平和な日常~冬~2

同じ頃タマモと明日菜達は会場のホテルに到着していた。

時間はパーティー開始の二十分前の到着であり、ホテルの駐車場には高級車や外車がズラリと並んでいる。

道ゆく人の半数は同じパーティーに向かう人らしく綺麗に着飾った学生達も多い。

実際に元々化粧などしない明日菜は普段と変わらないが美砂達は化粧もしており、いまどきの学生はそちらの方が圧倒的多数のようだ。


「流石は麻帆良で一番のパーティーね。 みんな凄いわ」

ホテルの入り口で参加券を確認してもらい中に入る一行だったが、ロビーはすでに老若男女問わずパーティーの出席者で溢れている。

日頃テレビでしか見ないようなパーティー会場に足を踏み入れた美砂なんかは視界に入る人々を見て興奮気味になるが、実際会場はロビーからして少し異様とも言える空気であった。

まあよく見ると明日菜達と同じようにパーティーに慣れてない者もロビーには多いようで、ちょっとしたお祭り気分の人もかなり多いようである。

実のところ招待客や横島達のような関係者には控室としてホテルの客室を割り当てており、ロビーでたむろしてるのは一般参加者がほとんどだったようだが。


「あら、タマちゃん今日は綺麗ね」

「うん! おめかしして来たんだよ」

パーティー開始時刻の前に到着した明日菜達も他の一般参加者同様に控室などあてがない。

横島達のところに行けば多分休めるだろうが、開始直前の忙しい時間に流石に邪魔をしにいく訳にもいかないのでロビーの隅で開始時間まで待ってることにした。

ただロビーには店の客などの顔見知りの人も結構いて、タマモや明日菜は何人かに声をかけられている。

特にタマモは明日菜も知らないような人とも気軽に挨拶をしており、改めて人気者なのだと感じる。


「タマちゃん、今の人知り合い?」

「おさんぽのときによくあうひとだよ!」

中には何処で知り合ったのかVIPのような老人なんかも、笑顔でタマモと挨拶しており明日菜達は更に驚いてしまう。

流石に少し心配になった明日菜はタマモにどういう知り合いなのか尋ねるが、散歩途中でよく会う人だと言われると少し不思議な心境になっていた。

元々タマモの散歩は店の付近の人達には有名なのは明日菜達も知っていたが、そもそも女子寮や店がある付近は麻帆良でも有数の住宅街なので驚くような知り合いも中には居るようである。

尤もタマモは相手の名前くらいしか知らなく、何をしてる人なのか全く知らないらしい。

タマモが知ってるのは相手が動物が好きか嫌いかくらいだった。


「私達より交遊関係広いじゃん」

「タマちゃんだもんね」

「学校に入る前にリアルに友達百人作りそう」

店で身内が騒ぐパーティーとは違い本格的なパーティーに初めて来た明日菜達とタマモだが、一番その場に馴染んでいたのは何故かタマモである。

美砂達三人はそんなタマモのこの先の人生がどうなるのか楽しみな様子であった。


「あれって……豪徳寺先輩達じゃない?」

一方明日菜はロビーの中にいつもの学ラン姿の豪徳寺と格闘仲間達を発見していた。

彼らは格闘大会の上位入賞者ということで参加したらしいが、いつもと全く変わらない学ランとリーゼント姿は流石に少し浮いている。

まあ元々お人よしな番長として有名な豪徳寺なだけに特に問題は起こしてないが。



78/100ページ
スキ