平和な日常~冬~3
何故かダンスパーティーには全く相応しくない話をした夕映との次はさよである。
彼女は横島が木乃香達と踊る間も、華やかで気品ある雰囲気の会場内を楽しげに見ていた。
他の少女達と同様に緊張した様子はあるが、それでもさよは特に嬉しそうだった。
「最近よく去年や一昨年のことを思い出すようになったんです。 あんまり古いことは思い出せないんですけど……」
今この瞬間に一番感慨深いモノを感じてるのは間違いなく彼女だろう。
自身が幽霊であることを自覚するさよは、横島にリードされるように踊り出しふと最近の変化を口にする。
夏休み初日に突然降って湧いたように実体化をして以来、毎日新鮮で楽しい日々だったが最近のさよは自分でも認識出来るほど最近の過去の記憶が鮮明に思い出せるようになっていた。
尤も思い出せるのはここ数年のことばかりであり、あまり古い記憶は相変わらず思い出せないようだったが。
さよ自身はそんな自分に少し戸惑いながらも、以前は何故思い出せなかったのか少し不思議そうな様子である。
「さよちゃんの体が安定した影響だな。 俺とタマモの近くに居ることも関係あるけど。 ただそれ以上古いことを思い出すのは当分無理だとは思う」
そもそも本来霊体という物質を持たないさよが実体化してるのは、以前から説明する通り横島の術であり力の源は当然ながら横島であった。
いわゆる横島の庇護下に置かれた神霊というのがさよの現状であり弱かったさよの霊体がある程度のレベルまでは急速に安定したが、現状のまま何の修行もしなければ流石にこれ以上の急速な成長はあまり望めない。
ぶっちゃけ横島ならば力や経験ですら授けることも可能ではあるが、現状ではその必要性は全くないしさよ自身の為にもならないだろう。
「そうなんですか」
「ただ今やこれからのことは忘れることはなくなるから、その点は心配する必要はないよ」
古い記憶を当分思い出せないと語る横島に、さよは少し残念なようなホッとしたような複雑な表情を見せた。
思い出したい気持ちもあるが思い出すのが怖い気持ちもあるのだ。
ただ今の記憶はもう忘れることはないだろうと聞くと、それは素直に嬉しいようであからさまにホッとしている。
正直過去を思い出せないことよりも、今の幸せな記憶を忘れる方がさよは怖かったのだから。
「何でも知ってるんですね」
思えば横島は最初から不思議なことの連続だったなと、さよは横島を見つめながら改めて考える。
幸せな時間が夢や幻ではと考え怖くなったことも一度や二度ではないし、いずれ元の生活に戻るかもしれないと覚悟をしていることは今でも変わらない。
ただ一方では横島は一体何者なのだろうかと、時々考えてしまうことがあった。
「何でもって訳じゃないかな。 まあ人より特殊なことは知ってるけど。 さよちゃんには少しずつ教えていくよ」
さよは決して自分から横島に過去や素性を聞かないが、本心では知りたいと考えてることは横島も理解している。
まあ過去に関しては言えないことも多々あるが、さよやタマモには教えるべきことがいろいろあるとは思っている。
近右衛門達にも過去の一端は話したのだし、さよとタマモにもそろそろ少しずつではあるが話すべきなんだろうと思う。
この点で言えば人として生きるだろう木乃香達には言うべきか悩むが、さよとタマモはどのみち長い付き合いになるので横島のことやさよやタマモ自身のことを少しずつ教えていく必要があった。
さよは少しずつ教えていくという横島の言葉に嬉しそうに頷くと、それ以上何かを聞くことはなかった。
彼女は横島が木乃香達と踊る間も、華やかで気品ある雰囲気の会場内を楽しげに見ていた。
他の少女達と同様に緊張した様子はあるが、それでもさよは特に嬉しそうだった。
「最近よく去年や一昨年のことを思い出すようになったんです。 あんまり古いことは思い出せないんですけど……」
今この瞬間に一番感慨深いモノを感じてるのは間違いなく彼女だろう。
自身が幽霊であることを自覚するさよは、横島にリードされるように踊り出しふと最近の変化を口にする。
夏休み初日に突然降って湧いたように実体化をして以来、毎日新鮮で楽しい日々だったが最近のさよは自分でも認識出来るほど最近の過去の記憶が鮮明に思い出せるようになっていた。
尤も思い出せるのはここ数年のことばかりであり、あまり古い記憶は相変わらず思い出せないようだったが。
さよ自身はそんな自分に少し戸惑いながらも、以前は何故思い出せなかったのか少し不思議そうな様子である。
「さよちゃんの体が安定した影響だな。 俺とタマモの近くに居ることも関係あるけど。 ただそれ以上古いことを思い出すのは当分無理だとは思う」
そもそも本来霊体という物質を持たないさよが実体化してるのは、以前から説明する通り横島の術であり力の源は当然ながら横島であった。
いわゆる横島の庇護下に置かれた神霊というのがさよの現状であり弱かったさよの霊体がある程度のレベルまでは急速に安定したが、現状のまま何の修行もしなければ流石にこれ以上の急速な成長はあまり望めない。
ぶっちゃけ横島ならば力や経験ですら授けることも可能ではあるが、現状ではその必要性は全くないしさよ自身の為にもならないだろう。
「そうなんですか」
「ただ今やこれからのことは忘れることはなくなるから、その点は心配する必要はないよ」
古い記憶を当分思い出せないと語る横島に、さよは少し残念なようなホッとしたような複雑な表情を見せた。
思い出したい気持ちもあるが思い出すのが怖い気持ちもあるのだ。
ただ今の記憶はもう忘れることはないだろうと聞くと、それは素直に嬉しいようであからさまにホッとしている。
正直過去を思い出せないことよりも、今の幸せな記憶を忘れる方がさよは怖かったのだから。
「何でも知ってるんですね」
思えば横島は最初から不思議なことの連続だったなと、さよは横島を見つめながら改めて考える。
幸せな時間が夢や幻ではと考え怖くなったことも一度や二度ではないし、いずれ元の生活に戻るかもしれないと覚悟をしていることは今でも変わらない。
ただ一方では横島は一体何者なのだろうかと、時々考えてしまうことがあった。
「何でもって訳じゃないかな。 まあ人より特殊なことは知ってるけど。 さよちゃんには少しずつ教えていくよ」
さよは決して自分から横島に過去や素性を聞かないが、本心では知りたいと考えてることは横島も理解している。
まあ過去に関しては言えないことも多々あるが、さよやタマモには教えるべきことがいろいろあるとは思っている。
近右衛門達にも過去の一端は話したのだし、さよとタマモにもそろそろ少しずつではあるが話すべきなんだろうと思う。
この点で言えば人として生きるだろう木乃香達には言うべきか悩むが、さよとタマモはどのみち長い付き合いになるので横島のことやさよやタマモ自身のことを少しずつ教えていく必要があった。
さよは少しずつ教えていくという横島の言葉に嬉しそうに頷くと、それ以上何かを聞くことはなかった。