勝手な未来
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遡行軍と過ごす審神者は誘拐された身というには自由すぎる生活を送っていた。
彼らは、審神者に危害を加えるどころか、何かをしようという気はまったく無いようだった。
審神者がふらりと部屋を出ても何もしてこないどころか、監視すらもない。試しに、逃げ道が無いかどうか庭を出て山の中まで探してみたが、何も見つからなかった。見つからないことがわかっているから、無駄に監視などしなかったのかもしれないが、それにしてもあまりの警戒心のなさに審神者の方が拍子抜けしてしまうほどだった。
本丸の作りをしているからには、当然ここにも別の時間、場所へとつながる門があった。
その門がもともとどんな原理で動いているのかはわからないが、ここの門は扉を開ければ向こう側の景色が広がっているだけのただの門だった。本来の機能は失われているようだ。当然、ここからも脱出は不可能だった。
生活する中で、審神者は幾つかのことに気づいていた。
まずは、遡行軍の刀剣たちには個性があることだ。言葉こそ発しないが、意思の疎通は可能な彼らは、それぞれ性格があるように思えた。
たとえば、最初目を覚ました時に付き添ってくれたあの打刀は、いつも必要なときにはそばに控えてくれて、なんにでも手を貸してくれた。その態度はいつでも礼儀正しい。
そう思えば、こちらには積極的に関わってこない刀もいる。まるで、避けるかのように、審神者との距離を詰めすぎないようにしているようだ。
そして刀の大きさが違うように、遡行軍の体の大きさにも大小があった。
そういう個々の違いから、審神者はこの数日の間で何振りかの刀は見分けがつくようになっていた。
その刀たちの特徴は、どこか自分のよく知る刀たちに重なる部分があるように感じられた。この本丸で生活する遡行軍たちは、元は誰かの刀だったのではないだろうか。それが、こうして遡行軍の姿となってしまっているということは、彼らには、何か修正したい歴史があったということなのだろう。では、それは一体何か。
その答えまでは、審神者はまだたどり着けずにいた。
気づいたことはもう1つある。それは、この本丸には時間が無いのだ。
ここに来て数日、というのはあくまで体感での話だった。この本丸には夜が来ない。なぜか太陽はずっと高い位置のままなのだ。起きている間中、空は明るい。寝て、覚めても、太陽の位置はかわらないままだった。
それは、まるでこの本丸の時が止まっているかのようだ。
遡行軍たちの暮らす、時が止まった本丸。この不思議な組み合わせの答えは一体なんだろうか。そんなことに頭を悩ませながら、この本丸での何日目かもわからない日を審神者は過ごすのだった。
2019.5.2
彼らは、審神者に危害を加えるどころか、何かをしようという気はまったく無いようだった。
審神者がふらりと部屋を出ても何もしてこないどころか、監視すらもない。試しに、逃げ道が無いかどうか庭を出て山の中まで探してみたが、何も見つからなかった。見つからないことがわかっているから、無駄に監視などしなかったのかもしれないが、それにしてもあまりの警戒心のなさに審神者の方が拍子抜けしてしまうほどだった。
本丸の作りをしているからには、当然ここにも別の時間、場所へとつながる門があった。
その門がもともとどんな原理で動いているのかはわからないが、ここの門は扉を開ければ向こう側の景色が広がっているだけのただの門だった。本来の機能は失われているようだ。当然、ここからも脱出は不可能だった。
生活する中で、審神者は幾つかのことに気づいていた。
まずは、遡行軍の刀剣たちには個性があることだ。言葉こそ発しないが、意思の疎通は可能な彼らは、それぞれ性格があるように思えた。
たとえば、最初目を覚ました時に付き添ってくれたあの打刀は、いつも必要なときにはそばに控えてくれて、なんにでも手を貸してくれた。その態度はいつでも礼儀正しい。
そう思えば、こちらには積極的に関わってこない刀もいる。まるで、避けるかのように、審神者との距離を詰めすぎないようにしているようだ。
そして刀の大きさが違うように、遡行軍の体の大きさにも大小があった。
そういう個々の違いから、審神者はこの数日の間で何振りかの刀は見分けがつくようになっていた。
その刀たちの特徴は、どこか自分のよく知る刀たちに重なる部分があるように感じられた。この本丸で生活する遡行軍たちは、元は誰かの刀だったのではないだろうか。それが、こうして遡行軍の姿となってしまっているということは、彼らには、何か修正したい歴史があったということなのだろう。では、それは一体何か。
その答えまでは、審神者はまだたどり着けずにいた。
気づいたことはもう1つある。それは、この本丸には時間が無いのだ。
ここに来て数日、というのはあくまで体感での話だった。この本丸には夜が来ない。なぜか太陽はずっと高い位置のままなのだ。起きている間中、空は明るい。寝て、覚めても、太陽の位置はかわらないままだった。
それは、まるでこの本丸の時が止まっているかのようだ。
遡行軍たちの暮らす、時が止まった本丸。この不思議な組み合わせの答えは一体なんだろうか。そんなことに頭を悩ませながら、この本丸での何日目かもわからない日を審神者は過ごすのだった。
2019.5.2