平和な日常~冬~2
「おお、横島君か。 よく来たのう」
その後さやかの来訪を期に横島達は挨拶周りを始めるが、同行者は夕映・千鶴の二人である。
流石に刀子は挨拶周りまでは同行しなかったようだ。
まあ表向き刀子は中等部の教員であり広域指導員としての立場なので当然と言えば当然だが。
「お久しぶりです、会長。 少々場違いなのは承知してますけどね。 お世話になってますので、挨拶くらいはしておこうかと」
そんな横島達が挨拶周りの最初の一人として向かったのは、当然ながら雪広清十郎現雪広グループ会長の元である。
さやかとは違い横島もだいぶ砕けた感じではあるが、清十郎自体は横島がこの場に出て来たことホッとしていた。
元々面倒なことは嫌だからと麻帆良カレーの一件を無条件で雪広グループに譲った経緯を知るだけに、また理由を付けて出て来ないのではと少々心配もしていたらしい。
「場違いなどはありえんよ。 立場や地位を振りかざすようなつまらん輩をこの場に呼ぶ気はない。 そんなことをしたいならば他に行ってもらう」
学園関係者に支援企業やOBに生徒会など麻帆良の中枢を担う人達を周りに横島は場違いだと笑っていたが、清十郎はここで場違いなどと言う人間を呼ぶ気はないと真顔で言い切る。
その言葉に周りに居た多くの人々の表情には緊張感が走るが、それだけ清十郎の影響力は大きいのだろう。
実際この日は清十郎と千鶴子が揃って参加しているが、麻帆良祭の時の支援企業によるパーティーと同様に二人が揃うのは数年ぶりだった。
相変わらずその一挙手一投足が注目を集めてるらしい。
「そう言って頂くと気が楽になりますよ」
今年の麻帆良で一番注目されてる人物である横島と清十郎の会話は、日頃の二人の会話と比べると固くよそよそしいものであった。
ただそれでも以前からそれなりに付き合いがあることは周りにも分かるし、それが必要だったとも言えるが。
「横島君。 わしはな、君のような未来ある若い者達にもっと積極的に参加してほしいと思っとるよ。 特に君は十分過ぎるほど麻帆良に新しい風を吹き込んでくれた」
割と賑やかな会場でどんどん周囲の注目を集める清十郎と横島だが、周囲だけは二人の会話を聞こうと静まり返っていた。
やはり麻帆良カレーと納涼祭の功績はこの会場に居る人間からすると周知の事実なのだろうし、何より横島と麻帆良の盟主ともいえる清十郎との正確な関係を掴むいい機会となるのだ。
まあ元々横島は雪広グループとの関係が深いのは知らぬ者は居ないが。
「風ですか。 そもそも窓の外で風雨に晒されていた俺を助けてくれましたからね。 新しい風が吹くきっかけくらいは提供しますよ。 尤も俺は窓すら自分で開けてませんけど」
「君はそれくらいでいいんじゃよ」
結局横島と清十郎は最後まで抽象的な話に終始した。
その言葉には多分に誤解される要素が盛り込まれていたが、双方共にそれは承知の上での会話だった。
半分は親しい関係だと示すことで横島や周囲に下手な問題を起こさぬことが目的だが、半分はただ単に周囲の人々の反応で遊んでいただけでもある。
そして横島と同行していた夕映と千鶴はその意図の半分は概ね見抜くが、流石に周囲の人々の反応で遊んでいたとまでは読めなかったようだ。
その後さやかの来訪を期に横島達は挨拶周りを始めるが、同行者は夕映・千鶴の二人である。
流石に刀子は挨拶周りまでは同行しなかったようだ。
まあ表向き刀子は中等部の教員であり広域指導員としての立場なので当然と言えば当然だが。
「お久しぶりです、会長。 少々場違いなのは承知してますけどね。 お世話になってますので、挨拶くらいはしておこうかと」
そんな横島達が挨拶周りの最初の一人として向かったのは、当然ながら雪広清十郎現雪広グループ会長の元である。
さやかとは違い横島もだいぶ砕けた感じではあるが、清十郎自体は横島がこの場に出て来たことホッとしていた。
元々面倒なことは嫌だからと麻帆良カレーの一件を無条件で雪広グループに譲った経緯を知るだけに、また理由を付けて出て来ないのではと少々心配もしていたらしい。
「場違いなどはありえんよ。 立場や地位を振りかざすようなつまらん輩をこの場に呼ぶ気はない。 そんなことをしたいならば他に行ってもらう」
学園関係者に支援企業やOBに生徒会など麻帆良の中枢を担う人達を周りに横島は場違いだと笑っていたが、清十郎はここで場違いなどと言う人間を呼ぶ気はないと真顔で言い切る。
その言葉に周りに居た多くの人々の表情には緊張感が走るが、それだけ清十郎の影響力は大きいのだろう。
実際この日は清十郎と千鶴子が揃って参加しているが、麻帆良祭の時の支援企業によるパーティーと同様に二人が揃うのは数年ぶりだった。
相変わらずその一挙手一投足が注目を集めてるらしい。
「そう言って頂くと気が楽になりますよ」
今年の麻帆良で一番注目されてる人物である横島と清十郎の会話は、日頃の二人の会話と比べると固くよそよそしいものであった。
ただそれでも以前からそれなりに付き合いがあることは周りにも分かるし、それが必要だったとも言えるが。
「横島君。 わしはな、君のような未来ある若い者達にもっと積極的に参加してほしいと思っとるよ。 特に君は十分過ぎるほど麻帆良に新しい風を吹き込んでくれた」
割と賑やかな会場でどんどん周囲の注目を集める清十郎と横島だが、周囲だけは二人の会話を聞こうと静まり返っていた。
やはり麻帆良カレーと納涼祭の功績はこの会場に居る人間からすると周知の事実なのだろうし、何より横島と麻帆良の盟主ともいえる清十郎との正確な関係を掴むいい機会となるのだ。
まあ元々横島は雪広グループとの関係が深いのは知らぬ者は居ないが。
「風ですか。 そもそも窓の外で風雨に晒されていた俺を助けてくれましたからね。 新しい風が吹くきっかけくらいは提供しますよ。 尤も俺は窓すら自分で開けてませんけど」
「君はそれくらいでいいんじゃよ」
結局横島と清十郎は最後まで抽象的な話に終始した。
その言葉には多分に誤解される要素が盛り込まれていたが、双方共にそれは承知の上での会話だった。
半分は親しい関係だと示すことで横島や周囲に下手な問題を起こさぬことが目的だが、半分はただ単に周囲の人々の反応で遊んでいただけでもある。
そして横島と同行していた夕映と千鶴はその意図の半分は概ね見抜くが、流石に周囲の人々の反応で遊んでいたとまでは読めなかったようだ。