平和な日常~冬~2
一方木乃香達の料理大会優勝組のブースだが、パーティー開始直後からお客さんが次々に訪れていた。
和食・洋食・中華の三部門では開始直後にすぐに満席になったが、スイーツ部門は席が半分埋まる程度で一番低調な出だしである。
ただこれに関してはやはりデザートよりは食事である他の三部門の方が先に混むのは、ある意味当然の流れだったが。
新堂は過去二年参加しているが、どちらも今回同様に最初は低調な出だしであった。
「あれ……」
「ここスイーツですよね?」
そしてスイーツ目当てに来る人はほとんどが、その本格的な和風の空間に驚き戸惑ってしまう。
料理大会には和食部門もあるので和食部門のブースかと間違う客が後を絶たないし、何より新堂も木乃香も料理大会では洋菓子で優勝したのだ。
それがパーティーでは茶室を模した和風の空間を提供するのだから、来る人が驚き戸惑うのも無理はない。
「はい、そうですよ。 本日は茶席になっております。 提供スイーツはカステラです」
まあ来客が驚くのは想定済みだったので、入口にも和服姿の茶道部員を配置して説明係を置いていたが。
ただやはり洋菓子を求めて来た人が大半であるが為に、戸惑う人が続出することになる。
「まさか、カステラとはね」
そして木乃香は新堂と共に訪れる関係者に挨拶をしていたが、パーティー開始直後に訪れたのは料理大会で特別審査員だった調理科の教師であった。
どうも新堂の恩師の一人らしく真っ先に様子を見に来たらしい。
「カステラも茶室も私と近衛さんで考えた結果です。 今日という日に相応しいものだと自負しております」
教師の彼は椅子の席に座り抹茶とカステラを味わうが、その表情はやはり驚きであるが微かに苦笑いも浮かべてもいる。
「近衛君に影響を受けたか。 本当に君らしい。 君も型にはまるタイプじゃないからな」
カステラは厳密に言えば分類的には和菓子に入るし、有名どころにはカステラの専門店も多い。
当然ながら本来洋菓子のパティシエである新堂の専門分野とは微妙に違うが、それが木乃香の影響だということを教師は見抜いていた。
「先生のおかげですわ。 私を決して型にはめようとしませんでしたもの」
「君の才能を見れば誰でもそうするさ。 多分、今の君が近衛君に感じてるようなものだよ」
この教師の技量はパティシエとしても一流ではあったが、それでも大きな大会で入賞したなどの実績がある訳ではない。
逆に自分の限界を悟り教師の道に進んだ過去がある。
そして新堂の感性と才能を見抜き、それを殺さぬように育てた本当の恩師と言える人物だった。
「近衛君もいい出会いをしたな。 以前学園長先生にお会いした時も君の成長を喜んでいたよ」
「ありがとうございます。 でもウチほんまは将来を決めてる訳やないんです。 ただ横島さんと一緒に料理するのが楽しいだけで」
「君はまだ若いんだからゆっくり考えるといいよ。 それに無理に型にはめて考える必要もない。 君も自分の好きなように努力して頑張りなさい」
そのまま教師は新堂に続き木乃香にも声をかけるが、彼は近右衛門とも少なからず面識があるようで木乃香の素性を知ってるらしい。
ただ木乃香はパティシエになる気は今のところないのでやんわりと否定する。
もちろん絶対にパティシエになる気がないとまでは言わないが、そもそも木乃香は洋菓子一本に絞るつもりは今のところないのだ。
教師はそんな木乃香の心情をなんとなく理解したのか一言だけアドバイスをするが、それはやはり型にはまったアドバイスではなかった。
日本の教師としては彼は珍しい部類に入る教師ではあるが、実は麻帆良には彼のように個性を伸ばしたいと考える教師は割と多い。
子供達も麻帆良の自由を求めてやって来るように、教師もまた自由な教育を求めて麻帆良にやって来る者が多いのだ。
木乃香は教師と新堂の会話を聞きながら、その教師との出会いが少し羨ましく感じていた。
和食・洋食・中華の三部門では開始直後にすぐに満席になったが、スイーツ部門は席が半分埋まる程度で一番低調な出だしである。
ただこれに関してはやはりデザートよりは食事である他の三部門の方が先に混むのは、ある意味当然の流れだったが。
新堂は過去二年参加しているが、どちらも今回同様に最初は低調な出だしであった。
「あれ……」
「ここスイーツですよね?」
そしてスイーツ目当てに来る人はほとんどが、その本格的な和風の空間に驚き戸惑ってしまう。
料理大会には和食部門もあるので和食部門のブースかと間違う客が後を絶たないし、何より新堂も木乃香も料理大会では洋菓子で優勝したのだ。
それがパーティーでは茶室を模した和風の空間を提供するのだから、来る人が驚き戸惑うのも無理はない。
「はい、そうですよ。 本日は茶席になっております。 提供スイーツはカステラです」
まあ来客が驚くのは想定済みだったので、入口にも和服姿の茶道部員を配置して説明係を置いていたが。
ただやはり洋菓子を求めて来た人が大半であるが為に、戸惑う人が続出することになる。
「まさか、カステラとはね」
そして木乃香は新堂と共に訪れる関係者に挨拶をしていたが、パーティー開始直後に訪れたのは料理大会で特別審査員だった調理科の教師であった。
どうも新堂の恩師の一人らしく真っ先に様子を見に来たらしい。
「カステラも茶室も私と近衛さんで考えた結果です。 今日という日に相応しいものだと自負しております」
教師の彼は椅子の席に座り抹茶とカステラを味わうが、その表情はやはり驚きであるが微かに苦笑いも浮かべてもいる。
「近衛君に影響を受けたか。 本当に君らしい。 君も型にはまるタイプじゃないからな」
カステラは厳密に言えば分類的には和菓子に入るし、有名どころにはカステラの専門店も多い。
当然ながら本来洋菓子のパティシエである新堂の専門分野とは微妙に違うが、それが木乃香の影響だということを教師は見抜いていた。
「先生のおかげですわ。 私を決して型にはめようとしませんでしたもの」
「君の才能を見れば誰でもそうするさ。 多分、今の君が近衛君に感じてるようなものだよ」
この教師の技量はパティシエとしても一流ではあったが、それでも大きな大会で入賞したなどの実績がある訳ではない。
逆に自分の限界を悟り教師の道に進んだ過去がある。
そして新堂の感性と才能を見抜き、それを殺さぬように育てた本当の恩師と言える人物だった。
「近衛君もいい出会いをしたな。 以前学園長先生にお会いした時も君の成長を喜んでいたよ」
「ありがとうございます。 でもウチほんまは将来を決めてる訳やないんです。 ただ横島さんと一緒に料理するのが楽しいだけで」
「君はまだ若いんだからゆっくり考えるといいよ。 それに無理に型にはめて考える必要もない。 君も自分の好きなように努力して頑張りなさい」
そのまま教師は新堂に続き木乃香にも声をかけるが、彼は近右衛門とも少なからず面識があるようで木乃香の素性を知ってるらしい。
ただ木乃香はパティシエになる気は今のところないのでやんわりと否定する。
もちろん絶対にパティシエになる気がないとまでは言わないが、そもそも木乃香は洋菓子一本に絞るつもりは今のところないのだ。
教師はそんな木乃香の心情をなんとなく理解したのか一言だけアドバイスをするが、それはやはり型にはまったアドバイスではなかった。
日本の教師としては彼は珍しい部類に入る教師ではあるが、実は麻帆良には彼のように個性を伸ばしたいと考える教師は割と多い。
子供達も麻帆良の自由を求めてやって来るように、教師もまた自由な教育を求めて麻帆良にやって来る者が多いのだ。
木乃香は教師と新堂の会話を聞きながら、その教師との出会いが少し羨ましく感じていた。