平和な日常~冬~2

同じ頃、木乃香の元には学園関係者や支援企業のVIP達がぽつぽつとやって来ていた。

目的は概ね木乃香を直接見ることではあるが、当初の予想と少し違うのは予想以上に新堂も注目を集めていることか。

加えてそれ抜きにしても茶室と和服でのもてなしは年配者には特に好評のようだ。

古い洋館にも見えるホテルでのクリスマスパーティーに不満がある訳ではないが、ふと落ち着く空間をと探すとさほどある訳ではない。

一見するとクリスマスパーティーに不釣り合いなその場所は、クリスマスパーティーをより彩らせる場所でもあり数少ない一息つける場所でもある。


「これはまた考えたのう」

そしてこの時木乃香達の元を訪れていたのは、近右衛門・清十郎・千鶴子の三名であった。

決して狙った訳ではないが関係者との挨拶や懇談が一段落した頃に来たら自然と来るタイミングが重なったらしい。


「おじいちゃんがいつもお世話になってます」

当然三人には木乃香と新堂が応対していたが、流石の新堂もこの三名には若干緊張気味である。

ただ木乃香とすればそれなりに顔見知りの人達であり、来てくれたことのお礼と祖父が日頃からお世話になってるお礼を言っていた。


「新堂君には木乃香が随分と世話になっとるのう」

「いえそんなことはありませんわ。 私と近衛さんは共に学び共に成長するいい友人です」

対する近右衛門は若干緊張気味の新堂に木乃香が世話になってることを言うが、新堂はあえてそれを否定して対等な友人だと告げる。

その言葉に周囲に偶然居合わせた人々は若干のお世辞も含めた言葉なのだろうと感じるが、新堂は本心からそう考えており近右衛門達もそれを理解していた。

そもそも新堂は麻帆良では割と有名な人物であり、近右衛門のみならず清十郎や千鶴子も会ったのは初めてだが以前から名前は知ってる人物である。


「先程横島君が君のことを絶賛していたが、なるほど……」

「噂以上ですわね」

そんな清十郎と千鶴子だが、本心から木乃香を対等に考える新堂に感心した様子であった。

途中清十郎から横島の名前が出ると二人は若干驚くが、実は横島は先程からの挨拶周りにおいて木乃香の件が話題にのぼると新堂を絶賛して完全に任せていると答えていたのだ。

横島に特別な他意はないが木乃香・あやか・超鈴音・夕映など横島が関わり評価を上げた人物が多いだけに、新堂に関しても噂以上なのではとVIP達の間で評判になりつつある。



「さっきからやけに偉い人が来ると思ったら……。 すいません新堂先輩。 横島さんは時々抜けてるんですわ」

「私は構わないけど……。 近衛さん達の日常がなんとなく理解出来たわね」

先程から新堂への注目度が増した原因は明らかに横島であり木乃香は申し訳なさそうに謝るが、新堂は少し苦笑いを浮かべつつも構わないと笑っていた。

まあ新堂としては注目を集めるのは日頃から慣れていいるしVIP達に注目されて損をする訳ではないので構わないのだが、新堂はなんとなく木乃香達の日頃の苦労の原因を理解した気がする。

そもそも料理において横島は凄まじいと感じる新堂だが、日常生活では案外抜けているのは以前から感じていた。

今回の件にしても新堂は横島に評価された件は嬉しいが、その影響力を考えないで絶賛して歩く横島の抜け具合が現状の横島達なのだろうとシミジミと感じる。

ただ今回の件は新堂にとって大きく元々学生には絶大な人気があった彼女が、麻帆良のVIP達にも愛されるきっかけになるとは新堂本人はもちろんのこと横島も全く考えてなかった。




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