平和な日常~春~

その後もテストは続いていき全てが終わると、ピリピリとした空気が支配していた中等部は一気に明るく賑やかな空気に変わる

そしてそれは定期テストを行っていた麻帆良中の中学と高校でも同じで、テストから解放された喜びで賑やかになり生徒達は麻帆良祭へ向けて加速して行く事になる



「いらっしゃい!」

中高校生の定期テストが終わった影響は横島の店にモロに影響していた

客の大半が中高生な為、テスト勉強期間に来なかった女子中高生が今日は一気に集まっている

ついさっきまでは暇で猫と会話していた横島も、突然の忙しさに驚きつつ対応に追われていた


「横島さん、忙しそうですね。 手伝いましょうか?」

横島が忙しそうにお客の対応をしている時に来たのは明日菜だった

テスト勉強期間も終わり木乃香や夕映達がそれぞれの部活に行った為に、美術部の幽霊部員である明日菜だけが先に来ていたのだ


「テスト終わったばっかりなのに悪いな、バイト代奮発するから頼むよ」

久しぶりの店内の混雑に少し驚く明日菜に横島が素直に頼むと、明日菜はエプロンを付けてフロアでウエイトレスとして働き出す

やはり店内に一人居ると横島はかなり楽なようで、厨房とカウンターで料理や飲み物を作るだけでいいのでかなり効率がよかった


一方の明日菜だが何度か店を手伝った結果、フロアでの仕事に慣れて来たらしく結構上手く働いている

加えて両親や身寄りが居ない明日菜には、横島の店でのバイト代はいい小遣い稼ぎになっていた

実際には近右衛門の援助で小遣いに不自由することなどないのだが、それでも自分で稼げることは有り難かったようだ

結局この日の店は、日が暮れる頃まで中高生で賑わうことになる



「そういやあテストどうだった?」

「いつもよりは出来たと思うわよ。 教えてもらった半分も出来なかったけど……」

店の前の外灯に光が入る頃、お客も減り空いて来た店内では横島が明日菜にテストの手応えを尋ねていた

明日菜としてはいつもよりは手応えがあり結構出来た自信はあったが、それでも教えてもらった成果が出たか多少不安なようである

まあ明日菜の場合は成績よりも、結果が悪いと教えてくれた横島に申し訳ないと考えていただけなのだが……


「そっか、お疲れさま。 正直言うとテストの良し悪しなんて、あんまり気にする必要はないと思うんだわ。 ただ勉強は無駄にはならないからな。 今回の結果に問わず頑張った成果はいつか出るさ」

少し落ち込み気味の明日菜を励ますように陽気に明るく話す横島に、明日菜は思わずクスクスと笑ってしまう

一見楽観的でいい加減に見える横島だが、よく知ると驚くほどお人よしで優しいのだから

その生き方は不器用にも見えるほどに


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