うたのプリンスさま短編集
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【惚気話】
「聞いてよ翔ちゃん……最近ね、重いの……」
「なんだよ、ダイエットのことならトキヤの方が得意なんじゃねえか?」
「誰も私の体重の話なんかしてないよバカ!!」
「いってぇな!!」
やばい。アイドルに思わず手を出してしまった。傷は……付いていないからセーフだ。
「なっちゃんだよ、なっちゃん!最近さ……なんていうか、愛が重いんだよね」
「あー、はいはい。惚気なら他所でやれよー」
手をヒラヒラと振って聞く気のない翔ちゃんに再度摑みかかる。
「こっちは真剣に悩んでるの!ちゃんと聞いてー!」
「あー!もう、わかった、わかった!わかったから、離せ!」
***
「で、なんだって?」
ちゃんとお話を聞くモードになってくれた翔ちゃん。机を挟んでお互いに向かい合って座る。
なんだかんだで面倒見が良いのだ。
「うん、あのね……。なっちゃんが、最近ちょっと重いっていうか……私のことが好きすぎてやばいの」
「はぁ……」
ピンと来てないようで、翔ちゃんは若干呆れ顔だ。
わかってる。側から聞けばただの惚気に聞こえるかもしれない。
でも、本当なんだから仕方ない。なっちゃんが、私のことを愛しすぎてて辛いのだ。
「翔ちゃんならわかるでしょ……なっちゃんのパワフルな愛」
「おぉ、まあそれならわかるな」
「私もね、最初はびっくりしたけど、でもなっちゃんにぎゅってされるのは好きだし、慣れちゃったんだけど……。最近、それがないの」
翔ちゃんは再び変な顔をする。
「ならいいんじゃねーか?てか、そういうのをされなくなったって、むしろ愛されてないんじゃ……」
「そんなことない!!違うの。なんかね、その分静かな愛が増えたというか……」
なっちゃんの愛情表現はストレートで遠慮がない。
翔ちゃんに対する好きと私とではもちろん違いはあるだろうが、その伝え方に大差はなかった。
姿を見れば所構わず全力で抱きついて、口を開けば「可愛い」「大好き」。そんななっちゃんの愛し方が、私は嫌いじゃなかった。
けれど、最近どうもそんな彼の無邪気さに陰りを感じるのだ。
スタジオや事務所でたまたま出くわしても、前みたいにものすごい勢いで、タックルと間違えるような抱きつき方をしなくなった。そのかわりすごく優しく、そっと私を抱きしめるのだ。
「名前ちゃん……好きです……」
って、小さく呟いて。
「お、おぉ……それはなんつーか、那月らしくはねえな」
「でしょ?」
「まあ、それはわかったけど、それがどうして愛が重いだのに繋がるんだ?」
「うん……その、なっちゃんってね、あんまり恋人らしいこととかしなかったんだけど……」
「お、おぅ……」
「静かになってからかな。その、夜とか、回数が増えてさ。すごい積極的だし……」
「や、やめろよ……!友達のそんな事情聞きたくねえ……」
翔ちゃんがちょっと顔を赤くする。私だって、別にこんな話公にしたいわけじゃない。
でも、最近のなっちゃんはなんだかすごく愛がじっとりしている気がする。セックスしてる時だって、ずっと「好きです、好きです」って繰り返してる。もちろん、嫌なわけじゃない。でも、なんだかなっちゃんらしくなくて、ちょっと違和感がある。
「んで?お前はどうしたいんだよ」
「うーん……どうしたいって言われると困るんだけど。なっちゃん、何かあったのかなぁって」
「そんなもん、本人に直接聞いたらいいじゃねーか」
「そうなんだけど……なんかどうやって聞いたらいいかわかんないし」
ふと、翔ちゃんの楽屋の扉が開いた。
「翔ちゃーん!」
噂をすればなんとやら。現れたのはなっちゃんだ。
「おい那月!ノックはちゃんとしろって言ってるだろ!」
翔ちゃんのお小言を聞いていないのか、なっちゃんはまっすぐに私の方を見ている気がする。
「……なんで名前ちゃんがここに?」
「あっ、えっとそれは……」
適当にごまかせばいいのに、なっちゃんのことを話していたからつい言葉に詰まってしまう。
「あー、なんつーか、ちょっと相談みたいな感じだよ」
「ふぅん、そうだったんですね」
翔ちゃんが代わりに誤魔化してくれて、なっちゃんは納得したように見える。
そのまま部屋の中に入ってきて、こちらに近づいてきた。
「え?」
まっすぐにこちらに向かってきたなっちゃんはそのままふわりと私を抱きしめた。
「な、那月!?」
翔ちゃんが素っ頓狂な声をあげている。私も声こそ出なかったけど、驚いた。
「なっちゃん?」
「ごめんなさい。僕、すごく嫌な気持ちになっちゃいました」
「え?」
「翔ちゃんと名前ちゃんは仲良しさんなのに、僕それが嬉しくないんです……」
ぎゅっと、なっちゃんの抱きしめる力が強くなる。
「最近、僕おかしいんです。名前ちゃんを見ると嬉しくなるのに、同時に心がぎゅっと締め付けられて……名前ちゃんを独り占めできたらいいのに」
「そっか……なっちゃん、大丈夫だよ。私はなっちゃんが一番好きだし、他の誰でもないなっちゃんのものだよ」
なっちゃんの気持ちに応えるように、彼の背中に腕を回した。
「名前ちゃん……!僕も、だーいすきです!」
「ぐぇっ、なっちゃんくるしっ!!」
さらにぎゅっと力が強まって、内臓が圧迫される。那月さん、肋骨が折れそうです。
「僕、これからもずーっと名前ちゃんを好きでいていいですか?」
「うん、うん。いいよ、だから、一旦離して……」
「嬉しいです!」
グリグリと頭を押しつけられて、なっちゃんのふわふわの髪の毛が触れる。
なんだか、久しぶりの感覚だ。なっちゃんの屈託のない愛を感じられている気がする。どんななっちゃんだって大好きだけど、やっぱりこうやって元気いっぱいのなっちゃんが大好きだ。
「なんだよ……結局は惚気ってことじゃねーか」
ぼそりと言った翔ちゃんの声を聞きながら、しばらくなっちゃんのふわふわに埋もれ続けた。
2019.7.12
「聞いてよ翔ちゃん……最近ね、重いの……」
「なんだよ、ダイエットのことならトキヤの方が得意なんじゃねえか?」
「誰も私の体重の話なんかしてないよバカ!!」
「いってぇな!!」
やばい。アイドルに思わず手を出してしまった。傷は……付いていないからセーフだ。
「なっちゃんだよ、なっちゃん!最近さ……なんていうか、愛が重いんだよね」
「あー、はいはい。惚気なら他所でやれよー」
手をヒラヒラと振って聞く気のない翔ちゃんに再度摑みかかる。
「こっちは真剣に悩んでるの!ちゃんと聞いてー!」
「あー!もう、わかった、わかった!わかったから、離せ!」
***
「で、なんだって?」
ちゃんとお話を聞くモードになってくれた翔ちゃん。机を挟んでお互いに向かい合って座る。
なんだかんだで面倒見が良いのだ。
「うん、あのね……。なっちゃんが、最近ちょっと重いっていうか……私のことが好きすぎてやばいの」
「はぁ……」
ピンと来てないようで、翔ちゃんは若干呆れ顔だ。
わかってる。側から聞けばただの惚気に聞こえるかもしれない。
でも、本当なんだから仕方ない。なっちゃんが、私のことを愛しすぎてて辛いのだ。
「翔ちゃんならわかるでしょ……なっちゃんのパワフルな愛」
「おぉ、まあそれならわかるな」
「私もね、最初はびっくりしたけど、でもなっちゃんにぎゅってされるのは好きだし、慣れちゃったんだけど……。最近、それがないの」
翔ちゃんは再び変な顔をする。
「ならいいんじゃねーか?てか、そういうのをされなくなったって、むしろ愛されてないんじゃ……」
「そんなことない!!違うの。なんかね、その分静かな愛が増えたというか……」
なっちゃんの愛情表現はストレートで遠慮がない。
翔ちゃんに対する好きと私とではもちろん違いはあるだろうが、その伝え方に大差はなかった。
姿を見れば所構わず全力で抱きついて、口を開けば「可愛い」「大好き」。そんななっちゃんの愛し方が、私は嫌いじゃなかった。
けれど、最近どうもそんな彼の無邪気さに陰りを感じるのだ。
スタジオや事務所でたまたま出くわしても、前みたいにものすごい勢いで、タックルと間違えるような抱きつき方をしなくなった。そのかわりすごく優しく、そっと私を抱きしめるのだ。
「名前ちゃん……好きです……」
って、小さく呟いて。
「お、おぉ……それはなんつーか、那月らしくはねえな」
「でしょ?」
「まあ、それはわかったけど、それがどうして愛が重いだのに繋がるんだ?」
「うん……その、なっちゃんってね、あんまり恋人らしいこととかしなかったんだけど……」
「お、おぅ……」
「静かになってからかな。その、夜とか、回数が増えてさ。すごい積極的だし……」
「や、やめろよ……!友達のそんな事情聞きたくねえ……」
翔ちゃんがちょっと顔を赤くする。私だって、別にこんな話公にしたいわけじゃない。
でも、最近のなっちゃんはなんだかすごく愛がじっとりしている気がする。セックスしてる時だって、ずっと「好きです、好きです」って繰り返してる。もちろん、嫌なわけじゃない。でも、なんだかなっちゃんらしくなくて、ちょっと違和感がある。
「んで?お前はどうしたいんだよ」
「うーん……どうしたいって言われると困るんだけど。なっちゃん、何かあったのかなぁって」
「そんなもん、本人に直接聞いたらいいじゃねーか」
「そうなんだけど……なんかどうやって聞いたらいいかわかんないし」
ふと、翔ちゃんの楽屋の扉が開いた。
「翔ちゃーん!」
噂をすればなんとやら。現れたのはなっちゃんだ。
「おい那月!ノックはちゃんとしろって言ってるだろ!」
翔ちゃんのお小言を聞いていないのか、なっちゃんはまっすぐに私の方を見ている気がする。
「……なんで名前ちゃんがここに?」
「あっ、えっとそれは……」
適当にごまかせばいいのに、なっちゃんのことを話していたからつい言葉に詰まってしまう。
「あー、なんつーか、ちょっと相談みたいな感じだよ」
「ふぅん、そうだったんですね」
翔ちゃんが代わりに誤魔化してくれて、なっちゃんは納得したように見える。
そのまま部屋の中に入ってきて、こちらに近づいてきた。
「え?」
まっすぐにこちらに向かってきたなっちゃんはそのままふわりと私を抱きしめた。
「な、那月!?」
翔ちゃんが素っ頓狂な声をあげている。私も声こそ出なかったけど、驚いた。
「なっちゃん?」
「ごめんなさい。僕、すごく嫌な気持ちになっちゃいました」
「え?」
「翔ちゃんと名前ちゃんは仲良しさんなのに、僕それが嬉しくないんです……」
ぎゅっと、なっちゃんの抱きしめる力が強くなる。
「最近、僕おかしいんです。名前ちゃんを見ると嬉しくなるのに、同時に心がぎゅっと締め付けられて……名前ちゃんを独り占めできたらいいのに」
「そっか……なっちゃん、大丈夫だよ。私はなっちゃんが一番好きだし、他の誰でもないなっちゃんのものだよ」
なっちゃんの気持ちに応えるように、彼の背中に腕を回した。
「名前ちゃん……!僕も、だーいすきです!」
「ぐぇっ、なっちゃんくるしっ!!」
さらにぎゅっと力が強まって、内臓が圧迫される。那月さん、肋骨が折れそうです。
「僕、これからもずーっと名前ちゃんを好きでいていいですか?」
「うん、うん。いいよ、だから、一旦離して……」
「嬉しいです!」
グリグリと頭を押しつけられて、なっちゃんのふわふわの髪の毛が触れる。
なんだか、久しぶりの感覚だ。なっちゃんの屈託のない愛を感じられている気がする。どんななっちゃんだって大好きだけど、やっぱりこうやって元気いっぱいのなっちゃんが大好きだ。
「なんだよ……結局は惚気ってことじゃねーか」
ぼそりと言った翔ちゃんの声を聞きながら、しばらくなっちゃんのふわふわに埋もれ続けた。
2019.7.12