。

他にはサラダや自家製の漬物も出したりと野菜中心のヘルシーな夕食である。


「やっぱみんな女の子なんだな。 それ以上痩せる必要ないだろうに」

「甘いわ! その油断が命取りになるのよ!!」

この日の夕食に関しては特にリクエストがなかったが、ポテトチップスの影響からかヘルシーな夕食をとの要望が出た結果であった。

男の横島からすればそんなに気にする必要はないだろうと本気で思うが、木乃香達は元より美砂達がポテトチップスを食べまくったので夕食でバランスを取りたいらしい。


「マスターの作る物って美味しいから、ついつい食べ過ぎちゃうのよね」

少し太るかもしれないと本気で心配する美砂や円に横島は気にしすぎだと笑ってしまうが、彼女達は本気で心配してるし悩んでいる。

実のところ美砂達のみならず木乃香達ですら、横島の身近な少女達の一番の心配は体型維持であった。

自分の好きな物や食べたい物を自由気ままに作る横島に合わせて食べるとどう考えても太るのだ。


「そっ……そうか? とりあえず今夜はご飯より野菜を多く食べればいいんじゃないか?」

女心がわかってないとジトッした目で周りから見られた横島は、少し冷や汗を流して野菜を食べるように勧めていく。

唯一気にしてないのは横島と同様に太る心配のないさよとタマモだろう。

尤もタマモはなんで太りたくないのかすら理解してないが。


(そういや昔、美神さんも……)

木乃香達ですら当然のように太りたくないと言い切る様子に若干居心地の悪さを感じる横島だが、ふとかつて悪魔グラヴィトンの呪いで令子が体重が増えた事件を思い出していた。

あの時は最終的に目茶苦茶なことになったが、日頃から食っちゃ寝ばっかりしている令子ですら僅かな体重の増加を気にしたことは結構印象的だった。


「横島さんは太らへん体質みたいやから羨ましいわ」

「油断したらダメよ。 男性だって太る時は太るのよ。 好き勝手に暴飲暴食してたら健康にも悪いしマスターも例外じゃないわ」

「そうですね。 横島さんの食生活は少し改めてもらう必要があると思うです」

そんな過去を思い出してる横島だったが、周りでは木乃香と美砂と夕映が横島のいい加減な食生活は改めて貰う必要があるという意見で纏まっている。

お酒に関しては木乃香達が半ば強制的に減らしたが、食生活も同様に変える必要があると考えたらしく三人はさよを巻き込み横島の食生活を改善しようとしていた。



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