平和な日常~冬~2
「おや、君はさっきの……。 私などに媚びても何も出ないぞ」
「初めまして横島です。 いや~、さっきから皆さんにそのことばっかり言われるんですよね」
一方の横島は斉木の件の後も挨拶周りを続けていたが、会う人会う人にさっきの発言をネタにからかわれている。
時間的にパーティーが始まってだいぶ過ぎてるので、お酒を飲んでる関係者はほろ酔い気分の人が多かったのだ。
冗談混じりに媚びを売りに来たかと言われたり、何も出ないと笑われたりとすっかりネタにされている。
「私も長いこと生きて来たが、こんな公衆の面前で媚びることを肯定した人は君が初めてだよ。 まあ若い頃は営業もしたし心情は十分理解するけどね」
媚びるという言葉はイメージが悪いが、人間関係を築く上では必要なスキルとも言えた。
特に社会人として仕事をする際には、人間関係が重要な鍵を握ることは言うまでもないだろう。
尤もそこまで理解しても横島のように公衆の面前で言い切る人間なんて普通は居ないだろうが。
「よく非常識だって周りから怒られてますよ」
「気にする必要はないさ。 非常識という言葉も成功すれば革新という言葉に変わることがよくある。 すくなくともさっきの行動は立派だったよ」
言葉の使い方が適切かどうかはさておき、横島の行動の意味に気付かぬような人間は今のところ居なかった。
横島は非常識だったと笑っているが、今度は相手の年配者が非常識という言葉を使い横島を評価する。
結局言葉は使い方一つで変わるということなのだろう。
「トラブルはありましたが挨拶周りは、今の方で最後ですよ」
そして横島の挨拶周りは先程の年配者でようやく終わった。
挨拶周りのリストを再度確認する夕映の言葉に横島はあからさまにホッとした表情を見せる。
「なんとか無事に終わったな。 あの酔っ払いのせいでどうなるかと思ったよ」
「あら、考えて言ったのではないんですか?」
一番大変な挨拶周りが終わり先程まで木乃香達が居た喫茶スペースに入れ違う形で来た横島達だったが、一息ついたことで千鶴と夕映の関心は先程の件に移っていた。
「そんな訳ないだろう。 黙ってるつもりだったけど、つい口に出ちゃっただけだよ」
先程の一件は横島が介入した瞬間は流石に二人も驚いたが、後で冷静にあの時のあやかの表情を考えれば当然だったとも思える。
先程あやかも話していたが、そもそも横島はいざという時に頼りになると二人も思っているのだ。
「つまりあれは本音だったと……」
そんな二人に横島は狙った介入ではないと疲れたように笑うが、夕映と千鶴はその言葉の真意を考え静かに見つめていた。
あの短い会話がどれほどの意味を持ったか二人は当然理解してるし横島は偶然だと言いたいようだが、そもそもあの言葉が偶然だった方がその言葉の評価が高まることに気付かない辺り横島は抜けてるなと二人はシミジミと思う。
まあ夕映も千鶴も横島があんなアホな酔っ払い相手に評価を落とすとはあの時も全く考えなかったが、横島は実力があるにも関わらず自分のことになると抜けてることが多々ある。
「あやか嬉しかったと思うわよ。 きっと」
「俺が今更言わんでも周りも本人も理解してることだろ」
思わず笑ってしまう千鶴と夕映は横島をからかうようにあやかの気持ちを代弁するが、やはり横島はアホな酔っ払いに現実を語った程度の認識しかない。
勘が良く人の気持ちを理解する横島の本気で抜けてるそんな部分が、二人は可笑しくてたまらなかった。
「初めまして横島です。 いや~、さっきから皆さんにそのことばっかり言われるんですよね」
一方の横島は斉木の件の後も挨拶周りを続けていたが、会う人会う人にさっきの発言をネタにからかわれている。
時間的にパーティーが始まってだいぶ過ぎてるので、お酒を飲んでる関係者はほろ酔い気分の人が多かったのだ。
冗談混じりに媚びを売りに来たかと言われたり、何も出ないと笑われたりとすっかりネタにされている。
「私も長いこと生きて来たが、こんな公衆の面前で媚びることを肯定した人は君が初めてだよ。 まあ若い頃は営業もしたし心情は十分理解するけどね」
媚びるという言葉はイメージが悪いが、人間関係を築く上では必要なスキルとも言えた。
特に社会人として仕事をする際には、人間関係が重要な鍵を握ることは言うまでもないだろう。
尤もそこまで理解しても横島のように公衆の面前で言い切る人間なんて普通は居ないだろうが。
「よく非常識だって周りから怒られてますよ」
「気にする必要はないさ。 非常識という言葉も成功すれば革新という言葉に変わることがよくある。 すくなくともさっきの行動は立派だったよ」
言葉の使い方が適切かどうかはさておき、横島の行動の意味に気付かぬような人間は今のところ居なかった。
横島は非常識だったと笑っているが、今度は相手の年配者が非常識という言葉を使い横島を評価する。
結局言葉は使い方一つで変わるということなのだろう。
「トラブルはありましたが挨拶周りは、今の方で最後ですよ」
そして横島の挨拶周りは先程の年配者でようやく終わった。
挨拶周りのリストを再度確認する夕映の言葉に横島はあからさまにホッとした表情を見せる。
「なんとか無事に終わったな。 あの酔っ払いのせいでどうなるかと思ったよ」
「あら、考えて言ったのではないんですか?」
一番大変な挨拶周りが終わり先程まで木乃香達が居た喫茶スペースに入れ違う形で来た横島達だったが、一息ついたことで千鶴と夕映の関心は先程の件に移っていた。
「そんな訳ないだろう。 黙ってるつもりだったけど、つい口に出ちゃっただけだよ」
先程の一件は横島が介入した瞬間は流石に二人も驚いたが、後で冷静にあの時のあやかの表情を考えれば当然だったとも思える。
先程あやかも話していたが、そもそも横島はいざという時に頼りになると二人も思っているのだ。
「つまりあれは本音だったと……」
そんな二人に横島は狙った介入ではないと疲れたように笑うが、夕映と千鶴はその言葉の真意を考え静かに見つめていた。
あの短い会話がどれほどの意味を持ったか二人は当然理解してるし横島は偶然だと言いたいようだが、そもそもあの言葉が偶然だった方がその言葉の評価が高まることに気付かない辺り横島は抜けてるなと二人はシミジミと思う。
まあ夕映も千鶴も横島があんなアホな酔っ払い相手に評価を落とすとはあの時も全く考えなかったが、横島は実力があるにも関わらず自分のことになると抜けてることが多々ある。
「あやか嬉しかったと思うわよ。 きっと」
「俺が今更言わんでも周りも本人も理解してることだろ」
思わず笑ってしまう千鶴と夕映は横島をからかうようにあやかの気持ちを代弁するが、やはり横島はアホな酔っ払いに現実を語った程度の認識しかない。
勘が良く人の気持ちを理解する横島の本気で抜けてるそんな部分が、二人は可笑しくてたまらなかった。