平和な日常~冬~3

「タマちゃん、ただいま~」

「おかえり!」

冬の日暮れは早く木乃香と穂乃香が麻帆良に戻り、横島の店に顔を出したのはすでに日が暮れた後であった。

横島とのどかはちょうど夕食の支度で厨房に居るらしく、フロアではタマモがさよ・明日菜・夕映・ハルナに美砂達とトランプで遊んでいた。

入口のドアが開き木乃香達が店に入って来ると、タマモはすかさず駆け寄り笑顔でおかえりと出迎えている。

タマモ本人は特に意識してる訳ではないが、木乃香達に関しては《いらっしゃい》ではなく《おかえり》になるらしい。


「はい、タマちゃんのお土産や」

今日は何処に行ったのと瞳を輝かせて聞くタマモに、木乃香と穂乃香はさっそくお土産を渡すが結構な量であり紙袋一つ分はタマモのお土産であった。

タマモの身体が隠れるほど大きな紙袋いっぱいのお土産には、流石のタマモも驚き一緒にトランプをしていた明日菜達も中身が何なのかと興味津々な様子で近寄ってくる。


「うわ! ありがとう!!」

「タマモよかったな。 わざわざありがとうございます」

「いいからいいから。 久しぶりに子供服見たら可愛いのがいっぱいあって本当に迷っちって」

おおきな紙袋を受けとったタマモは上から覗き込むが、残念ながら何かの包装紙で中身までは見えない。

店内は木乃香達が来たことで賑やかになり横島とのどかが厨房から現れると、タマモは嬉しそうにお土産を貰ったと告げてタマモと横島は木乃香と穂乃香にお礼を言う。

そんな中でタマモはお土産の中身は何かなとワクワクとした表情で期待に胸を膨らませており、穂乃香に促されるままタマモはお土産を開けてみるが中身は何着もの子供服である。


「凄い量だな。 さっそく着てみるか?」

「うん!」

お土産にしては量が多いなと誰もが思うが、どうやら木乃香と穂乃香は久しぶりに見た子供服の可愛いさに自分達の服そっちのけでタマモの服ばっかり探していたらしい。

何着もの可愛い子供服にタマモが嬉しそうに手を取り横島や明日菜達に見せると、どうせだからと貰った服を着て見せることになる。

タマモは何の躊躇もなくその場ですぐに着替ようとするが、流石にお客さんがまだ居るフロアで着替えるのもまずいので、慌てたさよと明日菜に連れられたタマモは日頃木乃香達が更衣室代わりに使っている事務室で着替え始めた。


「今夜の夕食に予定はあるんっすか? もしよかったら学園長先生も呼んで食べていって下さい」

そのままタマモの着替えを待つ間に横島は、木乃香と穂乃香に紅茶を出して二人を夕食に誘っていた。

一瞬家族水入らずの方がいいかとも考えるが、時間も時間なので今から夕食の支度は大変だろうし木乃香達が必要ならば断るだろうと横島は深く考えないことにする。


「本当はもう一人子供が欲しかったのよね。 なんだか木乃香に妹が出来たみたいで嬉しいわ」

一方の穂乃香だが孫のような娘のようなタマモの存在を少し悩みもしたが、結局は木乃香と一緒に一日ずっと子供服を選んでいたことが全てのようだ。

ただ流石に年齢的にも孫は抵抗があるので木乃香の妹だと考えることにはしたらしいが。



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