平和な日常~冬~2

一方木乃香と新堂のスイーツ部門のブースでは、当初の目論み通り老若男女問わず様々な人が訪れていた。

基本的に顧客の年齢層が偏っている洋菓子だけに木乃香達の試みは成功してはいるが、一部からは従来の洋菓子のスイーツでないことを残念がる声もちらほらと聞かれる。

特に新堂の店では元々値段が高いだけにこの機会を待っていた者も居たらしく、多少肩透かしを喰らった形になったのだろう。

尤も洋菓子のスイーツ自体はパーティーとしては他にも十分用意してあるし味も一流である。

総合的に見て今のところ全体としては概ね成功してると言えた。


「思ってた以上に年配の男の人が多いわ~」

「半分は貴女を見に来てるのよ。 今年の料理大会での一番の注目株ですもの」

そんな木乃香達だが木乃香自身は思っていた以上に中年以上の男性が多いことに先程から驚いている。

全体の半数以上が若い男女なのは確かだが、意外と中年や年配の男性も多い。

新堂はある程度気付いていたようだが、彼らの目当ては木乃香であった。

三連覇の新堂や天才超鈴音など実力では木乃香を凌ぐ者は他にも居るが、突如現れ新星の如く輝き優勝した木乃香の実力を見たいと思う者は少なくない。

加えて新堂は知らないが魔法協会の後継者としても見られている木乃香なだけに、その顔を一度は見ておきたいと考える裏の関係者も決して少なくはないのだ。

元々魔法も教えずこの手のパーティーには出ない木乃香は、関係者が近付きたいと考えても近付けなかった人物である。

この機会にあわよくばと考えてる者は一人や二人ではないだろう。


「そんなもんなんですか?」

「学園長先生のお孫さんというのもあるのかも。 あわよくば取り入りたいと考えてる可能性もあるかもね」

自分が注目を集めてると聞かされた木乃香だが、その反応はやはり薄いものだった。

はっきりいえば横島絡みで注目される機会が多いだけにいい加減慣れている。

そして木乃香との縁がほしい関係者達の目論みだが、こちらは新堂により全て阻止されていた。

流石に魔法は知らなくとも若くして成功した彼女は、その手の対応には慣れてるらしい。

中には木乃香に直接話し掛けてくる者も居るが、新堂がフォローして上手く交わしている。


「彼からも頼まれてるしね。 近衛さんは笑顔を見せるだけでいいわ」

「彼って、横島さん?」

「ええ、貴女に何かしらの目的があって近付くような人は適当にあしらってほしいって頼まれてるのよ」

ただそんな新堂がぽつりと頼まれてるとこぼすと、木乃香は驚きの表情を見せた。

そもそも木乃香自身は横島から何も言われてないし頼んでいたなど知らない。

尤も横島が新堂に頼んだのが夕映達から挨拶周りをすることを知らされた後なので、横島もわざと木乃香に隠していた訳ではないが。


「ウチそんなこと聞いてへんわ」

「用心するに越したことはないわ。 世の中いい人ばかりじゃないもの」

またもや自分の知らないところで動いていた横島に木乃香は何とも言えない表情になるが、新堂は若い木乃香にはまだ分からないことが多いと実感する。



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