平和な日常~冬~3

その後タマモのファッションショーに続いて賑やかな夕食になるが、夕食後に最後まで店に残っていたのは近右衛門であった。

師走ということもあり例年でも忙しい時期ではあるが、ここ最近は土偶羅が提供した情報の件で更に忙しい日々を送っているようで木乃香には隠してるようだが若干疲れが見えている。


「俺が言うのも何なんですけど、大丈夫っすか?」

「芦社長がいろいろ手伝ってくれとるのでこれでもかなり楽な方じゃよ」

横島との協力関係構築以後、土偶羅は魔法世界の最重要機密を始めとして幾つかの機密情報提供をしたが問題はそれ以前に魔法協会の情報管理体制からあった。

現行の情報管理体制では超鈴音は元より他の第三者にも情報漏れの危険性があり、急遽魔法協会では情報管理体制の改善に取り組んでいる。

実際に改善に取り組んでいるのは魔法協会所属の人間達だったが、雪広や那波などの魔法協会中枢を支える企業と共に芦コーポレーションからは社長の芦優太郎である土偶羅の分体も直接参加しており、さっそく情報管理体制強化のテコ入れを進めていた。

加えて近右衛門達を悩ませていたのは土偶羅が情報管理に関連して提供した、魔法協会及び雪広・那波両グループの所属人員のブラックリストであった。


「正直、外の問題より内部の方が扱いが難しい」

どんな組織でも裏切り者や小悪党がゼロではないのが現実であり、魔法協会や雪広・那波両グループにも多少だが存在した。

土偶羅はそんな裏切り者や小悪党の証拠付きブラックリストをそれぞれ組織のトップである近右衛門・穂乃香・清十郎・千鶴子に渡している。

なお穂乃香に渡したのは関西呪術協会のブラックリストになる。


「ああ、あれね。 俺はサラっとしか見てませんけど幹部クラスは全員シロだったんでしょ? 優秀じゃないっすか」

情報管理に関するシステムや仕組みに関しては土偶羅が積極的に協力してるので進捗がかなり早いが、ブラックリストに関しては提供はしたがそれ以上の口出ししは一切しなかったので近右衛門達を悩ませていた。

ちなみに横島も同じリストを報告として上がってきたらしいが、当然ながら興味がないのでほとんど見てない。

元々横島も土偶羅も魔法協会の方針ややり方に口を挟むつもりはないので、全面協力はしてもその分だけ近右衛門達が決断や判断しなければならない難しい案件が増えているのだ。


「雪広と那波の方も扱いに悩んでおるよ」

まあブラックリストとは言っても魔法協会や企業に打撃を与えるだけの悪質な者は本当に僅かだった。

悪質な者の大半はリベートを貰ったりするような人間であり額に応じて適切に処分するが、一度に全部処分すると騒ぎになるのでそれなりに時間をかけて解決しなければならない。

ただ中にはパワハラやセクハラをする者から部下の功績を横取りしたというような者、そして企業や魔法協会の機密にならない程度の情報を外部に流して小金稼ぎをしてる小悪党なんかもいる。

いくら雪広や那波が一流企業でも大企業なだけにモラルが低い人間はゼロではないし、魔法協会に至っては末端になるとアルバイト感覚の者も居るので機密にならない程度の細かな情報漏れはどうしようもないのが現状である。

結局近右衛門達は本人の資質や仕事の成果などと合わせて考慮して、リストにある人員への対応を決めねばならなかった。

しかし問題はやみくもに処分だけをすればいいというものでもないので、さじ加減が難しいのが実情である。



32/100ページ
スキ