平和な日常~冬~2

さて同じ頃のタマモと明日菜に美砂達は料理大会優秀者のブースに来ていた。

木乃香と新堂のスイーツや超と五月の超包子は元より、和食と洋食のブースも人気を集めている。

時間的にはちょうどおやつの時間になるので、料理を何種類か頼んでは五人で分けながら食べていたのだ。

タマモは幼いながらによく食べるが、だからと言って大人顔負けと言えるほど大量に食べる訳ではないし明日菜達もさほど大食いする訳ではない。

一皿をタマモ・明日菜・美砂・円・桜子の五人で分けて食べると多くの種類が食べられてちょうどいい感じだった。


「わー、すごいね!」

和食・洋食・中華と食べ歩いた一同は最後に木乃香と新堂のスイーツのブースを訪れるが、前に訪れた中華の超包子とは真逆と言ってもいいほど雰囲気が違う。

香辛料などの香りが強い中華とは違いこちらは畳などの自然の匂いが印象的である。

ドレスやスーツを着た人々が純和風の空間で抹茶とお菓子を食べる姿は少し不思議なものがあるが、タマモは新鮮な気持ちでその光景を見つめていた。


「タマちゃん楽しんでる?」

「うん! おいしいものもいっぱいたべたし、おもしろいものもいっぱいみたよ!」

老若男女入り乱れた店内では新堂や木乃香に加え、のどかや新堂側のスタッフや茶道部の人々が精力的に働いている。

タマモ達が来たことで近くに居た木乃香が出迎えに来るが、タマモは嬉しそうにあれが美味しかったとかこれが面白かったと木乃香に語っていく。


「本当によくやるわよね~」

「全部タダってのも凄いし」

そんなタマモに続き明日菜や美砂達とも話す木乃香だが、パーティーの規模の大きさに驚いてるのは彼女達も同じだった。

加えて以前からチラチラと話では聞いていた即席の茶室の出来の良さにも彼女達は驚いている。


「ここもいろんな人が来て大変や」

一方の木乃香は今回数多くの人々に挨拶をしてるが、流石にその人数の多さに相手を覚えるだけでも大変であった。

生徒や学園関係者や支援企業の人々ばかりではなく、料理関係者もかなりの数で訪れており木乃香は挨拶している。

前者はほぼ普通に挨拶だけなのでまだいいが、料理関係者は木乃香の今まで修業の様子や将来に関して結構突っ込んで聞いてくることもあり意外と対応が大変だった。

まあ中学生の若さでどうやってプロ並の実力を身につけたのかが気になるのは当然だし仕方ないのだろうが、実は木乃香自身も自分の実力をイマイチ把握してないので話が微妙に噛み合ってなかったりする。

木乃香は日頃楽しみながら一緒に料理をしてるだけだと語るが、料理関係者からするとそれをそのまま信じる者はほとんど居ない。

中には本当のところを聞き出そうと厳しい修業や長い積み重ねがあるのだろうと尋ねる者もいるが、木乃香がそれを否定してもまず信じないのだからおかしな状況になっている。

それでも新堂と親しい関係者にはそれなりに真実が伝わるが、実際のところ新堂ですら横島と木乃香の関係者を正しく他人に理解してもらう難しさを痛感していた。

一言で言えば横島も木乃香も普通ではないとしか言えないが、特に相手の特徴や癖を瞬時に把握して丁寧に指導する横島のやり方を他人に説明するのは無理だった。

まあ新堂にしてもいろいろ噂された過去があるし、ある意味では有名になると仕方ないことだったが。

明日菜達はそんな木乃香の意外な苦労を聞き、そもそも横島を他人に正しく理解してもらうなんて無理だと心から思っていた。



96/100ページ
スキ